[CEATEC 2012]手ぶらでどこでもテレビ電話、手のひらで認証--新しい研究開発の成果が並ぶ
2012.10.04
Updated by Naohisa Iwamoto on October 4, 2012, 17:02 pm JST
2012.10.04
Updated by Naohisa Iwamoto on October 4, 2012, 17:02 pm JST
幕張メッセで開催中のCEATEC JAPAN 2012では、NTTドコモ、KDDIの研究開発の展示も見どころだ。NTTドコモはウエアラブル端末の開発に向けた「ハンズフリービデオフォン」や、スマートフォンの新しいUIを展示。KDDIは高齢者などで聴力が弱くなった人に向けて補聴機能を強化した携帯電話や手のひらの模様を使った認証システムを展示した。
NTTドコモの「ハンズフリービデオフォン」は、メガネをかけるだけで自分の正面からの映像を撮影できるシステム。テレビ電話で自分の姿を撮影するためには、通常は自分撮り用のカメラが正面になくてはならない。これを、超広角カメラを複数個装着したメガネ型の端末をかけるだけで、正面からの自画像を作り上げてしまう。紹介していたのは、左右に3つずつの自分撮り用と1つ背景用の合計7つのカメラを搭載したメガネ型の端末。7つのカメラの画像を合成して、あたかも正面から撮ったような自画像を作り上げる。メガネ型の端末だけでハンズフリーでテレビ電話ができる。ただし、現段階ではウエアラブル型のディスプレイは搭載されておらず、映像としては自画像を相手に送る一方通行になる。「今後、ディスプレイを装着するなどしてメガネ型のウエアラブル端末実現に向けた研究を進めていく」(NTTドコモの説明員)としている。
▼「ハンズフリービデオフォン」用のメガネ型端末の展示
コミュニケーションの新しい形としては、コミュニケーションロボットを使ったクラウドとの融合のデモ「しゃべってロボ」も行われていた。動いたりおしゃべりしたりするコミュニケーションロボットをクラウドと連携させ、個人専用のコンシェルジュのようにさまざまな情報をしゃべって伝える様子を紹介していた。ネットワーク越しの文字情報コミュニケーションが、あたかもしゃべってロボとおしゃべりをしているように感じられるデモだ。
▼クラウドと連携した「しゃべってロボ」とコミュニケーション
既存のコミュニケーションを補助する端末の参考出展もあった。KDDIのブースには「補聴機能強化ケータイ」が展示されている。これは高齢者など聴力が弱い人でも携帯電話を使ったコミュニケーションをできるようにとの願いから開発されたもの。すでに京セラが製品化している画面全体から音が出る「スマートソニックレシーバー」に、補聴のための機能を加えた。音量を既存の数倍にも高められるようにしたほか、聞こえのバランスを調整するための周波数イコライザーの搭載や、可聴範囲内にダイナミックレンジが入るように調整するダイナミックレンジ圧縮機能などを搭載した。デモでは、健常者には大きすぎる音量を調整するための手製の消音器を付けて、大音量での再生の様子を示していた。実用化は未定とのこと。耳が聞こえにくい人でも通話というコミュニケーション手段を維持できるように、早期の実用化に期待したい。
▼大音量を実感できるデモを行う「補聴機能強化ケータイ」。右が消音器を装着した状況で、これでも健常者には十分な音量がある
ユーザーインターフェースの新しい提案もあった。NTTドコモのブースでは、2つのユーザーインターフェースの研究を展示している。1つがスマートフォンを握っている力と場所を感知して、それをもとに操作する「Grip UI」。満員電車で片手はつり革を握っているシーンを再現し、どうしても「戻る」のボタンに指が届かないといったような場合に、スマートフォンを握るだけで操作ができるというデモを行なっていた。もう1つは視線でタブレット端末を操作する「i beam」。こちらもつり革を握りながらタブレット端末をもう一方の手で持っているときに、視線の移動でブラウザのスクロールや拡大縮小ができることを示していた。
▼「i beam」は視線を動かしてブラウザの拡大をしたところ
セキュリティを確保するためのスマートフォンのロック解除のインタフェースとして、KDDIは「掌紋認証」という技術を提案している。掌紋とは手のひらの模様のことで、要するに手相で認証するといったもの。スマートフォンのカメラに手のひらをかざすことで、登録した掌紋と一致すればロック解除される。指紋認証では指紋を読み取る専用のハードウエアが必要になるが、掌紋認証ならばスマートフォンなどが搭載するカメラだけで利用できるという。
▼手のひらをカメラにかざしてロック解除する「掌紋認証」
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登録はこちら日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。