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1万人のTwitterユーザー 政治家に訴えられる

2012.11.22

Updated by Mayumi Tanimoto on November 22, 2012, 09:35 am JST

イギリスでは、保守党の有名政治家であるMcAlpine卿が10,000のTwitterユーザーを訴えています。

嘘を適当にツイートしたりRetweetすると、家に警察がやってくる時代がやってきたのです。

ことの始まりはBBCの報道番組である「Newsnight」でありました。「保守党のある政治家は幼児性愛者が絡んだ犯罪に関係しているぞ!」という報道が即座に大炎上してネット中に広まります。

番組では政治家の名前を公表しなかったのですが、Twitterユーザーの多くが「あいつに違いない」とMcAlpine卿の名前をツイートし始めました。

政府の調査によりMcAlpine卿はまったく関係がないと言うことが公表されましたが、それでもネットでの大炎上は収まらず、フォローワー数の多いアルファツイッターユーザーや、芸能人、有名人までも炎上に加担します。

ネットでの大炎上が止まらないため困ったMcAlpine卿、なんと法律事務所を雇い1万人のTwitterユーザーを訴えることにしました。そのうち同卿が幼児性愛犯罪に関係しているぞと直接ツイートした人は1000名、Retweetした人は9000名となっています。何名かは有名人や芸能人ですが、どういうユーザーをどういう基準で選んだのかは明らかにされておりません。

法律事務所はすでにユーザーに連絡しておりますが、謝罪した人でフォロワーが500以下の人に対しては、BBCの実施している病気の子供のためのチャリティー活動に£5を寄付すれば許します、としております。他のユーザーからの損害賠償もこのようにチャリティー活動に寄付されるようでありますが、どのユーザーに対してどの位請求するのか、というのは公表されておりません。また、刑法犯に問われるユーザーもいるらしく、警察が公式な捜査を始める様です

なお、McAlpine卿はBBCから£185,000(約2400万円)の損害賠償を受け取っております。また民放テレビ局であるITVからは、別の番組内での事実無根のコメントの損害賠償として£500,000 (約6500万円)が支払われる見込みです。(延々と訴えた方はいくらもらえるぞと報道している所がドケチなイギリスっぽいですね)

イギリス国内ではこの事件、大炎上中でございまして、「ちょっと悪ふざけしただけで訴えられるのか!」「金があるから腕のいい弁護士が雇えるんだ」「表現の自由はどこなんだ!!」という声も上がっておりますが、「正しいことをやった」「当たり前だ」「何を書くか気をつけろ」「Twitter社じゃなく個人を訴えたのが偉い」という意見もあります。

今回の事件ですが、Twitterユーザーが「越えては行けない線」を越えてしまったのが問題かもしれません。イギリスは日本よりも表現の自由がフリーダムな感じで「はあああ??」とびっくりする様なブラックな笑いをテレビで流したりしていることがあります。笑いのネタも凄まじくブラックです。

しかし、越えてはいけないラインという物がございます。それは、誰かを幼児性愛者と呼ぶこと(日本より遥かにタブー視されている事柄ですので)、女王様(周辺は平気な模様)、宗教原理主義の方、冗談が通じない人、であります。

今回はこのうちいくつかの線を越えてしまったというわけです。

日本は訴訟社会でもありませんし、ことを荒立てることを嫌がる人が多いので(大体訴えた方がお前おかしいんじゃないの?と言われますね)すぐにイギリスみたいになる、ということは考えにくいのですが、海の向こうでこういう判例が増えてくると、そのうち日本でも似た様な状況になるんじゃないか、というのは十分考えられるわけであります。

そもそも日本の政策や法律の中には、イギリスやアメリカの劣化コピーが沢山ありますので、イギリスやアメリカで起こっていることを見ていると、日本で10−15年後ぐらいに起こる、ということが往々にしてあります。(例:狂うジャパン クールジャパン。これはどう考えてもイギリスで15年前にやってたことの劣化パクリ)

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。