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ネットワークとサービスの未来を提示したDOCOMO R&D Open HOUSE 2012

2012.11.16

Updated by Asako Itagaki on November 16, 2012, 00:30 am JST

11月9日、横須賀リサーチパーク(YRP)内にあるNTTドコモR&Dセンターで、ドコモの取り組みを講演や展示で紹介するイベント「DOCOMO R&D Open House 2012」が開催された。

LTE-Advancedとその先のネットワーク

特に力をいれて紹介されていたのは、ネットワークへの取組。ドコモではYRP内にLTE-Advancedの実験局を開設しており、ビームフォーミングとMulti-User MIMOを併用した空間多重化によるキャパシティ向上などの実証実験を行っている。当日は、LTE-Advancedの無線局を搭載した電測車を公開。3.9GHz帯・100MHz幅を使用し、Single-User MIMOを用いて700Mbpsでの通信が可能で、Multi-User MIMOを用いることで基地局から見て異なる方角にある2つの移動無線局で合計1.1 Gbpsを超える通信速度が実現可能であることや、方角が重なる移動無線局をペアにすると干渉が発生し、通信速度が落ちることを示していた。

また、無線アクセス開発部担当部長 中村 武宏氏によるトピック講演では、LTE-Advancedの次のネットワークとしてドコモが提案する「FRA(Future Radio Access)」のコンセプトが紹介された。2010年に比べると必要なネットワークキャパシティは2015年で24倍、2020年までの10年で500倍以上になると予想されている。FRAでは、「周波数利用効率の向上」「周波数帯域の拡張」「ネットワークの高密度化(+オフロード)」の3つの次元を掛け合わせた「The Cube」で500倍以上の容量増加に対応する。

ネットワークの高密度化という点では、制御信号とユーザーデータストリームを分離し、制御信号は低い周波数のマクロセルで伝送してモビリティを確保し、ユーザーデータは高い周波数のスモールセルで高速な伝送を行う「Phantom Cell」という概念を紹介。また、周波数利用効率向上という点では、受信側で干渉キャンセラを用いた非直交マルチプルアクセスで、LTE-Advancedに比べてさらに2~3倍の周波数利用効率の向上をはかる。

目の前に翻訳文字が出現・サーキットは実験フィールド

展示で人気を集めていたのが、10月から提供されているアプリ「うつして翻訳」の発展形「みたまま翻訳」だ。カメラを向けるだけで写っている文字をそのまま翻訳して画面に表示する。日本語、韓国語、英語、中国語(繁体字、簡体字)に対応している。
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ヘッドマウントディスプレイなら「目の前に翻訳した文字が現れる」世界が体験できる。
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ヘルスケア分野では、血圧計や体重体組成計のデータをスマートフォンで管理し、クラウドサービスで連携する「健康機器連携サービス」のコンセプトを提示。
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ロビーには、フォーミュラニッポンのレーシングカーが展示されていた。ドコモはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGチームのメインスポンサーとなっている。レーシングカーは時速300㎞を超える高速でサーキットを周回するが、これが過酷な高速移動環境で再現性の高いデータを取得できる、またとない実験環境になるのだ。
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201211141800-2.jpg ドコモのレーシングカーにはXiスマートフォンを搭載(写真左・クリックで拡大)。コース周囲に複数のLTE基地局を設置し、高速移動時のハンドオーバーの試験や、高速移動環境下でのおたよりフォトサービスをはじめとするユビキタスサービスの検証などを行っている。この結果は、新幹線や山手線など、移動する電車での通信品質向上に役立てられている。

先端技術としては災害、環境、電力対策に向けた次世代グリーン基地局(関連記事)、モバイル空間統計(関連記事 / 関連情報:平成23年度柏市商業実態調査の結果を公表します - 柏市役所)の最新動向に加えて、仮想化技術とOpenFlow技術をキャリアのコアネットワークに適用して、信頼性と可用性の高い柔軟なモバイルネットワークを実現する「エラスティック・コア」を展示。顧客サービス処理を行うサービスの処理情報を別のサーバーに置いた「ステート情報DB」で分離して保持することで、サービスを処理するサーバーが故障した場合もサービスを中断することなく別サーバーで処理を継続できる。

プログラムの最後に行われた「クラウドが変える2017年の世界」と題したパネルディスカッションでは、Publickeyの新野淳一氏をモデレーターとして、ジャーナリストの佐々木俊尚氏、楽天技術研究所長の森 正弥氏、NTTドコモ執行役員研究開発推進部長の栄藤 稔氏が登壇。クラウドが産業社会に与える影響、キーテクノロジー、クラウドが果たす役割をテーマに議論が展開された。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。