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[Deloitte Mobile Survey 2012 #5]キャリアの選択・乗り換え理由分析

2013.01.15

Updated by WirelessWire News編集部 on January 15, 2013, 23:00 pm JST

1.はじめに

デロイトが独自に行ったモバイルコミュニケーションについての5大陸15ヶ国に渡るオンライン調査結果に基づき、キャリアの選択・乗り換え理由についての分析結果を報告する。特に新興国と日本について焦点をあてて当てて報告するこの連載、第5回目になる今回はキャリアの選択・乗り換え理由に関して得られた調査結果を中心に報告する。

本調査は15カ国26,000人を対象とした調査であるが、本報告では成長著しい新興国の中でもアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの結果を中心に記載している。なお、本調査はオンライン調査であることもあり、同新興国の結果については比較的、高所得かつアーリーアダプター中心の回答であることに留意されたい。

2.調査対象国のキャリアの選択・乗り換え状況

2.1 各国比較

日本と新興国のキャリアの選択理由ならびに乗り換え理由を比較すると、日本が既存契約やデバイスによってキャリアを選択する傾向が強いのに対して、新興国はいわゆる通信料金やネットワークエリア・品質によってキャリアを選択する傾向が極めて強い事がわかる。

これは、日本では携帯電話のコモディティ化が進んでおり、既に料金やネットワークでは差別化が容易ではない状況になっている事と新興国においては今だその過程をたどっている段階である事を示唆するものであると言える。

▼図表1 各国のキャリアの選択理由(※画像をクリックして拡大)
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▼図表2 各国のキャリアの乗り換え理由(※画像をクリックして拡大)
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それでは各国ごとの状況を見ていこう。

2.2日本

NTT docomoは4割近くが継続ユーザであり。3割以下の他の2社よりも高い比率で顧客を維持している。しかし、これはNTT docomoの元々の高いシェアが落ちてきている事を示していることに他ならず、その最大の原因はやはりキラーデバイスと化したiPhoneの存在にある事は明白であろう。

▼図表3 日本のキャリアの乗り換え状況
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2.3アルゼンチン

どのキャリアも既存ユーザは10%以下であり、日本に比べ乗り換えが盛んである様子がうかがえる。乗り換えが盛んである原因としては、プリペイド契約が加入者総数に占める割合が9割に達する事で、日本と比較して、契約上の乗り換え障壁が低い事ためと考えられる。

▼図表4 アルゼンチンのキャリアの乗り換え状況
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2.4ブラジル

どのキャリアも既存ユーザは10%以下であり、日本に比べ乗り換えが盛んである様子がうかがえる。乗り換えが盛んである原因としては、地元資本のOiと他の外国資本勢との競争が激しい事とプリペイド契約が加入者総数に占める割合は8割に達する事で、契約上の乗り換え障壁が低い事ためと考えられる。

▼図表5 ブラジルのキャリアの乗り換え状況
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2.5メキシコ

Telcel以外のキャリアの現ユーザの7割前後はTelcelからの乗り換え組である。これはTelcelのシェアが7割を超えていることにより現れた結果であり、今後、日本のNTT docomoの場合と同様にTelcelのシェアをその他のキャリアが切り崩して行く事が予想される。

▼図表6 メキシコのキャリアの乗り換え状況
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2.6ロシア

どのキャリアも既存ユーザは8%以下であり、日本に比べ乗り換えが盛んである様子が窺える。Tele2、MegaFon、MTSの大手3社でシェアの8割以上を占めており、その3社での顧客の奪い合いの構図が示唆される結果となっている。

▼図表7 ロシアのキャリアの乗り換え状況
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2.7南アフリカ

Vodacom以外のキャリアのユーザの約6割がVodacomからの乗り換え組である。Vodacom自体のシェアは5割弱とトップシェアであり、他の調査対象国同様、他のキャリアへの乗り換えが多くなるが、一方で携帯電話市場自体も依然成長を続けている点が他の調査対象国との大きな違いである。

▼図表8 南アフリカのキャリアの乗り換え状況
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2.8トルコ

Turkcell以外のキャリアのユーザは6割前後がTurkcellからの乗換組である。Turkcellが50%超のシェアを持つことから、Turkcellからの乗り換えの割合が大きくなる一方で、現状Turkcell、Vodafone、Aveaの3社体制であり、ユーザの選択肢は日本とほぼ同程度と比較的狭い。

▼図表9 トルコのキャリアの乗り換え状況
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3.各国のチャーン(乗換)傾向〜有効な防止策を確立できないトップキャリア

調査対象国に共通する点は、トップシェア通信キャリアから乗り換えの比率が高い事である。これは対象ユーザ数が多い以上、ある意味当たり前の結果なのだが、裏を返せば、各国のトップシェア通信キャリアが乗り換えを抑止する為の有効的な施策を今だ確立できてない事を意味する。

前述の通り、トップシェア以外の通信キャリアの多くは既存契約、ネットワークエリア・品質、扱いデバイス(ただし、日本だけは例外)といった資本力が要求される要素で劣る傾向にあり、大半は通信料金の安さでトップシェア企業との差別化をはかり、顧客を取りこもうとしている。ただ、その結果、ARPUについてはトップシェア通信キャリアが最も高いという状態になる事がほとんどである。

4.トップシェア通信キャリアの取るべき戦術〜正しい資本力の使い方

トップシェア通信キャリアが他通信キャリアの乗り換えを抑止する為には、その資本力を活かして価格競争をしかける事が最も手っ取り早い。しかし、その結果、最もダメージを受けるのもユーザ数が大きいトップシェア企業である。また、通信産業は各国とも規制が強い傾向にあり、打てる手段もある程度限られてくる場合が多い。

それでは、トップシェア通信キャリアはどうすれば良いのか。最善の手段は、既存顧客のニーズを囲い込み施策としての形で提供する事であろう。例えば、今回の調査対象の新興国であれば、通信料金の安さを契約期間に応じた割引やポイント、自社ユーザ内割引等の形で提供すれば、自社のユーザ数の多さにより、有効な差別化要因になりうる事であろう。

ネットワークエリア・品質についても、他社の投資が追いつかないようなスピード感でユーザニーズを満たし続ける事ができれば、他社へのユーザの乗り換えを大幅に抑止する事ができよう。また、本来的には競争力のあるデバイスの確保も自社の販売力を背景に有利に交渉が運べる事が多いはずである(日本ではうまくいかなかったが)。

5.今回のまとめ

日本と調査対象の新興国を比較すると、キャリアの選択理由・乗り換え理由とも傾向に大きな違いが出た。それは、その国における携帯電話産業の成熟度によって、顧客維持の為の戦略を変えていく必要がある事を示唆していると考えられる。すなわち、各通信規格・通信サービス・デバイスのプロダクトライフサイクルを意識した解約抑止策立案が重要であるということである。

次回はアプリの利用状況の調査結果を掘り下げ、課金状況等の分析を報告する。
引き続きお付き合いいただければ幸いである。

デロイト「グローバルモバイル消費者調査2012」について

【調査目的】
世界15ヶ国のモバイル利用状況を把握するとともに、今後の利用状況予測に関する情報を提供する。

【調査概要】
●対象国:全15ヶ国
アメリカ、アルゼンチン、イギリス、カナダ、クロアチア、ドイツ、トルコ、日本、フィンランド、ブラジル、フランス、ベルギー、南アフリカ、メキシコ、ロシア
●調査方法:各国公用語によるオンラインアンケート
アルゼンチン、ブラジル、クロアチア、メキシコ、南アフリカ、トルコについては、サンプルが都市部在住の専門職(比較的高所所得者層)に集中する結果となっている。その他の国については全国から回答を得ている。
●調査期間:2012年5〜6月
●分析対象回答者数:25,960名

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