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2013年の課題と展望、あるいは希望(2) SAMSUNG篇

2013.01.25

Updated by WirelessWire News編集部 on January 25, 2013, 15:29 pm JST

Appleを脅かす存在の筆頭といえば、いまのところはSAMSUNGかもしれません。つい先日も「GALAXY S」シリーズの販売台数1億台突破のニュースが駆け巡りました。シェアも大きく伸ばし、まさに絶好調。NoteやCameraといった派生モデルも世に送り出し、イノベーティブさにおいても存在感があります。

▼GALAXY Sシリーズ最新機種 GALAXY S III α (NTTドコモ 製品案内より)
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そのSAMSUNGの2013年ですが、Appleとの特許紛争もさることながら、私は1億台を突破したGALAXYブランドをどう維持していくかも重要になってくると思っています。各国の市場の状況をヒアリングしてみると、販売台数好調を支えているのはS IIIだけでなく、価格の下がった旧モデルも含まれているようです。「Androidは比較的所得が低い層にも支持されている」という声があるように、各市場で安い価格帯の商品の引き合いも多いとのこと。

販売数の伸びが著しいアジア、特に中国市場を考えると、GALAXYをハイブランドとして位置付けることも大切です。面子を重んじる中国においては、特に富裕層が満足するブランドポジションを保つ必要があります。持っていて自慢できるデザイン、機能、そして価格があるのです。またその一方で、おう盛な中流層以下の需要にも応えなければシェアを獲得できません。つまり、GALAXY Sのブランドパワーと幅広い価格レンジのラインナップを取りそろえ、その両方を維持しなければいけないわけです。

幅広い需要に応えるための「セカンドライン」戦略の可能性

アパレルでは高価格帯のメインのハイブランドの他に、ターゲットに応じて価格帯を変えた違うブランドを設定することがあります。たとえば「DOLCE&GABBANA」には、同じデザイナーがデザインしたカジュアルな「D&G」というセカンドライン、さらにカジュアルな「&」、アウトレットブランド「BASIC」の4つのラインが存在しました(※)。品質も価格も高いハイブランドに手が届かないものの、いわゆる「ドルガバ」には興味や関心、購入したい意向を持つ消費者層のための「別ライン」を作るのです。そうすることで、ファーストラインの顧客の「プライド」を保ち、結果としてブランドとしてのポジションも維持できる、ということになるわけです。

※他にもセカンドラインの例としては以下のようなブランドがあります。
・PRADA → <miu miu>
・BURBERRY LONDON → <BURBERRY BLUE LABEL>
・DONNAKARAN NEWYORK→ <DKNY>
・MARC JACOBS → <MARC BY MARC JACOBS>
・Calvin Klein → <ck>
・GIORGIO ARMANI → <EMPORIO ARMANI>

ただし「DOLCE&GABBANA」の場合、セカンドラインの「D&G」は2012春夏モデルの発表を最後に「D&G」ブランドは終わりました。また2010年には先行する形で日本からブランドを撤退させています。「模倣品の氾濫」が表向きの理由ですが、アパレル関係者の間では「セカンドラインのD&Gを身に付ける顧客のイメージが、ファーストラインのDOLCE&GABBANAのブランドイメージを傷つけたため」と噂されていました。メインブランドを守るためのセカンドラインの存在が、逆の効果を生んでしまったという皮肉な形となってしまったのです。

スマートフォンはアパレルほどの季節商品ではありませんが、製品価格自体はハイブランドの小物と同じ価格帯です。家電製品ほどの耐久性もなく、トレンドの流れも早いので、市場の動きとしてはアパレルのそれに近づいています。SAMSUNGはファーストラインである「GALAXY S」ブランドを維持する意味でも、グローバル市場においては、そろそろ新しい価格帯の「GALAXY S」のセカンドラインとなる新しいブランドが必要になってきたかもしれません。

ただ、ここ日本ではスマートフォンの時代となった今でも、ハイスペックのものが圧倒的に強い力を持っています。廉価モデルを新製品として出さなくても、型落ちとなり実質的なセカンドラインとなるモデルもハイスペックモデルとして開発されなければ買われません。日本は「価格が高くても安くても、ハイスペックが望まれる」という市場です。「価格も安くて機能も低くても良い」という消費者は少ないということは、過去のスマートフォンの売り上げランキングを見れば明らかです。

GALAXYは「韓国製品=悪かろう」のイメージを払拭できた、日本で初めて成功したともいえる韓国ブランドです。これは「できるだけSAMSUNGロゴを目立たさず、『docomoのGALAXY』として売る」という、屈辱にも似たSAMSUNGの「自らのブランドを否定する」という涙ぐましい努力の成果の賜です。その背景には最新で最強スペックのAndroidスマートフォンを、どの日本メーカーよりもいち早く投入できた開発力とそのスピードという実力があったからこそです。その甲斐あって、docomoのラインナップのトップブランドとして大きな一翼を担う、大事な役割を果たしてきました。

しかしここ最近は、少し元気がなくなっているようにも見えます。先日、有楽町の量販店の店頭を覗いたところ、発売になったばかりのGALAXY S III αが「15,000円の商品券付き」で売られていました。こうした販促策は、えてして商品の流通が思わしくないときや新モデルが発表された時にとられます。夏モデルで発売されたS IIIのマイナーバージョンアップということもあるのかもしれませんが、これは消費者にとってS III αがGALAXYに期待されているレベルの商品ではなかったからかもしれません。

さらに、スマートフォンを求める層が広がるにつれ、日本メーカーを志向する層も増えてきました。いまは足踏みをしている日本メーカーも、どんな形で復活してくるかわかりません。世界一品質にうるさいといわれる日本で、グローバルブランドであるSAMSUNGがどんな製品を投入するのか。日本市場におけるAndroidのトップブランドというポジションの維持は、まさにここにかかっているといえます。

そして、auに投入された「GALAXY S III Progre」も、販売ランキングを見る限りでは元気がありません。auとしては最初のS IIIとなりますが、iPhoneがラインナップに存在するauでは、GALAXYのポジションはドコモと同等ではないといえるでしょう。北米ではiPhoneもGALAXY S IIIも売れていますから、ここは「docomoのGALAXY」として販売してきたイメージがそうさせている可能性もあります。

近日中に新しいモデルが発表される噂や新GALAXYであるとされる画像のリークもありますが、iPhoneや他のAndroidスマートフォンとは違うGALAXYの登場を心から期待しています。そしてそれがここ日本においても「SAMSUNGのGALAXY」として存在できるものであって欲しいと思います。

次回は、国内メーカーを中心に、他メーカーの動向について展望します。

 
文・長尾 彰一(通信・IT系コンサルタント)

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