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イジメはあるが祝福する文化のない日本

2013.02.01

Updated by Mayumi Tanimoto on February 1, 2013, 07:45 am JST

インフルエンザにかかったらしいので、家でフラフラとしながらネットを見ておりましたら、峯岸みなみ丸刈り謝罪 という記事が目につきました。私はAKBは詳しくないので、ことの詳細は良くわかりませんが、グループの決まりを破って男性とお泊まり旅行に行ってしまったので謝罪するために丸刈りになった、ということだそうであります。

これを見ていて、なんだかいや〜な感じがしました。たとえ綿密な計算の上での演出だったとしても、越えては行けない線を越えてしまった気がします。

まず始めに、これを見みて、イギリスの歴史番組で繰り返し放送される「第二次世界大戦後にナチに協力した、ドイツ兵と恋人関係にあった、という理由で公衆の面前で丸刈りにされ、屈辱を与えられた女性達を思い浮かべたからです。男性達は丸刈りにされませんでしたが、女性達はされました。それが最大の屈辱の一つだったからです。ナチに協力したわけではなく、自分や家族を守るために、仕方なくドイツ兵とつきあっていた様な女性も恥ずかしめを受けました。また、ナチの強制収容所で酷い目にあったユダヤ人の女性達のことも思い出しました。収容所についてすぐ、頭を丸刈りにされました。丸刈りにすることで、恥ずかしめ、尊厳を奪ったわけです。

次に嫌だなあと思ったのは、法律でも何でもない理不尽な決まりを破った人間は、こうやって公衆の面前に曝して、心理的にいびってよい、という考え方を助長している様に感じたからです。丸刈りになった方は別に法律違反をしたわけでも、犯罪を犯したわけでもありません。雇用契約がどうなっているのかもしれませんが、雇用契約違反だとしても、公衆の面前で恥ずかしめを与える必要などありません。こっそり処理すれば良いでしょう。

それに、このグループのルールが、「仕事のために私生活を犠牲にして当たり前」が前提になっている、というのは、すべてを会社に捧げるのが当たり前、という日本の滅私奉公の考え方そのままであります。そういうビジネスモデルだから、とは言っても、昭和的な価値観は今の時代に合っていないのです。エンターテイメントだって、何が社会を良くするのか、考える責任があるのではないでしょうか。儲かるなら何をやってもいい、というのなら、武器商人や麻薬密売人と同じです。

仮に雇用主の命令で、演出としてこういう恥辱を受けたのだったら、イギリスだったら、従業金が雇用主を労働裁判で訴えたら、雇用主は有罪になるかもしれません。(演技なら別ですが)イギリスは、他の大陸欧州諸国と同じく、雇用主が従業員を、「身体的、心理的に不快な状態におくこと」は、「イジメ」と考えられるので、大変厳しく罰せられます。労働裁判所での審理は原則公開なので、会社名も何もばれてしまいます(日本の労働審判制度や「あっせん」は非公開です)有罪になったら大変な賠償金を支払うことになります。それに、本人が訴えなかったとしても、人権団体や女性団体が黙っていないかもしれません。演技なのかどうかわかりませんが、日本ではこれを見ていて平気な人が多いんでしょうか。

日本の対外イメージへの影響も懸念点であります。AKBは世界的に知られています。Youtubeに上がったビデオは世界中の人が見ます。言葉がわからない人も見ます。無理矢理刈り取られた様な髪の毛で泣いている若い女性を見たら、「暴行されたのではないか」「日本ではガールバンドのメンバーに、こうやって屈辱を与えるのが普通なのか?」と思う外国の人がいても不思議ではありません。面白い、と思う人はいません。こんなビデオを流しても、日本に取っては良いことは一つもないわけです。クールジャパン戦略が、本当に「狂うジャパン」になってしまいます。

日本は本当にグローバル化して、良い人に来てもらいたいとか、日本物を外に売りたいと思っているなら、今すぐイジメの文化を捨てて、私生活を楽しんでいる人、大人として自由にやっている人を「良かったね」「あなたも幸せになって下さい。私も楽しくやります」と祝福するべきでしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。