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ノキアシーメンスネットワークスの「シムテルコ」

2013.03.05

Updated by Tatsuya Kurosaka on March 5, 2013, 16:16 pm JST

▼ノキア シーメンス ネットワークスのプレス・アナリスト向けカンファレンス会場
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会期前日の日曜日から、MWCは事実上スタートしています。ファーウェイの次は、ノキアシーメンスネットワークス(以下NSN)のプレス・アナリスト向けカンファレンスに参加しました。

そういえばNSNに限らず、欧米の通信セクターでは、数年前から、プレスとアナリストの区分なく、カンファレンスを開催することが多いようです。いずれの質問も同じように手厳しく、投資家と需要家という異なるステイクホルダーの代理人たちが一枚岩になって、ギリギリと経営陣をいじめるという光景が広がります。

さてNSNのカンファレンスは、まずは業績発表と見通しから。ラジーブ・スリCEOは、ソフトバンクによるスプリント・ネクステル買収を引き合いに、特に北米市場が今後重要になるとの見通しを発表しました。グローバルでは、大規模なリストラや、宿敵エリクソンにBSS部門を売却するなど、同社は厳しいニュースが続いていましたが、いわゆる選択と集中を明確にした印象です。

▼ノキア シーメンス ネットワークスのラジーブ・スリCEO
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また日本でも、NTTドコモのLTE-Advanced(参考情報)のネットワークベンダーに、パナソニックモバイルコミュニケーションズ社とのコラボレーションで調達されるなど、先進技術の普及に熱心です。そうした戦略物資の一つとして、今回NSNは「リキッドアプリケーション」というソリューションを提案してきました。

プレスリリースをそのまま引用してみましょう。

「ノキアシーメンスネットワークスは、データ伝送の「土管」と化したネットワークの構成要素でしかなかった従来の基地局を、あらゆる種類のコンテンツやデータを蓄積し、スマートフォンやタブレットの利用場所や目的に応じて配信することができる存在へと進化させようとしています。利用者が接続するネットワーク末端の設備に有用性の高い情報を蓄積することにより、今までに比べはるかに優れたサービスを提供し、ネットワークの効率的な活用を図ることが可能になります。

ノキア シーメンス ネットワークスでは、この新技術をLiquid Applications(リキッドアプリケーション)と命名しました。

Liquid Applicationsは、アプリケーションデータをネットワーク経由で基地局に送ることができるため、基地局から加入者へデータが迅速に配信されます。たとえば、拡張現実アプリケーションのように基地局周辺に関連する情報や、通信事業者のネットワーク全体で利用できるニュースや動画コンテンツなどの データを基地局に格納しておけば、接続された通信機器に即座に配信することができます。」

昨年のMWCでも、コアネットワークとの密接な連携による基地局運用の最適化が、彼らの主要コンセプトとして推進されていました。こうした基地局のインテリジェント化をさらに進める動きとして、基地局にキャッシュのような機能を持たせて、無線ネットワークを系全体として効率化するのが、このソリューションの目的にあるようです。

これ自体がうまく動くのかは、まだまだ検証が必要でしょう。特に、東京圏のような大規模で過密な都市部のネットワークに関しては、ピコセルの動かし方なども含めて「そんなに簡単じゃないっす...」という現場の恨み節を、通信事業者の中の人からしばしばうかがっています。

しかし技術開発が向かうコンセプトとしては妥当なものだと思われますし、様々な周波数帯域やメディアが共存する環境下でのキャリアマイグレーション等、LTE-A/Bが指向するネットワーク・アーキテクチャを考えると、特にオペレーションやインフラのメンテナンスという観点から、こうしたソリューションはむしろ不可避であるとも思います。

そんなわけで、いい意味で「違和感なし」という感じだったのですが、おもしろかったのは会場の一角にあった"wizard of cells"というゲームの展示でした。

▼wizard of cells
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街の中での需要家の増大や複雑化などに、基地局の敷設など無線ネットワークの増強でどのように対応し、満足度を向上させていくか、というもので、いわば「シムテルコ(SimTelco)」というようなゲームです。

これも単純といえば単純すぎるし、やはり中の人からは「そんなに簡単じゃないっす...」という声が聞こえてきそうではあります。ただ、無線ネットワークがソフトウェアベースによる系全体での最適化に向かう中で、世界市場ではこうした感覚もアリなのだということが、しみじみ感じられる逸品でした。

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クロサカタツヤ(くろさか・たつや)

株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。