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オペレーターの凋落とNOKIA復活の兆し

2013.03.12

Updated by WirelessWire News編集部 on March 12, 2013, 10:44 am JST

バルセロナから帰国して早々に激しい花粉症の症状に悩まされ、時差ボケに続いてくしゃみで睡眠不足となり、まだ本調子を戻せずにいます。今年は去年より花粉が多いことに咥え、ここ最近の寒暖の差の激しさも加わってさらに辛い毎日です。

さてMWCから戻ってきて、現地から報じられた各メディアの記事を一通り読んでみました。新製品の発表などガジェット系のネタは他の皆さんにお任せして、今回も私が肌で感じたことを書いてみたいと思います。

オペレーターの存在感薄く

8つのホールに分かれて開催されたMWCのすべてを開催期間中に丹念に見て回るのは、事実上難しいことですが、雰囲気として特に感じたことがあります。それは「モバイルオペレーターの凋落」です。GSMは携帯電話業界最大規模のイベントとしてGSMAが開催しているもので、モバイルオペレーター、端末製造ベンダーなどが参加しています。

長い間、モバイルオペレーターによるRFPで商品が作られてきた日本と違って、海外では端末製造ベンダーの力も一般的には強く、モバイルオペレーターと対等な立場としてポジショニングされているところも珍しくありませんでした。しかしスマートフォン全盛となった今、この構図は大きく変化してきており、インターネット企業やメディア企業が台頭してパワーバランスが変わってきました。総じて、モバイルオペレーターへの関心は段々と薄れてきていたのも事実です。

そして今年、私は初めてMWCに参加したわけですが、各カンファレンス、プレゼンテーションを見て衝撃を受けました。あるカンファレンスでは、オペレーターであるドイツテレコム、韓国KTのCEOを目の前に、VoIPサービスを展開するViberのCEOがオペレーターの存在価値について揶揄し、会場からは拍手と笑いが起きました。当のオペレーター側と、そこにネットワーク機器を納入するエリクソン社のCEOは、ただただ苦笑いするばかりでした。(この時の模様は岸田重行さんが報告されています)。

またHuaweiの新商品発表会では同社と提携したモバイルオペレーターであるOrangeの代表が壇上に上がった途端、「おまえの話には興味ない」と言わんばかりに会場にいた記者たちが次々に会場を出て行ってしまいました。会場の席はあっという間に半分近くが空席に。容赦ないあからさまな反応には驚くばかりで、その光景に大きく時代が変化したことを感じざるを得ませんでした(元々、ガジェットにしか興味がない記者であれば、MWCに限らずこうなのかも知れませんが...)。

▼Huaweiの発表会で檀上に上がったOrangeの代表。オペレーターが壇上に上がった途端に席を立ち、会場を後にする記者が多かった。
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NOKIA、復活の兆しを感じたもの

主役交代といえばNOKIAに触れないわけにはいきません。長く端末製造ベンダーのトップに君臨していたNOKIAの低迷は、ここ数年のモバイル業界の変化の象徴といえます。

定義は様々ですが、ヨーロッパをはじめ多くの人たちが長く使ってきた、Symbian OS用のS60をベースとしたNOKIAの端末もスマートフォンといえます。しかしAppleのiPhone、GoogleのAndroidを搭載したGALAXYなどにシェアを奪われ、MicrosoftのWindows Phoneの導入で起死回生を狙っているもののその成果はまだ出ていません。ここ数年のNOKIAは明らかに元気がなく、かつての〝業界の雄〟としての勢いは全くといっていいほど感じられなかったのが現実です。

そんな中迎えた今年のMWCで、NOKIAは初日の朝一番にプレス向けの発表会をNOKIAブースで開催しました。ここで、私はちょっとしたNOKIAの変化を感じました。今回発表されたのはWindows Phone端末「LUMIA」のミドルハイとローエンドが各1機種、そしてキャンディーバータイプのローエンド2機種の計4機種でした。

ガジェット好きの人には物足りないラインナップだったようですが、私はそのラインナップを見て一人興奮していました。私が興奮した理由、すなわち「変化を感じた」点はすべての端末が「LUMIAデザイン」だったということです。

▼Lumiaデザインをすべてのローエンドの商品に投入することを発表するElop CEO。
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かつてのNOKIA端末は、一見してそれがNOKIAだとわかるデザインでした。かつて日本でもNOKIAが発売されていたことがありましたが、いわゆる「ヨーロピアンデザイン」などと紹介されていたものです。しかし、Windows Phoneに軸足を移しNOKIA端末のデザインは、それまでの「NOKIAらしいローエンド」と「Windows Phone(LUMIA)らしいハイエンド」に分かれていました。

さて、これからどうするんだろうか...と思っていたところに、今回の発表。「あらゆる価格の製品に、LUMIAデザインの要素を取り込む」とNOKIAのCEOのElop氏がプレゼンしたのです。15ユーロという価格設定は間違いなくシェアを取りに行く戦略です。その戦略的端末のデザインが、カラフルなLUMIAのデザインフィロソフィー。これはNOKIAとしても大きな決断です。

▼まさかの15ユーロ(1,700円程度)で市場に投入されるNOKIA 105
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ブランド構築で大切な、〝らしさ〟を生む要素

実はプレゼン後、タッチ&トライのコーナーにいたNOKIA社員に声をかけて、ちょっと意地悪な質問を投げかけてみました。「以前のNOKIAデザインと、今回のLUMIAデザインフィロソフィーの端末、正直なところ本心ではどっちがいいと思う?どっちが好き?」。私は、これまでのヨーロッパでのフィーチャーフォンやスマートフォンのカラーバリエーションなどから、「以前のデザインがいい」という答えが返ってくると予想しました。しかし、それは裏切られます。「実は自分はSymbianからNOKIAに来たんだけど...僕は、LUMIAデザインの方がこれからのNOKIAには良いと思うし、それがNOKIAらしいと思う」。彼はそう答えたのです。

そうして気が付いたのですが、昨年のCESで見たNOKIAブース、そして去年のバルセロナを見た人からの伝聞では「NOKIAブースの元気のなさ」が気になっていたのですが、今年のブースは違いました。どこか雰囲気が良く、ブースにいるスタッフの顔も明るい印象だったのです。もちろんこれは主観ですし、訪れた時間にもよるのかも知れません。しかし、その後何度か訪れても状況は変わりませんでしたし、ブースに集まる人の数も多かった印象です。

▼今年のMWCのNOKIAブースは、スタッフも明るくテンション高め?
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どの端末を手にしてもNOKIAを感じる。その新しいデザインフィロソフィーは「LUMIA」であり、カラフルなカラーを纏ったシンプルでミニマルな筐体。これこそが〝NOKIAらしさ〟を生む、新しいブランドの戦略と理解しました。

何よりも、HuaweiやZTEの「機能てんこ盛り」発表会と違い、デザインを戦略の中核に据えるということがしっかりとわかったプレゼン、そして「スマートフォンも含めて、ユーザーの利便性やコミュニケーションに役立てるというカメラ機能の搭載やLINEとの提携の発表など、何をしたいかがわかったのがNOKIAの発表でした。私はここに、NOKIAの本気と意気込み、そして復活の兆しを感じたのです。

ただし、HuaweiとZTEの新製品自体は相当なものです。おそらく日本メーカーがこのレベルに追いつくには、まだまだかもしれません。これだけのスピード感をもって、常に最新のものを生み出そうとする力は、開発のための人と金という大きなパワーを持つ2社ならでは。だからこそ、その製品をどのように市場にアプローチしていくかの部分が聞けずに、残念に感じてしまったのかもしれません。少なくともプレス向けのカンファレンスですから、リリース本文にはない戦略の部分について、トップの方の口から直接聞きたかったというのが正直なところです。

NOKIAとHuawei、ZTEの向かう方向は今のところ異なるようですが、製品力という面では中国2社がかなりのところまで来たと思います。この3社のこれからの1年がどうなるのか。そして、来年のMWCでどんなことを見せてくれるのか。〝答え合わせ〟も含めて、期待を込めて楽しみにしたいと思います。

文・長尾 彰一(通信・IT系コンサルタント)

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