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アフリカ編2013(5)Nokia・マイクロソフトのアフリカでの取組み

2013.10.17

Updated by Hitoshi Sato on October 17, 2013, 23:00 pm JST

かつてアフリカで携帯電話といえばフィンランドのNokiaであった。Nokiaは現在でもアフリカではフィーチャーフォンで人気はある。しかし3回目のレポートでお伝えしたように、アフリカにも新たな地場の端末メーカーや中国メーカーの台頭で、以前のような勢いはなくなってしまった。マイクロソフトとNokiaは2013年9月3日、マイクロソフトがノキアの携帯電話事業を54億4000万ユーロ(約7,134億円)で買収することで合意したと発表した。今回はそのNokiaとマイクロソフトのアフリカにおける取組みを見ていきたい。

Nokiaのアフリカでの取組み

Nokiaの取組みを紹介する前にNokiaの端末がアフリカで人気があるのか、記しておく。Nokiaはアフリカだけでなくアジア、中南米の新興国でも同じ理由で人気がある。
その理由として以下があげられる。

(1)昔からの販売網とブランド

あらゆるところで、Nokiaの端末は販売しているし、宣伝広告を見かけた。最近ではあまり見かけなくなってしまったが、それでもまだ見かける。Nokiaはアフリカ(だけでなく他の新興国でも)において1990年代から携帯電話の販売を展開していたことから、現地でのブランド力は強い。中古端末でもNokiaは人気が高い。

(2)防塵で強い端末やアフリカの生活に密着した端末が多い

アフリカ大陸は広いので一概には言えないが、日本よりも砂や埃(ほこり)が多い。湿気が高い地域も多い。携帯電話はコモディティ化したとはいえ、精密機械である。そのようなアフリカの自然や地理に応じた端末をNokiaは初期の頃から提供してきた。そして非常にシンプルである。音声通話(電話)とショートメッセージ(SMS)程度の機能しかついていないが、安価で新品で購入しても日本円にして2,000円で購入可能である。

2003年にリリースされて全世界で10億台以上販売されたと言われている「Nokia 1100」はアフリカでも大人気の端末である。見るとわかるように、キーパッドの個所に隙間がない。つまり埃や湿気が入りにくいため、壊れにくい。アフリカでは携帯電話選択の際に重要な要素である。

また2010年に販売開始された「Nokia 1616」は携帯電話に懐中電灯がついている。アフリカは日本のような先進国のように電気が豊富で、どこでも煌々と光り輝いていない。部屋の中では薄暗いことが多い。車で町を走っていても、田舎の方は電灯がない地域が多い。そのようなアフリカで携帯電話に懐中電灯がついているのは、コミュニケーション手段としての携帯電話の他に日常の生活にも役立つ。Nokiaはこのようなアフリカ(新興国)市場の状況を熟知した物作りと販売を展開している。

(図1)Nokia 1100
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(図2)Nokia 1616
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Nokiaのソーラー充電器

Nokiaはケニア、ナイジェリアにおいて太陽光による充電器の普及を目指して販売を行っていくことを2012年10月12日に公表した。ソーラー充電器「Portable Solar Charger DC-40」は1,250ケニアシリング(約1,200円)で販売される。

アフリカの農村や地方では、まだ電気が十分に通っていない地域が多い。そのような地域でも携帯電話は着実に普及してきている。彼らは乾電池式の充電器で充電をしていることが多い。

世界銀行によると、ケニアでは16%、ナイジェリアでは51%しか、日常的に安定した電気供給を受けていない。それ以外の多くの人々は電気を満足に利用できない環境にいる。多くは農村や地方が多い。しかしアフリカには電気は未整備な地域でも、ソーラー発電に必要な「太陽の光」は十分にある。アフリカではソーラー充電器の需要は大きいだろう。

Nokiaの携帯電話は充電器が同じものが多い。そのため、中古端末として、再度Nokiaの端末を購入しても以前に利用していた充電器と同じものを利用できる。また家族でNokia端末用の充電器があれば、その充電器を利用できる。中古端末市場が活況のある地域では、端末だけ購入するが充電器は不要であれば、その分充電器の購入費用は浮くことになる。

中古品として売る時にも、Nokiaであれば充電器がなくとも買取業者に売ることができる。
これはNokiaの端末がアフリカのような新興国市場で受け入れられている理由の1つであろう。携帯電話がコモディティ化された近年、アフリカでは地場メーカーや中華系メーカーの躍進が目覚ましく、かつてほどNokiaの勢いは感じられなくなった。一方でまだ既存のNokia端末を利用している人が非常にたくさんいる。何年も前にリリースされたNokia端末でも中古品としていまだにアフリカでは活用されている。今回のソーラー充電器の販売において、アフリカにおけるNokiaの更なる飛躍を期待している。

電気はなくとも太陽の光はあり、携帯電話が急速に普及しているアフリカでは、ソーラー充電器の需要は大きいだろう。しかしアフリカには1日1ドル未満で生活している人もまだ多い。彼らにとっては中古であれ携帯電話端末やソーラー充電器はまだ高価である。ソーラー充電器で便利になる人もいる一方で、まだそこまで達しない人々がアフリカには大勢いることを忘れてはならない。

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Nokia Life Service

Nokiaは2013年2月26日、アフリカで事業展開をしているインド系の通信事業者Bharti Airtelと提携して発展途上国での情報提供サービスである「Nokia Life Service」をケニアで提供すると報じられた *1。

Nokiaがケニアで提供する「Nokia Life Service」は2009年にインドで開始され、その後中国、インドネシア、ナイジェリアといった新興国へと広がっていった。日常の生活に関する情報、健康・医療、農業情報、教育情報、娯楽情報、宗教・スピリチュアルに関する情報などがNokiaの携帯電話を使用している人にパーソナライズした情報をSMSを通じて配信されるサービスである。現在、約90のコンテンツプロバイダー、大学、NGOなどから18の言語で様々な情報が配信されており、全世界で9,500万の利用者がいる。

ケニアでの「Nokia Life Service」はヘルスケア、教育、エンターテイメント、政治ニュースの4分野を主軸とするほか、ブリティッシュ・カウンシルと提携して英語学習コンテンツなども英語とスワヒリ語で配信する。1日2ケニア・シリング(約2円弱)で毎日様々な情報が配信される。ケニアは約4,000万の人口のうち65%が郊外(ルーラル地域)に住んでいるため、彼らが求めている日々の情報を配信していく計画である *2。

また、Nokiaは「Nokia Life Service」以外にも「Nokia Xpress Browser」をAirtelユーザ向けに提供する。このブラウザはNokiaが提供するクラウドベースのブラウザで、データが圧縮されて通信されるため従来のブラウザよりもダウンロードスピードが90%速く、またユーザのデータ通信費用の負担も軽くてすむ。

さらにNokiaが提供するアプリストア「Nokia Store」からのアプリダウンロード時にAirtelのキャリア課金が利用できるようにする。 両社はケニアでまずサービスを開始して、その後順次Airtel が事業展開している他のアフリカ諸国に拡大していく予定である。

*1 Venture Africa(2013) Apr 3,2013 "Airtel, Nokia Partner To Provide Value Added Services In Africa"

*2 Nokia(2013 ) Mar 21, 2013 "Nokia Life in Kenya"

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マイクロソフトのアフリカでの取組み

マイクロソフトは20年に渡ってアフリカでビジネスを行っており、10,000以上のパートナー企業がアフリカにある。同社は2013年2月4日、アフリカにおいて2016年までにスマートデバイスの普及、ICTのインフラ整備、利用促進を図るとした経済開発イニシアティブ「4Afrika Initiative」を発表した *3。

マイクロソフトは「4Afrika Initiative」のプロジェクトを通じて、2016年までに数千万人の若者がスマートデバイスを利用できる環境を作ること、100万社以上の中小企業がオンラインに接続できるようにすること、10万人の従業員のITスキル向上、新卒者10万人のITスキル向上と就職斡旋を目指している。

「4Afrika Initiative」のプログラムは以下の通りである。

(1)HuaweiのWindows Phone 8スマートフォン「Huawei 4Afrika」

中国メーカーHuaweiと提携し、Windows Phone 8を搭載したスマートフォン「Huawei 4Afrika」を開発する。2013年2月後半よりアンゴラ、エジプト、コートジボワール、モロッコ、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアの7カ国で提供を開始、その後、他アフリカ諸国に拡大していく。 価格は150ドル以下と推測されている。Huaweiは1999年からアフリカ市場に進出しており、アフリカの多くの国で通信設備や端末を納入しており、アフリカにおいて一定のブランド力を築いている。

(図3)Huawei社のWindowsスマートフォン「Huawei 4Afrika」
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(2)ケニアでの高速インターネット提供パイロットプロジェクト

「Mawingu」ケニアICT省、ケニアのインターネットプロバイダーIndigo Telecomと提携し、ケニアで無線基地局展開に向けたパイロットプロジェクトを行う。スワヒリ語で雲(cloud)を意味する「Mawingu」がプロジェクト名である。無線基地局のパイロットプロジェクトで、Microsoft Researchで一部開発した技術を活用する。テレビのホワイトスペース(空き周波数帯)を使った高速インターネット回線のための基地局で、電力の行き届かない地域では太陽光発電で稼働する。高速なインターネットを提供することによってビジネス、教育、ヘルスケア、政府の活動やサービスをネット上で提供していくことを目指している。マイクロソフトは同様のプロジェクトをアフリカ東部、南部の国々で行う。

(3)中小企業向けサービス「SME Online Hub」

アフリカの中小企業が現地でビジネスを提供するにあたって必要なネットでのサービスを無料で提供する「SME Online Hub」を2013年4月に南アフリカ、モロッコで提供する。中小企業がホームページを開設する際のツールを無料で提供したり、ドメイン登録が1年間無料でできる。

(4)教育機関「Afrika Academy」

ビジネスに必要なITスキルを向上させることによって就職や起業支援を目的とした教育機関「Afrika Academy」を開設する。数カ月以内にコートジボワールで立ち上げる。大学生、ビジネスリーダー、マイクロソフトのパートナー企業が対象。オンラインでの学習ツールも提供する。

(5)学生によるアプリ開発「AppFactory」

南アフリカとエジプトで、WindowsおよびWindows Phone向けアプリケーションを開発するプロジェクト「AppFactory」を開設。30人の学生アルバイトが働いて、1カ月に約90の新しいアプリが開発されている。

(6)Nokiaと提携したWindows Phoneの販売促進

ケニアとナイジェリアではNokia、現地の通信事業者(ケニアではSafaricom、ナイジェリアではBharti Airtel)と提携し、Nokiaの携帯電話販売店内でトレーニングプログラムを実施しWindows Phone「Lumia 510」「Lumia620」の販売促進を図っている。なおナイジェリアでは販売されている携帯電話のうち95%がフィーチャーフォンである。

(7)女性のITスキル向上を目指したポータルサイト「MasrWorks」

北アフリカでは女性のITスキル向上による雇用、起業を促進するためのポータルサイト「MasrWorks」を現地NGO「Silatech」と提携して2013年3月から提供開始。

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マイクロソフトがアフリカで果たす役割

マイクロソフトが提供するモバイルOSのWindows PhoneはノキアからLumiaシリーズが出ているものの、世界的にはiPhoneやAndroidの端末と比較すると出荷台数もシェアは非常に小さい。さらにアフリカでは地場メーカーや中国系のメーカーがAndroid端末を現地で開発、販売を開始している。マイクロソフトと提携したHuaweiはAndroid端末「IDEOS」がケニアを中心に非常に人気がある。

マイクロソフトとしてもAndroidがアフリカ全土に行き渡る前に早急な対策が必要である。そのためにはアフリカでブランド力があるHuaweiと提携をした。その後2013年9月にはマイクロソフトはNokiaの携帯電話部門を買収することを発表した。マイクロソフトにとってNokiaはアフリカ市場(アフリカだけでなく新興国)で足場を作るためには重要なパートナーである。

毎日PCを利用している先進国の人にとって、多くのPCのOSはWindowsである。そのためマイクロソフトは毎日接する馴染みある会社である。一方でアフリカではPCに接続してインターネットを利用する人はまだ限られている。多くのアフリカ諸国でPCでのインターネット接続率は10%以下である。つまりマイクロソフトに対して親近感がない人や知らない人がアフリカには多い。

アフリカで流通している中古端末の多くはNokiaであることや同社のブランド力はアフリカ市場で高いため、マイクロソフトは知らなくともNokiaは知っている人は多い。NokiaのWindows Phoneを促進していくことはアフリカのスマートフォン市場でのマイクロソフトの進出の足掛かりになる可能性が大きい。

今回マイクロソフトが企画している「4Afrika Initiative」では現地の政府やパートナー企業、NGOなどと提携して、インフラから端末、コンテンツまで幅広く様々なプロジェクトを提供する予定である。アフリカでは喫緊で利益が出るプロジェクトは少ない。しかし将来大きく花開いた時にビジネスとして収益を上げ、マイクロソフトのアフリカでの事業展開に寄与する可能性が大きいものばかりである。

さらにアフリカの多くの人々がモバイルであれPCであれインターネットに接続し、国内外の様々な情報に接することによる「デジタル・デバイド」の解消やITスキルを身につけることはアフリカ諸国の発展に繋がる。そのような大きな投資を行える企業は世界でも限られていることからマイクロソフトが果たす役割は大きいだろう。

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。