都市化と居住の課題に取り組む国際機関、国連ハビタット(人間居住計画)によると発展途上国の都市部では暴力の被害を受けるのは女性が男性の2倍にも及ぶようなのだが、貧困や未整備な社会基盤のため適切な支援を受けることができないだけでなく、そもそも適切な情報を得ることができない状況にある。
例えばブラジルでは性的暴行が問題で、リオデジャネイロでは2011年と比べ2012年に警察に通報があっただけで、レイプを含む暴力事件が23.8パーセント増えているそうだ。ブラジル政府は「LANハウス(LAN houses)」と呼ばれる公共インターネット・アクセス環境整備に投資してきている。インターネットカフェのような形態で、貧困層の住むエリアにも浸透しているという。個人宅向けのブロードバンド環境は悪くても、ネットにアクセスできる人は多い。そこでUN Woman、ユニセフ、国連ハビタットが共同で2013年3月8日(国際女性デー)にオンラインウェブサイトを開設し、スマートフォン用アプリをリリースした。暴力の被害者となった女性や少女を支援することが目的だ。
ブラジルで家庭内などでの性的暴力に対して2006年から施行されているマリア・ダ・ペーニャ法(Maria da Penha Law)の存在については知られているものの、実際のところ被害を受けた女性や少女の多くは、どこに行って助けを求めればよいのか知らずにいるし、どのような支援を受けることができるのか、そもそもどのような権利が守られているのかさえ正確に知らずにいたという。
ウェブサイトやアプリを使うとホットラインの番号、守られる権利などに関する情報、相談窓口のロケーションなどが分かる。相談窓口のあるセンターからは、精神的、社会的、法的な支援を受けることができるという。並行してNGOが若い女性リーダーを組織し、このウェブサイトとアプリの存在と使い方を女性たちに知らせる活動を始めた。リーダーたちはスマートフォンを使って貧しいエリアの道路や街灯の状況を写真やビデオで記録し、自治体の開発計画の基礎データとする活動も行っているという。
【参照情報】
・UN Womenのウェブサイト
・Say NO- UNiTEのウェブサイト
・In Rio de Janeiro's favela s, a new online tool tackles violence against women and girls
・LAN Houses: A new wave of digital inclusion in Brazil
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