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Yota Devicesはロシアを代表するメーカーになれるか

2014.01.20

Updated by Hitoshi Sato on January 20, 2014, 17:07 pm UTC

ロシアの端末メーカーYota Devicesは2013年12月4日、モスクワで開催されたイベントで新たなスマートフォン「YotaPhone」を発表した。同端末は、表は液晶、裏はE-Ink(電子ペーパー)の両面Androidスマートフォンである。2013年3月にバルセロナで開催されたMobile World Congress 2013で披露され、その奇抜な形状が注目を集めていた。ロシアからもついに地場(ローカル)メーカーが登場してきた。そして同社はロシア市場だけでなくドイツ、オーストリア、フランス、スペイン「YotaPhone」を発2014年初頭には販売地域を欧州と中近東に拡大するという。欧州での販売価格は499ユーロとハイエンドな端末である。海外での販売に関しては、Yota Devicesはディストリビューターの米Ingram Microと独Brodosと提携した。但し、現時点ではアメリカや日本での発売予定はないようだ。

両面スマートフォン「YotaPhone」

背面にE-Inkディスプレイを配した主な目的は、常時オンにした画面を搭載することにより、いちいちスリープから起動させずに最新情報にアクセスできる。同社のヴラド・マルチノフCEOによると、「平均的なスマートフォンユーザーは1日に150回以上端末を起動させている」とのこと。E-Inkディスプレイの搭載により、そうした確認のためだけの起動の必要をなくしたことで、同端末の"読書モード"でのバッテリー持続時間は一般的なスマートフォンの7~10倍である同社は説明している。50時間の閲覧が可能とのことである。但しLCDディスプレイを使用した場合には、バッテリー寿命は他のスマートフォンとほぼ同じとのこと。背面ディスプレイにはSMSのメッセージ、電話の着信、カレンダー、天気予報、時計、リマインダーなどを表示でき、常時表示する情報はカスタマイズ可能で、もちろん電子書籍リーダーとしての役割も果たす。「YotaPhone」は日本と台湾で製造された部品を使って、中国で組み立てられている。

▼Yota Phoneのスペック
20140120-1.jpg
(出典:Yota Devices)

▼価格
・ロシア市場 600ドル(約6万円)
・欧州、中東市場 499ユーロ(約7万円)

▼「YotaPhone」(左が表、右が裏)
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(出典:Yota Devices)

「YotaPhone」はロシアを代表するメーカーになれるか

「YotaPhone」をリリースしたYota Devicesはロシアの投資ファンドWooden Fishが過半数を所有しており、Yotaブランドで通信サービスを提供するScartelから2011年にスピンオフした会社である。その後、ロシア第2位の通信事業者であるMegafonがScartelを約12億ドルで買収している。

「YotaPhone」はガジェット好きで知られるロシアのドミトリー・メドベージェフ首相にも贈呈された。ロシアの通信社によると、同首相が「この目新しい新端末にはiPhoneのメーカーであるAppleも目を見張るだろう」と語ったと報じられている。

ロシアではサムスン、LG、ノキア、アップルといったグローバルメーカーのスマートフォンの人気が高い。またロシアの携帯電話小売トップであるEurosetは、ロシアでは2013年11月に初めてスマートフォンの販売台数が携帯電話の販売台数を上回ったことを明らかにした。売上高ベースでは、スマートフォンが市場の85%を占めた。スマートフォンが主流になりつつあるロシア市場は「YotaPhone」にとっては追い風である。

しかし、まだ1機種しかリリースしていないのでブランド力もない「YotaPhone」がいきなりロシアのスマートフォン市場を制することはないだろう。また端末価格もロシアでは約600ドルと決して安くない。モスクワでの平均月給が約8万円(800ドル)であることから、むしろ非常に高い端末である。なおロシアではiPhoneが約870ドルである。

ロシアの新興メーカーが新しいスマートフォンをリリースするにあたって「YotaPhone」は両面スマートフォンという特異なスタイルで、裏面にはE-Inkディスプレイ(電子ペーパー)を採用することによって省電力化を目指した。新たに登場したブランド力のないメーカーにとってはこのような差別化をした製品が重要である。一方で、同業他社からも模倣されやすい端末であることも否めない。日本では最近は多くの日本メーカーを中心に省電力かつ長時間電池が持つ端末が多くリリースされているが、海外ではまだ省電力対応な端末の需要は大きい。そこに目を付けた両面スマートフォンはアイディアとしては非常に良いが、同業他社でも開発が可能である。

「YotaPhone」はロシアだけでなく欧州、中東でも販売される予定である。最近はインド、中国、アフリカ諸国、インドネシア、フィリピンなど各国で地場のメーカーが台頭していきている。そしてそれらのメーカーは自国で足場を固めてから海外市場への展開を狙おうとしている。スマートフォン端末市場の世界的な競争はますます激化している。Yota Devicesもまずは地元ロシアで足場を固めることが重要だろうが、ロシア市場は既にグローバルメーカーのスマートフォンが多数乱立している。そこで最初から海外市場も視野に入れた販売戦略を採っているのだろう。ロシアで登場した両面スマートフォン「YotaPhone」はロシアと世界の市場でどれだけ受け入れられるのだろうか。ロシア発の新興メーカーの行方に注目していきたい。

【参考動画】
▼YotaPhone

▼Meet the new dual-screen Yotaphone

【参照情報】
Yota Devices

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。