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さようなら「Yahoo!メッセンジャー」:ヤフーのイー・アクセス買収と盛者必衰のコミュニケーションサービス

2014.03.28

Updated by Hitoshi Sato on March 28, 2014, 19:17 pm JST

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ヤフーは2014年3月27日、イー・アクセスを買収すると発表した。同社の株式の99.68%をソフトバンクから3,240億円で取得する。スマートフォン事業に参入して、本業のインターネットサービス事業を拡大するのが狙いである。日本初の「インターネットキャリア事業」でその名称は「Y!mobile(ワイモバイル)」を予定している。

そのヤフーはイー・アクセス買収の前日の3月26日、インスタントメッセンジャー「Yahoo!メッセンジャー」のサービス提供を終了した。2000年4月から14年にわたってサービスを提供してきた。サービス終了の原因は「昨今利用者の減少が著しく、サービスを維持していくことが困難」と2014年1月に判断したためである。「Yahoo!メッセンジャー」の友だちリストはYahoo!メールに引き継がれ、メッセージのやりとりができる。

変遷するコミュニケーションのプラットフォーム

かつて米マイクロソフトが2012年11月に、インスタントメッセンジャーソフト「Windows Live メッセンジャー」を2013年4月にサービス終了し、同社が提供するSkypeに統合した。もともとは1999年に「MSNメッセンジャー」として提供をしていたものである。「おお、懐かしい!」と思う方も多いだろう。

最近の若い人や学生は、その存在を知らない人がいるかもしれないが「Yahoo!メッセンジャー」、「Windows Live メッセンジャー」ともにPCでのメッセージのやり取りで利用していた人も多いはずである。キーボードに向かってメッセージを打ち込むイメージが強い。その隆盛は2000年代前半までだったのだろう。その後、スマートフォンが普及し、LINEに代表されるメッセンジャーアプリが台頭してくると、世界中でユーザーはそれらメッセンジャーアプリを利用し始めた。

「Yahoo!メッセンジャー」は「Yahoo!メール」に引き継がれ、「Windows Live メッセンジャー」はSkypeに統合されたが、どの程度の人が継続して利用しているのだろうか。多くの人は新しく登場したメッセンジャーアプリなどへ移行してしまったのではないだろうか。

「Yahoo!メッセンジャー」も「Windows Live メッセンジャー」もPCでの利用するコミュニケーションツールのイメージが強すぎた。Skypeもそうであろう。さらにSkypeは「VoIP(Voice over IP)」というイメージが強い。スマートフォン以降に新たに登場した「LINE」、「WhatsApp」、「WeChat」などのメッセンジャーアプリは従来の携帯電話メールの延長のようなものであろう。

このようなコミュニケーションのプラットフォームとなるサービスは、ソフトウェアやアプリケーションをインストールしたユーザー同士が利用することから、相手が利用しなくなると利用しなくなる。そして相手が新しいサービスを利用したら、それに合わせて新しいサービスを利用するようになる。そのようにして普及が拡大していく。普及のスピードも速いが、凋落のスピードも速い。

ユーザーは移り気である。現在、栄華を極めている「LINE」や「WhatsApp」もいつユーザーからそっぽを向かれて凋落していくか、わからない。ユーザーの立場からすると、コミュニケーションが出来ればよいのであって、そのプラットフォームが「Yahoo!メッセンジャー」であれ「Skype」であれ「LINE」であれ、強いこだわりはほとんどない。みんなが使っていて便利だから使うだけである。コミュニケーションのプラットフォームの栄枯盛衰の儚さを感じないわけにはいかない。

通信事業者ヤフーとしてのコミュニケーションツールは?

通信事業に参入してくるヤフーであるが、ヤフーの宮坂社長は「ヤフーはスマホの浸透に伴って事業が拡大している。さらに伸ばすためには、我々自身でスマホの普及を加速させたほうがよいと思っていた」と買収する理由を説明した。

但し、ヤフーのスマートフォンが普及しても、そこで利用されるコミュニケーションツールが「Yahoo!メッセンジャー」後継の「Yahoo!メール」でなく、「LINE」や「Facebook」、「Twitter」が主流になることは多いに考えられる。

「Y! mobile」は日本初の「インターネットキャリア事業」と銘打ってるが、「インターネットのサービス」の中でも競争が激しいコミュニケーションツールもヤフーが握れるのかどうかは不明である。

今回のイー・アクセス買収を契機にヤフーは「LINE」などに対抗する、新たなメッセンジャーアプリを開発するのだろうか。こちらも重ねて注目したい。

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。