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チャイナモバイルの減益とOTTの台頭

2014.04.23

Updated by Hitoshi Sato on April 23, 2014, 09:49 am JST

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Image: by Rob Deutscher (CC-BY)

世界最大の携帯電話事業者であるチャイナモバイル (中国移動)は2014年4月22日、2014年1~3月(第1四半期)の決算を発表した。この3か月間で加入者は1,400万増加したにもかかわらず、2014年1月から販売開始したiPhoneの販促コスト、通信網構築コストが嵩んで3四半期連続の減益となった。

同社が発表した資料によると、1~3月期の純利益 は約9.4%減の252億4,000万元(約4,160億円)。売上高は約7.8%増の1,548億元(約2兆5,540億円)だった。

同社のXi Guohua氏は「新たに台頭してきているインターネットのサービスによって、伝統的な携帯電話でのコミュニケーション(SMSや音声通話)がますます厳しい状況になってきている」ことを指摘し、減益の大きな要因として無料で利用できるメッセンジャーアプリなどOTTの台頭をあげている。1人あたりのARPUは62元(約1,000円)で1年前の68元(約1,120円)から減少した。

チャイナモバイルの加入者は右肩上がりで増加するものの、その利用者獲得に要する費用がかさむこと、また彼らの多くがチャイナモバイルのユーザではあってもSMS(ショートメッセージ)や音声通話を利用しないで、メッセンジャーアプリなどでコミュニケーションを行っているため、ARPUが低下しているのだ。

特に中国ではWeiboなどのメッセンジャーアプリが大人気であり、利用者は以前のように携帯電話会社が提供するサービスや料金プランに依拠しなくなった。iPhoneなどスマートフォンが急速に拡大しても、彼らの多くが無料で利用できるメッセンジャーアプリを利用して従来のSMSや音声通話を利用しなくなってしまった。iPhone販売のために多額の販促費を積んで加入者獲得に躍起になっている通信事業者にとっては皮肉なことだ。

この傾向は世界中の通信事業者が直面している問題であるが、加入者は7億8,100万を抱える世界最大のチャイナモバイルへのインパクトは大きい。中国の通信事業者は大きなパラダイムシフトの中におり、全世界の通信事業者が中国の事業者の動向に注目している。

【参考動画】China Mobile deal no cure-all for Apple's China woes

【参照情報】
チャイナモバイル決算
China Mobile Posts Profits Decline As OTT Eats into Revenues

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。