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サービス化するテクノロジーとネットワーク

2014.04.21

Updated by Asako Itagaki on April 21, 2014, 20:00 pm UTC

久しぶりにコーナーの形で書く場所を頂くことになりました。小手調べ的にまずは全体論的な話として技術のサービス化から一部IoTの話までを取り上げます。

3月にAmazonがゲーム事業者向けのクラウドプラットフォーム「Amazon AppStream」をリリースしました。

産業分析をするに際し、このところ重要な問いかけのひとつとして「技術がサービス化されて提供されるようになると、どのような変化が起きるか」というものがあります。Amazonの場合はAWSと括られる汎用クラウドのサービスが既にありますが、業界向けサービスとして派生した本サービスはケースとして考えるに面白い特徴を幾つか持っています。

通常のAWSと異なる売り込みがされてる部分をざっと抜き出してみると、
・複数の端末に配信できるマルチプラットフォーム対応
・グラフィック処理、GPU部分を意識してのサービス設計
といった風に、ゲーム用途が故に重要視される部分が強化されています。

ゲーム開発事業者にとっては、このサービスの出現は、自社のゲームプラットフォームを持って独自展開をしつつも、社内にインフラエンジニアを数多く抱えなくて良い、つまりエンジニアリングリソースをゲームコンテンツとサービス運営の側に集中できるようになることを意味します。また、他社プラットフォームへの依存を減らす経営の選択肢を持ちやすくなることから、会社の動き方やコンテンツ制作の方針も場合によっては変わってくることでしょう。自社インフラの運用に苦労している様子の事業者も見受けられることから、そこまで事業規模の大きくない事業者にとっては福音になりえるかもしれません。

つまり、ある程度標準的な使い方が固まってきた分野においては、マシンを買ってきて自分向け/自社向けにセットアップして使う、というのがコンピューターの使い方ではなく、業界向けにチューニングした状態のサービスをそのまま受け取るという形に移行してきているという状況が見てとれます。クラウドと比しても、用途を意識してチューニングが施されているというのは、単純に基本技術や処理能力の高さのみがポイントとなるのではなく、業界ごとやあるいは業界から更に絞ったお客さんの利用場面を踏まえて環境構築を行う業務理解が包含された形でサービス提供される形にに変化して来ていると言えます。

本論からやや脱線しまずがAmazonは独自のゲームハードを出すのではとの噂話もでています。

Amazonはデジタルコンテンツ分野を書籍、音楽から徐々に広げる動きを見せており、Kindleのカラー対応と合わせ映像コンテンツ分野を含めていわゆるコンテンツビジネスの強化をずっと行っています。

独自ハードまで手を突っ込むのか、手元で進めているKindleへのゲーム配信までを主戦場とするのかはまだわかりませんが、いずれにしてもゲームにおいては開発側のクラウドと対応した稼働クライアントをAmazonは提供環境として揃えた形になっています。iTuneなどの単品のアプリ配布ではない、クラウド側との統合された形での基盤提要は、スタンドアロンのゲームではなく、クラウドと連携してのネットワークゲーム、オンラインゲームの領域もカバーしやすくなります。このように、他社へのマルチ配信もカバーしたうえで、いわば、クラウドとクライアントの両方をカバーした、いわばクラクラの環境全体がゲーム向けのテクノロジー(サービス)プラットフォームであるとの再定義が行われていることとなります。

独自ハードの話になると、対任天堂、ソニー、マイクロソフトというゲームハード側を意識しての競争の話になりますが、このテーマは機会があればいずれ扱うこととして本題に戻ります。

テクノロジー基盤側がサービス化しつつある流れは、もうひとつ、最近話題になり始めたトレンドワードとも歩調をそろえ始めています。そうIoTです。

モノのインターネット、と分かったような分からないようなフレーズであり、実際あちこちの議論を見ていても、どこまで何を意味するのかはっきりしないところはありますが、Amazonの動きでいうと、汎用端末であったスマートフォン、タブレットから、改めてネットワークサービスとしてクラウドを前提としたゲーム端末を出したいとの端末の専用化との話となります。

むろん、ゲームの場合は、専用端末である家庭用のゲーム筐体もネットワーク接続されることが当たり前になってきており、ソフトウェアのダウンロード販売にしても従来型ハードに対しても珍しくなくなってきているため、現象として何から何まで新しいというのではありません。山のてっぺんに来るのにどちらのルートから辿ってきたかとの違いくらいしかなくなってきてるところはあります。

いずれにしても、起きているのは、ネットワークサービスを前提とし、対応したハードウェアが汎用品(スマートフォン)か専用ゲーム端末(各社それぞれ)のいずれにせよある状況で全体がゲームサービスとして提供されるとの状況です。端末側にどの程度のスタンドアロンで動くことを許すかは、ハードや技術制約よりもむしろゲームデザインをどうするかとのコンテンツ側の設計から決めて良いとの状況に変わってきています。

IoTというのはシンプルに理解すると、(サービス)ネットワークを常設的に利用できることを前提として
・ハードウェア側の用途に何か新しいものを見出したい
・ハードに新しく起きるだろう変化を見越してサービス側にも新しいメニューをそろえたい、あるいは新しい分野のオンラインサービスを立ち上げるまでしたい
・というか両者を切り分けて考えるのはめんどくさいのでハードからサービスまでひとつのまとまった体験として取りまとめて届けたい
ということを考えて事を進めている動きであると理解されます。

GoogleのNest買収は、冒頭で取り上げた「Amazon AppStream」のようなものを(ネットワーク)センサー分野において実現したいとの試みであると読むのが素直なところでしょう。更に手を突っ込んで取得したデータを利用しての各種の最適化サービスを付帯し、更には最適化サービスのみをチャージ対象とする現在検索サービスで行っているようなメニュー形態にまで手を突っ込む可能性もありますが、基盤側については、統合的なものを出してくるとみて間違いないと思われます。

ここ数年、クラウドの利用というのは当たり前の選択肢になってきたところから、状況はもう一歩先に進もうとしているのがこれらのケースからも見て取れますが、逆にどう位置づけて理解すればいいのかが掴みにくくなってきているのがネットワークの分野です。

上の方で「両者を切り分けて考えるのはめんどくさいのでハードからサービスまでひとつのまとまった体験として取りまとめて届けたい」と書いたところに、ネットワークは複雑な形で絡まり合って混ざっています。混ざっているところで、全体がまとまったワンパッケージになろうとしているところで、「いやいやネットワークだけは別ものですよ」との話のままで行くのだろうか?と問われると、どうも座りが悪くなります。

ネットワークはどこに行くの?との話は、まだ状況が固まってないこともあり、周囲の関係者とああでもない、こうでもないと議論を重ねているところではっきりとした結論はある訳ではないですが、上半分くらいについては、サービス化の流れからは逃れられそうにないのでは、との意見が周囲でも増えてきています。

IoTが来た、クラウドが伸びてきたという個々の動きではなく、全体としてサービス化とパッケージ化が進んでいる状況として最近の大きな動きは捉えられます。

初回はひとまず、こんなところとして、簡単に触れるだけとなったネットワークのサービス化については(他予定が入らなければ)次回にでもざっと取り上げてみたいと思います。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。

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