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5G通信、3.5GHz、次世代LTEへの取り組みなど、将来をにらんだ技術が並ぶ──ワイヤレスジャパン2014

2014.06.04

Updated by Naohisa Iwamoto on 6月 4, 2014, 11:01 am JST

5月28日〜30日に開催された「ワイヤレスジャパン2014」「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2014」では、今後のワイヤレス通信を支える技術が数多く出展、披露された。2020年の実用化を目指す5G(第5世代)の移動体通信、3.5GHz帯の利用への取り組みなどだ。

NTTドコモのブースでは、5Gの技術コンセプトを示していた。5Gでは、既存の低い周波数のマクロセルで接続性やモビリティーを確保しながら、3GHz帯や10GHz帯といった高い周波数帯のスモールセルによる高速伝送を組み合わせて、接続性と高速性の双方を満足させるネットワークを作る。今回は、制御情報とデータ信号を異なる周波数帯で送信する「ファントムセル」と、多数の小型アンテナを用いた「Massive MIMO」を組み合わせたシミュレーションを展示した。Massive MIMOの基地局からビームフォーミングにより、バス取り付けた移動式基地局「ムービングセル」とやり取りし、さらにムービングセルがバス内の乗客に通信サービスを提供するというもの。バス内の乗客がマクロセルの電波を利用するよりも、1.5倍〜2倍のスループットが得られるシミュレーションの結果を見せていた。

▼NTTドコモの5Gの世界のシミュレーション。右上のグラフでスループットが向上していることがわかる
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またNTTのブースでは、マルチユーザーMIMOの高効率化を目指した研究の成果を示した。マルチユーザーMIMOは、下りの無線環境情報を端末から基地局にフィードバックする情報のオーバーヘッドが大きいため、空間多重効果に限界があった。展示では、下りの無線環境情報を確認応答のための上り信号から推定する技術を採用し、オーバーヘッドを大幅に削減。試作装置によるデモでは、実効スループットが既存技術の350Mbps前後から、新技術の採用で480Mbps前後まで向上することを示していた。

▼左画面は、下りの無線環境情報をフィードバックしている従来技術。右画面は新技術で緑と青で示されていたフィードバックがほとんどなくなっていることがわかる
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KDDI研究所のブースでも、次世代の通信サービスに向けた展示が行われた。1つは、次世代LTE基地局に向けたトラフィック圧縮の技術の展示。これは、無線制御装置(BBU)を収容局に集約し、複数のLTEアンテナなどの屋外設備を集中制御する「C-RAN」(Centralized RAN)で適用する技術だ。屋外設備とBBUの間のデジタル信号に適用できるトラフィック圧縮技術を開発し、エントランス回線の帯域を半減できる。開発した技術は、欧州電気通信標準化機構(ETSI)で6月に標準化が完了する予定とのこと。

▼信号の特徴を捉えて非線形量子化を行う技術で、CNRの劣化を0.3dB以内に抑えながら、データトラフィックを半減させられることを示した
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今後、周波数の割り当てが進む3.5GHz帯への取り組みもKDDI研究所のブースに展示があった。3.5MHz帯は、これまで通信事業者が利用してきた2GHz帯などよりも周波数が高く、直進性が高いことは知られている。一方で、実際に街中などで電波がどのような振る舞いをするかのデータはまだ少ない。KDDI研究所では東京都千代田区で3.5GHz帯の送信局と移動式の受信局を使って、伝搬環境を精緻に計測しているという。KDDI研究所の説明員は「想像していた以上に電波の"切れ"がいい印象。データを蓄積して、実際に3.5GHz帯でサービスを提供する際に役立てたい」と言う。

▼3.5GHz帯の伝搬環境を計測するために96のマルチアンテナを装着した移動型の受信局
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NECのブースでは、今後国内でも利用が始まる80GHz帯を使った高速無線伝送装置「iPASOLINK EX」の展示があった。80GHzで3Gbpsの超高速伝送が可能。すでに海外ではロシアの大手キャリアやポーランドの放送網事業者など17カ国、4000台以上の導入実績があるシステムで、国内での普及に向けたアピールを行った。実際、海外ではバックホールの回線としてiPASOLINKによる高速無線伝送を利用することが多く、国内でも同様の利用法の広がりをにらんだ展開をしていく。

▼3Gbpsの超高速伝送ができる「iPASOLINK EX」
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また、NECのブースでは、ビル内の無線アクセスネットワークシステムに既存のLAN配線を利用するソリューションを展示していた。ビル内に3G/LTEのエリアを構築する際に、LANケーブルを活用できるためにシステム構築が容易で、低コスト、低消費電力につながる。海外ではすでに提供済みのシステムで、国内でも通信事業者に向けて提供を開始するという。

▼左のスモールセルと右のサービスノードの間をLANケーブルで接続し、3G/LTEのエリアを構築できる
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※修正履歴(6/6 12:45)
公開当初、NTTの「下りの無線環境情報を確認応答のための上り信号から推定する技術」のデモンストレーション写真の左右が逆になっておりました。関係者の皆様にはご迷惑をおかけいたしましたことをお詫びいたします。(本文中の写真は訂正済み)

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。