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VAIO株式会社は日本のベンチャーの台風の目になるかもしれない

2014.07.01

Updated by Ryo Shimizu on July 1, 2014, 09:33 am JST

 7月1日、VAIO株式会社が発足しました。
 もちろんこれは、かの偉大なる大SONYからのスピンオフ部隊で、その数、わずか240名。

 ソニーのパソコン事業部はもともと1100人体制だったということですから、もの凄いシェイプアップが行われたことになります。

 新会社のドメイン、その名もvaio.comでは、類を見ない勇ましい文句が踊っています。

スクリーンショット 2014-07-01 9.35.40.png

 これを見て、あなたは何を感じたでしょうか。


 筆者ははっきりと、「ワクワクする」と思いました。

 構成員の75%を切り捨てるという大胆な決断、普通であればリストラは後ろ向きに捉えられがちです。
 しかし敢えて「大メーカー」の看板を外し、襟を正し、「小さなメーカーになった」と自覚した組織は、強い。

 なにしろもともと優秀な人たちしか採用されない会社です。
 その中からさらに生え抜きの25%の人材に絞り込み、彼らが自分たちの立ち位置をハッキリと「小さなメーカー」と位置づけたとき、世の中にこれほど凄いベンチャー企業が存在しうるでしょうか。

 本田宗一郎が本田技研を立ち上げた時のエピソードを思い出します。

 宗一郎は従業員を前にして、「我々には金がない。しかし、技術と経験がある」と、語ったそうです。三河地震で工場が倒壊した東海精機重工業株式会社をトヨタに売却し、なにもないところから再スタートを切った20人の社員と本田宗一郎の思いに、今のVAIO株式会社も重なるのかもしれません。

 コピーライターが書いたのか、それともVAIO株式会社の新社長の言葉なのかはわかりませんが、素晴らしい決意表明だと思います。

 ここからVAIOの快進撃が始まれば、スティーブ・ジョブズの「Think Different」キャンペーンに匹敵する伝説となるでしょう。

 なによりこのメッセージは、筆者を含めた社外のVAIOファンのみならず、新会社で働く全ての従業員とその家族にとって、大きな励ましの言葉にもなるからです。

 VAIO事業の最大の問題点は製品の質そのものよりも(そのものも海外のクレーム問題でかなり問題視されましたが)、利益率の低さです。

 利益率を押し下げていたのは、ソニーという大会社の屋台骨の一つであったという大きなプレッシャーです。
 そもそもPCは、部品を集め、組み立てて販売するというビジネスです。

 VAIOの場合、それに加えて独創的かつ魅力的な製品デザインがありました。
 しかし間接費が多く掛かり、利益率が圧迫されるなか、独創的なデザインに割ける予算も恐らく減って行ったのでしょう。ここ数年のVAIOは、往時に比べるとやや輝きに欠ける印象があったのも、もしかすると予算とのせめぎあいの結果だったのかもしれません。

 しかしここで一気に75%の人員削減をしたことにより、むしろVAIO株式会社はPCメーカーとして存在できる最小サイズに近くなったのかもしれません。少なくとも間接費は大幅に圧縮され、利益率を上げることが期待されているのだと思います。

 利益率が上がれば、VAIOは必ず再生できます。
 それだけの商品力とブランド力、なにより世界中にVAIOのファンがいるわけです。

 筆者がここ十年の間、Macばかり使うようになってしまったのも、思えばVAIOシリーズの魅力がどんどんなくなって行くように感じたのも原因の一端ではありました。

 なにより240名のベンチャー企業。
 しかもその全員がソニーの生え抜き社員となれば、これは凄い会社が産まれたということなのかもしれません。

 新組織、VAIO株式会社の第一弾製品がどのようなものになるのか、とても楽しみです。
 本日午後3時に正式オープンするそうなのでそれを待ちたいと思います。

 http://vaio.com

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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