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いかにして効果的に情報を伝えるか─フェイスブックの健康・医療関連ページの研究

2014.08.28

Updated by Kenji Nobukuni on August 28, 2014, 12:30 pm JST

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ハーバード大とスタンフォード大の研究者たちがフェイスブック上の医療情報、健康情報の実態調査を行った。さまざまな疾患の中で、「がん」「乳がん」に関するページへのユーザの関与度(エンゲージメント)が高いそうだ。

彼らはまず、人々がどういったことについてネットで情報を得ているか知るために、グーグルを選んだ。検索でよく探される医療・健康関係の用語トップ20を調べたのだ。「がん」「糖尿病」「胃」「ヘルペス(疱疹)」「腰痛」「HIV」「血圧」「乳がん」「甲状腺」「下痢」「関節炎」「脳卒中」などがリストアップされた。次にこれらの用語がソーシャルメディアでどのように扱われているかの調査を行った。とくに、ソーシャルを使って患者や家族がどのようにサポートし合っているのかが主な興味の対象だった。

容易に想像がつくことだが、上記の用語でフェイスブック内を検索しても無関係なページがたくさんあったし、ソーシャル・サポートはほとんど見つからず、マーケティングやプロモーションのページが多かった。もちろん、病気という話題の特性上、患者が実名をさらすフェイスブックで疾患ページに積極的に関与するとは限らない。周囲に内緒にしている病気は多いはずだ。

次に彼らは20の用語についてそれぞれフェイスブックでの検索結果の上位50のページをピックアップした。「貧血」「インフルエンザ症状」は50ページに達しなかったし、英語以外を対象外にしたため、全部で522ページが分析対象となった。関連ページ数が50以上あったのは「乳がん」と「糖尿病」で、「がん」「関節炎」「甲状腺」が49で同率3位。「脳卒中」「HIV」は少なく、それぞれ10だった。

全体の32.2パーセント(全体522ページのうち、168ページ)はマーケティング・プロモーションのページで、情報提供や認知拡大のページが20.7パーセント、ウィキペディア型の情報ページが15.5パーセントと続く。研究者たちとしては、フェイスブックを通じて患者と支援団体、患者相互が情報交換により支え合っていてくれることを期待していたようだが、一般的なソーシャル・サポートに分類できるものは9.4%しかなかった。

最後に彼らは522のページの「いいね(Like)」の数を数えた。例えば「乳がん予防(Breast Cancer Prevention)」というページには開設から4年弱で630万余りの「いいね」が集まっており、調査対象の522ページの累計は2200万にも達したそうだが、86.9パーセントは「がん」「乳がん」のページが獲得していた。他の18の用語は1〜2パーセント程度で極端な偏りを見せている。コメントの文章の分析などは行っておらず、「いいね」だけでエンゲージメントを測るのは少々乱暴だが、他の病気に比べて「がん」「乳がん」についてフェイスブックで情報を得ようとして、見つけたページが気に入る(=Like)人が多いことは間違いなさそうだ。

研究者らによれば、誰もがアクセスできる医療関係のコンテンツと、利用者の関わりを総合的に研究した事例は過去に存在しないそうだ。フェイスブックなどを通じて、しっかりとした医療関連情報を伝えたいと考える公的な機関は、利用者が健康状態について他者に知られたくないと感じていること、広告宣伝などに紛れて情報が見つけにくい状況にあることなどを理解した上で、情報提供の方法をデザインする必要があるとこの論文は結論づけている。

SNSなどインタラクティブなメディアが健康や医療などの情報の媒体として重要な位置を占めていくのはほぼ確実であり、情報発信側も受信側もインターネットやSNSといった媒体の特質を理解した上で活用していく必要があるということだろう。

【参照情報】
Representation of Health Conditions on Facebook: Content Analysis and Evaluation of User Engagement(JMIRの研究結果ページ)
Users engaged more with cancer-focused Facebook pages than other health pages
How Are Disease-Related Facebook Pages Used?

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信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。 訳書:「Asterisk:テレフォニーの未来