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ブームからビジネス、そしてコミュニティへ 〜Maker Faire Tokyo 2014 レポート

2015.01.07

Updated by Yuko Nonoshita on January 7, 2015, 17:30 pm UTC

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アメリカで2005年にスタートし、今や世界各地で開催されている地上最大のDIY展示発表会Maker Faire。日本では2008年春から開催され、6回目を迎える間に参加者は10倍にも増え続け、Maker Faire Tokyoとして再スタートしてから3回目を迎えた今回も、11月23,24日の会期中、会場の東京ビッグサイトの西3ホールは約1万3000人の来場者であふれんばかりになっていた。

▼来場者の増加に合わせて拡大したはずの東京ビッグサイト会場も終日来場者で埋め尽くされていた。
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今回、特に目立っていたのは、オートデスク、インテル、NVIDIAをはじめとしたメーカーの出展で、他にも、Maker系イベントでは常連のローランド以外に、東芝やGoogle、マクニカ、東京コスモス、ソニー、日本マイクロソフトらがスポンサーとして参加。中でもインテルの小型IoT開発プラットフォームのEdison(エジソン)のワークショップは、参加者へキットが無償で配布されるなどの力の入れようであった。もちろん本来のMakerたちによる出展も盛況で、様々な電子工作機器や電子楽器、3Dプリンターで作られたロボットやガジェット、ドローン、手作りのインテリア、アクセサリー、アート作品まで、幅広い展示内容となっていた。

▼Inter主催のワークショップでは参加者にEdison(エジソン)の特別キットが無償で提供された。
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▼今年のMaker Faire Tokyoはオートデスクをはじめ多くのメーカーが参加しているのが目立った。
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▼出展者数は350組にもおよび、ゾンビメイクや人力外骨格ロボットスーツの試乗会まで、内容も幅広くなっている。
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オープンスペースで行われたスペシャルプレゼンテーションでは、Maker Faireの創設者であり、そのきっかけとなった雑誌「Make:」を発行するMaker Media, Incのファウンダー兼会長であるDale Dougherty(デール・ダハティ)氏が急遽来日し、登壇。『Free to Make』と題したプレゼンでは、今や世界中に広がり、ホワイトハウスにも招待されるほど注目を集めるMakerムーブメントのこれからを語った。

▼Maker Faireの創設者Dale Dougherty(デール・ダハティ)氏は「Makerは単なるブームではなくビジネスへと進化し、コミュニティがこれからのムーブメントになる」と語った。
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Maker Faireは2014年だけでも世界で137回開催され、昨年の100回を大きく上回っているという。4月には中国の深センでも開催され、10月のローマには10万人が参加したとも。最もエポックメイキングな出来事としては、6月にホワイトハウス内で開催され、オバマ大統領も参加したことがある。Makerムーブメントがただの現象ではなく、確実な時代の流れになりつつあることを表している。

▼ホワイトハウスで開催された時はオバマ大統領も参加し、3Dプリンター作品の仕上がりを確かめた。
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Maker Faireがもたらした意味の一つが、消費者が一方的に作られたモノを買うのではなく、自分でも作れることを知った点にある。「クリエイティブとテクノロジーが癒合し、さらにコミュニティが新たな創造力を与えている」とDougherty氏は強調し、「オープンソースによってかゆいところが自分でかけるようになった」ともしている。さらに、作ることは自己表現や自己満足に終わらずビジネスへもつながり、今や展示品の20%が商品化され、11歳の少年が独学で3Dプリンターやスキャナーを使いこなしビジネスを始めた例もあるそうだ。2014年には89のプロジェクトがKickstarterで資金集めを行い、そのうち10%が継続中で、総計して約1万7000ドルが調達されたことから、今後はMaker同士をつなげるビジネスも始まる予定だという。

▼Maker Faireが新規ビジネスを創造するきっかけになっていることは数字にも表われている。
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Makerのためのスペースも増え、道具の共有以外に教え合うコミュニティが拡がっている。子どもたちにとってはものづくりそのものが学びの場となり、チャレンジ精神やスキルを高めるきっかけにもなりつつあるようだ。こうして誰でもイノベーションに取り組める環境が整った中、本当のムーブメントとなっているのはコミュニティであるとDougherty氏は語る。

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続いて行われた『Maker × メーカー 2014』と題されたパネルディスカッションでは、大手のメーカーに在籍しながら、就業後や週末は別のコミュニティの中でMakerとして活動する人たちの現場の声が紹介された。

▼パネルディスカッションの参加者。左からDougherty氏、ローランドDG村松一治氏、ソニーのMESH Projectリーダーの萩原丈博氏、品モノラボ所属の田中章愛氏
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参加者の一人である田中章愛さんは、品川本社の大手メーカーに勤めながら品モノラボというコミュニティの中で、モノづくりユニット「VITRO」を立ち上げ、超小型Arduino互換機「8pino」を開発。会場では発売されるやいなや品切れ状態になる人気商品だが、「本業との二足のわらじだからこそ自由な発想や思い切りのある開発ができる」としている。

▼「本業とは別にものづくりをする環境を持つことが本業にも役立つ」と語る田中章愛さん。所属する品モノラボの活動も活気づいているという。
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ソニーの萩原丈博氏が開発リーダーを務めるMESH Projectは、今年から導入された新規事業創出プログラム「SAP」から生まれたプロジェクト。製品化を前提に開発を行っているが、従来とは異なるMakerスタイルで、発売前にプロトタイプを実際に公開するスタイルが刺激になっているという。期限や発売目標ありきではなく、ユーザーの声に応えるためのものづくりを行う姿勢は、現在の日本の製造業が最も失っているものかもしれない。

▼ドミノに似た様々なセンサー機能を持つブロックをGUIプログラムで連結させてIoTを体感できるたMESHは会場でも注目を集めていた。
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過去に参加したMakerイベントは、ある意味ギークでモノづくりが大好きな趣味人だけの集まりに見えるところがあったが、ここ数年は作り手自身が楽しむというより、みんなが使える、一緒に作って楽しんでもらうという考え方が拡がっているように感じる。斬新さという点では多少もの足りなさはあるかもしれないが、集まるアイデアは確実に増えていて、そこから次の大きなムーブメントが生まれるのかもしれない。

【参照情報】
Maker Faire Tokyo 2014
Maker Faire
8pino
MESH Project

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。