ec

複雑系イベントへと独自進化するSXSW

South by Southwest 2015

2015.04.06

Updated by Yuko Nonoshita on 4月 6, 2015, 12:15 pm JST

Music(ミュージック)、Film(フィルム)、Interactive(インタラクティブ)の3ジャンルがコンバージェンスし、新規ビジネス開拓やスタートアップを支援するユニークなカンファレンス&フェスティバル「SXSW 2015」(サウスバイサウスウエスト/South by Southwest)が3月13日から10日間、米国テキサス州のオースティンで開催された。

▼SXSWの目玉は膨大な数のセッションとワークショップで、テーマも多方面に及んでいる。
SXSW 2015

1987年に音楽イベントからスタートしたSXSWは、94年に映画とITテクノロジー分野が加わり、その後も様々なプログラムを取り入れながら、Trade Showと呼ばれる展示会だけで6万人以上が参加するイベントとなっている。目玉は膨大な数のセッションやワークショップで、Interactive部門だけで800以上、基調講演や関連イベントも加えるとその数はさらに膨大となる。それらは、メイン会場のオースティン・コンベンションセンターをはじめ、周辺にある複数のホテルの会議室やホールをほぼ全て使い、同時多発的に行なわれるため、SXSWの全貌を知るのはとても難しく、それが今まで日本であまり話題にされてこなかった要因にもなっている。

▼基調講演やメインカンファレンスには話題の人物が次々登場。今年はアル・ゴア元副大統領やTwitter創業者のビズ・ストーン氏、バイオ義足の開発者として知られるヒュー・ハー博士らが登壇した。
SXSW 2015

SXSW 2015

▼Trade Showと呼ばれる展示会は3ジャンル一緒に開催される。今年は世界各国が出展に力を入れるほか、大学からの出展も目に付いた。
SXSW 2015

SXSW 2015

SXSW 2015

SXSW 2015

取り上げられるテーマは幅広く、今年は、ウェアラブルやIoT、ロボット、人工知能、自動運転技術といった話題のテーマをはじめ、マーケティングやソーシャルメディア、メディアアート、インターネット技術に関する話題も扱われている。しかも、それぞれが明確にテーマ分けされているわけではなく、複数にまたがることも少なくない。

さらに今年はサブジャンルとも位置づけられそうなイベントも多数開催。これまで同時期に別イベントとして開催されていた「Gaming EXPO」は今年から公式プログラムとなり、教育がテーマの「SXSWedu」は会期前から数日間かけて行なわれている。健康や医療テクノロジーを扱う「SX Health and MedTech Expo」、メイカーズのためのオープンスペース「SX Create」、他にもスポーツやファッション、食、農業なども取り上げられ、社会問題を考える「SXgood」まで取り入れられるなど、より幅広くジャンルを拡げようとしているのがわかる。

いずれにしても、事前に下調べをしておかなければ目的のプログラムにはとても辿り着けず、気がつけば会場をただ歩き回るだけで終わってしまうことにもなりかねない(それでも十分楽しめるほど様々な催しがあるのだが)。そこでSXSWでは専用アプリ「SXSW.GO」を配布し、事前のプログラムチェックはもちろん、お気に入り登録したり、セッションのコメントを書き込んだり、参加者同士の交流にも使えるようにしている。他のイベントアプリに比べて使い勝手はかなり良いが、それでもSXSWの複雑なプログラムを把握するには十分とはいえず、今年は会場内に1000のビーコンアンテナを設置し、会場近くを通ると次のセッションがプッシュ通知されるといった工夫まで取り入れられていた。

▼イベントに欠かせない専用アプリ「SXSW.GO」の画面。
SXSW 2015

▼広大な会場で目指すセッションに辿り着くために会場には1000ものBeacon用アンテナが設置されていた。
SXSW 2015

SXSWがこうした来場者への対応にきめ細やかなのには理由がある。何度も繰り返すが、SXSWでは大量のセッションが同時多発的に行なわれ、参加者は内容が面白くないとわかると、すぐに退出して違うセッションへとへと移動するのが暗黙のルールになっている。興味のあるセッションが同時間に行なわれるのが普通なので、話題のセッションに参加するには、アプリ内のコメントやTwitter、Facebookなどのソーシャルメディアを駆使する必要がある。

そもそも、こうしたSXSWの参加者同士の情報交換のために生まれたのが、あのTwitterである。2006年の開催時にプレサービスとして来場者に使ってもらったところたちまち話題となり、翌年にはInteractive部門の優秀なビジネスを表彰するアワードで最優秀賞に選ばれている。同じようなサービスに、FoursqupareやInstagramがあり、そうした経緯から、SXSWはスタートアップの登竜門的位置づけとなっている。また、運営側も定期的にアワードの表彰ジャンルを見直すなどし、次のスター発掘に力を入れている。

SXSWは参加登録バッジがInteractive部門だけで825〜1295ドル(購入時期によって変動)もするため、個人参加は少なく、ビジネスとしての参加者が多いと思っていた。だが現地では全くといっていいほどスーツ姿は見られない。ビジネスの話はするが、どちらかといえばカジュアルだったり、法人というより個人の興味で進められるのが多いように感じた。

ビジネスチャンスだけを求めるのであれば、SXSWはもの足りない、あるいは中途半端なイベントだと感じるだろう。実のところ、セッションの多くは一般向けで専門性はそれほど高くなく、大きく目を引くような話題や新製品の発表も少なく、そもそも形のある製品を見ることが少ない。展示会場でも出展しているのは、サービスやコミュニティの運営といったソフト中心で、CESやMWC、IFAのようなイベントを想像しているとかなり違和感がある。

けれども、ソフトの説明をじっくり聞いたり、どういう使い方ができるのかあれこれ話をしていると、刺激的な話題やアイデアでいっぱいなのがだんだんとわかってくる。そういう意味では、ブースを見ただけでは何を展示しているかさっぱりわからないものも少なくなく、ビジネス効率が悪いイベントだとも言える。しかし今までにない何かを求めるのであれば、これほどふさわしいイベントはないだろう。

今回、初めてSXSWを取材して感じたのは、イノベーションをテーマにしながら、社会をより良くしたり、変革させたりするために、技術やアイデアを改革しようという意識が強く働いているというイベントであるというところだ。そのあたりはTEDとも似ているが、使う側の人たちも多く集まっているところが、創造する側の人たちだけが集まるTEDとは異なる。つまり、ユーザーであると同時に次の創造者ともなる、好奇心あふれる人たちが交じり合って何かを生み出そうとする場になっているのだ。

今年、SXSWで取り上げられていたテーマは、個人的には興味があるものばかりで、とても刺激的であった。来年も同じ刺激を受けられるかといえば、IoTや人工知能のような話題性のある新鮮なテーマが出てくるとは限らないので、正直なところあまり大きな期待はしていないが、SXSWの方向性そのものはとても気になる存在であるのは間違いない。今回の取材は手探りの連続だったので、次はもう少し落ち着いてじっくりと、このイベントがどう進化するのかを見てみたいと考えている。

▼日本からもDMMをはじめ多数出展があった。筋電義手のexiiiなどは会場内でもかなり話題になっていた。
SXSW 2015

SXSW 2015

▼ミュージシャンからスタートアップを目指す人を支援するサービスも複数見られた。
SXSW 2015

▼農業やバイオをテーマにした出展も目に付いた。
SXSW 2015

▼お隣のヒューストンに宇宙センターがあるNASAも遠征出展。研究開発などを中心に紹介していた。
SXSW 2015

▼ホテルの一室を使った展示もいくつかあった。写真はファッションウェアラブルをテーマにした展示会。
SXSW 2015

▼展示会場内はIBMがIoTとクラウド製品を出展する以外、大企業の展示はほとんどなかったが、会場の外ではサムスンやGoogle、フィッリップスらが街に溶け込むような演出でイベントを盛り上げ、話題を集めていた。
SXSW 2015

SXSW 2015

SXSW 2015

SXSW 2015

▼Intelは今年から公式イベントになったGaming EXPOの会場に大きなブースを出展していた。
SXSW 2015

▼社会や福祉をテーマにしたセッションも多く、コミュニティ向けのパーティも開催されていた。
SXSW 2015

▼SXSWではスタートアップの育成にも力が入れられており、アクセラレーター向けのコンテストなども開催されていた。
SXSW 2015

【参照情報】
SXSW 2015

メールマガジン購読WirelessWire News メールマガジン

おすすめ記事を配信する『WirelessWire Weekly』と、閲覧履歴を元にあなたに合った記事をお送りする『Your Wire』をお送りします(共に週1回)
配信内容を詳しく見る

野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

RELATED NEWS