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フィリピンでICTを活用した電動三輪タクシー(トライシクル)の普及に向けた実証

GMS & Fujitsu are about to bring electric tricycle taxis in Philippines

2015.04.10

Updated by Hitoshi Sato on April 10, 2015, 17:48 pm JST

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グローバル モビリティ サービス(GMS)と富士通は2015年4月9日、フィリピンでのICTを活用した電動三輪タクシーの普及に向けて、サービス拡充のための実証を2015年秋から開始することを発表した。

GMSは遠隔車両制御システム、課金認証システム、盗難抑止システムなど独自のセンシング技術とICT技術を活用した電動三輪タクシーにおいて、2014年9月から2015年1月にかけてフィリピン メトロ・マニラで実証実験を行い、2015年春から実サービスの運用を予定している。

今回、GMSのシステムと、富士通の位置情報活用クラウドサービス「FUJITSU Intelligent Society Solution SPATIOWL(SPATIOWL)を連携することで、バッテリーの残量と消耗具合から走行可能距離を導き出す機能や給電スポットまで誘導するサービス、電力消費量の少ないルートを案内するサービスなどを可能とする実証実験を、2015年秋よりフィリピン メトロ・マニラで行う予定。その後、GMSが20105年春から運用しているサービスにこれらの機能を拡充させ、2016年度中にフィリピンで展開していく。

これにより、GMSと富士通は、フィリピンにおける電動三輪タクシーの普及を支援し、環境改善や利便性向上に貢献していく。また、両社は今後、電動車両の市場の拡大が見込まれる東南アジアおよび中国でのサービス展開も検討している。

▼フィリピンでの電動三輪タクシー利用イメージ(富士通)
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フィリピンでは、ガソリンを燃料とする三輪タクシー(トライシクル)が生活者の移動手段として定着しており、同国内に350万台以上存在する。そのため、大気汚染問題が深刻化し、フィリピン政府は排気ガスを出さない10万台の電動三輪タクシーの導入を推進している。また、同様に他の東南アジア諸国でも電動車両の普及に向けた機運が高まっている。

しかし、フィリピンの三輪タクシードライバーは低所得者層に位置づけられ、電動三輪タクシーを購入したくても与信審査が通らないという現状が存在する。GMSは、そのような問題を解決すべく、フィリピン内において安心して車両を貸し出せる、与信審査が不要な電動車両提供サービスの展開を目指している。GMSでは、車両に搭載するだけで遠隔からの走行制御を可能にするMobility-Cloud Connecting Systemを開発し、車両の現在位置の把握や、利用料金の支払いに滞りが生じた際に走行を遠隔で停止させることなどが可能なモビリティサービスの実証実験を、2014年9月から2015年1月にフィリピン首都圏であるメトロ・マニラにて行った。その後、フィリピンの有力なインフラ企業や三輪タクシー組合、フィリピン最大都市であるケソン市と、本サービスを搭載した電動車両の大量導入に関する合意締結を結び、今春からビジネスを展開していく予定。

今回、GMSのモビリティサービスと、富士通の位置情報活用クラウドサービス「SPATIOWL」を連携させることで、バッテリーの残量や使用年数から導き出した残りの走行可能距離や最適な給電スポットの情報をドライバーに知らせるサービスなどを提供し、電池切れのリスクを回避することができる。

また、SPATIOWLに蓄積される電動三輪タクシーの走行データ、バッテリー状態情報、道路整備状況や気候などの情報を用いて、道ごとの電力消費率を表す電費マップを作成し、電力消費の少ないルートを案内することも可能になる。さらに、バッテリーの状態変化や、モーターの回転数といった車両状態の情報を蓄積することで、経年劣化を抑える使い方や、車両故障を未然に予知する分析なども行えるようになる。

これにより、GMSと富士通は、電動三輪タクシーの利便性向上に加え、電動三輪タクシー自体の品質向上にも寄与していく。電動三輪タクシーの普及促進につながるサービスを提供することで、フィリピンの大気汚染の改善や、安価な電気を利用することによるタクシー組合の利益向上を実現していく。

本当に必要なのはドライバーの生活向上

フィリピンの路上にはあちこちで三輪タクシー(トライシクル)を見かける。もう何十年も前から庶民の生活の足になっており、裏路地ではよく見かける。ちょっとそこまでの移動という時には便利である。

今回の実証の目玉は、電動三輪タクシーを購入したくても与信審査が通らない低所得者ドライバーでも安心して車両を貸し出せることであろう。フィリピンで三輪タクシー(トライシクル)のドライバーをしている人の多くは地方からの出稼ぎ労働者である。三輪タクシー(トライシクル)だから、決して遠くまでの移動はないから、町の住所や地形さえ覚えておけば、体力のある男性なら誰でも従事できる仕事である。給料も決して高くないうえに、決して安全でないためリスクのある仕事であるから、生涯にわたって続けられる職業ではない。ドライバーも他に良い仕事があれば、転職したいと考えている。

電動三輪タクシーの導入と普及によって彼らの生活は少しでも向上するのだろうか。

▼GMSプラットフォームシステムとSPATIOWL連携イメージ(富士通)
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▼フィリピンの路上にはあちこちで三輪タクシー(トライシクル)を見かける。庶民の生活の足になっており便利だが、道が悪いところで乗ると非常に疲れる。また雨の時は乗らない方が良い。疲れたドライバーが裏路地に止めて、休憩しているのはよくある風景。
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▼三輪タクシー(トライシクル)は人の移送だけでなく荷物の運搬にも適している。
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【参照情報】
Global Mobility Serviceと富士通、フィリピンでの電動三輪タクシー普及に向けて実証開始

 

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。