クアラルンプール国際空港・klia2には広々としたCelcom Axiataの販売店が設置されている。

マレーシアの携帯電話事情(1) – 4キャリアがLTEサービスを提供

Malaysian Mobile Industry Vol. 1 - 4 operators providing LTE

2015.04.13

Updated by Kazuteru Tamura on 4月 13, 2015, 20:15 pm JST

マレーシアは日本との間で直行便が運航されており、観光やビジネスなどで訪れる日本人は少なくない。また、格安航空会社(LCC)も直行便を運航しており、乗り継ぎでマレーシアに寄るケースも少なくないだろう。筆者自身、乗り継ぎでマレーシアに寄ることになったのだが、せっかくなのでマレーシアに滞在する時間を確保して現地の携帯電話事情を視察した。そこで、今回はマレーシアの携帯電話事情を紹介する。

マレーシアでは4社が携帯電話サービスを提供

マレーシアではCelcom Axiata、Maxis、DiGi Telecommunications、U Mobileの4社が携帯電話サービスを提供している。マレーシアはマレー半島南部とボルネオ島(カリマンタン島)北部を領土とするが、U Mobileを除いた3社はマレーシア全土で事業を手掛けている。U Mobileは提供地域が限定されるものの、国内ローミングによってマレーシア全土で携帯電話サービスを利用できる。

世界各地では2015年に入ってからも複数の移動体通信事業者がLTEサービスを開始しており、LTEサービスを提供する移動体通信事業者が増加しているが、マレーシアではすでに4社ともLTEサービスを展開している。携帯電話サービスを提供するすべての移動体通信事業者がLTEサービスを導入している国は東南アジアではシンガポール、フィリピン、そしてマレーシアの3ヶ国のみである。マレーシアでは複数のWiMAX事業者などがLTEサービスの導入計画を表明しており、マレーシアにおいてもLTEサービスを展開する移動体通信事業者は増加する見込みである。

AxiataグループのCelcom Axiata

Celcom AxiataはマレーシアのAxiataグループの企業で、出資比率はAxiataグループが100%となっている。携帯電話サービスはCelcomブランドで展開している。Axiataグループは東南アジアや南アジアにおける複数の国で移動体通信事業を手掛けており、マレーシア以外ではシンガポールのM1、インドネシアのXL Axiata、カンボジアのSmart Axiata、バングラデシュのRobi Axiata、スリランカのDialog Axiata、インドのIdea Cellularに出資している。2015年3月末時点におけるAxiataグループによる出資比率はM1が28.6%、XL Axiataが66.5%、Smart Axiataが87.5%、Robi Axiata 91.59%、Dialog Axiataが85%、Idea Cellularが19.9%となっている。

移動体通信サービスはFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式で提供しており、周波数はFDD-LTE方式が2.6GHz帯(Band 7)と1.8GHz帯(Band 3)、W-CDMA方式が2.1GHz帯(Band I)、GSM方式が1.8GHz帯と900MHz帯である。LTEサービスは2.6GHz帯をメインとしている。
Celcom Axiataはサブブランドを保有しており、プリペイドブランドのXPAXを展開している。ただ、Celcom AxiataはXPAX以外にもプリペイドプランを用意しており、Celcom Axiataのプリペイドサービスを利用する際にはXPAXにこだわる必要はない。

スマートフォンなどの端末類の販売も手掛けており、ラインナップには米国のApple、カナダのBlackBerry、韓国のSamsung Electronics、日本のSony Mobile Communicationsなどのスマートフォンを揃える。中国のメーカーおよびブランドは広東欧珀移動通信(Guangdong OPPO Mobile Telecommunications)と北京小米科技(Beijing Xiaomi Technology)を取り扱うが、ラインナップは決して豊富とは言えない。

その他、音楽やゲームおよび壁紙などのコンテンツ類をダウンロードできるTHE CUBE、SMSを活用したSNSであるKOLONYの運営も手掛けており、移動体通信事業以外の事業にも積極的である。

▼クアラルンプール国際空港・klia2には広々としたCelcom Axiataの販売店が設置されている。
クアラルンプール国際空港・klia2には広々としたCelcom Axiataの販売店が設置されている。

▼クアラルンプール市内のCelcom Axiataの販売店。アクセサリ類も販売している。
クアラルンプール市内のCelcom Axiataの販売店。アクセサリ類も販売している。

マレーシアで最初にLTEを開始したMaxis

MaxisはマレーシアのBinariang GSMやサウジアラビアのSaudi Telecom Company(STC)が出資している企業である。また、Maxisはインドの移動体通信事業者であるAircelを傘下としており、インドのSindya Securities & Investmentsと合弁でAircelの事業を手掛ける。なお、Aircelへの出資比率はMaxisが74%、Sindya Securities & Investmentsが26%となっている。

移動体通信サービスはFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式で提供しており、周波数はFDD-LTE方式が2.6GHz帯と1.8GHz帯、W-CDMA方式が2.1GHz帯と900MHz帯(Band VIII)、GSM方式が1.8GHz帯と900MHz帯である。LTEサービスはマレーシアで最初に開始しており、2013年1月1日にLTEサービスを開始することを発表した。2.6GHz帯をメインとしてLTEネットワークを構築している。なお、FDD-LTE方式の2.6GHz帯の一部と、一部地域を除いたW-CDMA方式の2.1GHz帯はU Mobileと周波数を共有している。

サブブランドとしてはプリペイドブランドのHOTLINKを保有している。マレーシアではプリペイドユーザが多いため、Celcom Axiataと同様にプリペイドブランドの存在感も大きい。日本人がマレーシアに渡航してMaxisを利用する場合は、ほとんどがプリペイドブランドのHOTLINKを選ぶことになる。

スマートフォンなどの端末類もしており、ラインナップにはApple、Samsung Electronics、Sony Mobile Communications、中国の聯想 (Lenovo)、北京小米科技(Beijing Xiaomi Technology)などを揃える。一部のメーカーやブランドを除いて基本的にはCelcom Axiataのラインナップと大きな差はない。

▼ジョホールバル市内のMaxisの販売店。スマートフォンを展示している。
ジョホールバル市内のMaxisの販売店。スマートフォンを展示している。

▼クアラルンプール市内のMaxisの販売店。広々としており、アクセサリの品揃えが豊富である。
クアラルンプール市内のMaxisの販売店。広々としており、アクセサリの品揃えが豊富である。

プリペイドでLTEを使えないDiGi

DiGi TelecommunicationsはノルウェーのTelenorなどが出資するTelenorグループの企業である。Telenorは欧州、東南アジア、南アジアの移動体通信事業者に出資しており、世界各地で事業を手掛けている。東南アジアおよび南アジアではDiGi Telecommunicationsのほかに、dtacブランドで展開するタイのTotal Access Communication、ミャンマーのTelenor Myanmar、パキスタンのTelenor Pakistan、バングラデシュのGrameenphone、Uniorブランドで展開するインドのTelewings Communications Servicesに出資している。
移動体通信サービスはFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式で提供しており、周波数はFDD-LTE方式が2.6GHz帯、W-CDMA方式が2.1GHz帯、GSM方式が1.8GHz帯である。LTEサービスは2013年7月より提供を開始している。2015年3月末の時点ではCelcom Axiata、Maxis、U Mobileの3社はプリペイドプランでLTEサービスを利用できるが、DiGi TelecommunicationsのLTEサービスはポストペイドプランのみとなる。

スマートフォンなどの端末類も販売しており、Apple、Samsung Electronics、台湾のASUSTeK Computer(華碩電脳)のほかに、聯想、北京小米科技、華為技術(Huawei Technologies)、珠海市魅族科技(Zhuhai MEIZU Technology)といった中国のメーカーおよびブランドも多く取り扱う。珠海市魅族科技のスマートフォンを正規に取り扱う数少ない移動体通信事業者でもある。

▼クアラルンプール市内のDiGi Telecommunicationsの販売店。他社と同じようにアクセサリ類も取り扱う。
クアラルンプール市内のDiGi Telecommunicationsの販売店。他社と同じようにアクセサリ類も取り扱う。

▼DiGi Telecommunicationsの販売店にはTelenorグループであることを示す掲示物も見られた。
DiGi Telecommunicationsの販売店にはTelenorグループであることを示す掲示物も見られた。

国内ローミングでエリアを補うU Mobile

U Mobileはマレーシアで携帯電話サービスを提供する移動体通信事業者としては最後発で、マレーシアのU Television傘下となっている。過去にはU Mobileに対して日本のNTTドコモや、後にKTと合併した韓国のKT Freetelが共同出資したが、すでに2社とも出資を解消している。

移動体通信サービスはFDD-LTE/W-CDMA方式で提供しており、周波数はFDD-LTE方式が2.6GHz帯、W-CDMA方式が2.1GHz帯となる。LTEサービスは2013年12月に開始しており、携帯電話サービスを提供する移動体通信事業者としてはLTEサービスの開始も最後となった。先にLTEサービスを開始した3社の場合、LTEサービスの開始当初はポストペイドユーザのみにLTEサービスを提供していたが、U MobileはLTEサービスの開始時からプリペイドユーザとポストペイドユーザの両方にLTEサービスを提供している。U MobileによるLTEサービスの開始とほぼ同じタイミングで一部の移動体通信事業者がプリペイドプランにLTEサービスを解放したため、U MobileはプリペイドプランでLTEサービスを利用できる最初の移動体通信事業者の一つとアピールしている。なお、FDD-LTE方式の2.6GHz帯と一部地域を除いたW-CDMA方式の2.1GHz帯はMaxisと周波数を共有している。最後発のU MobileはMaxisと国内ローミングで提携しており、U Mobileのエリア外ではMaxisのGSM方式を利用した国内ローミングが自動的に適用される。

スマートフォンなどの端末類はApple、Samsung Electronics、Sony Mobile Communications、華為技術、広東欧珀移動通信などを取り扱っているが、広東欧珀移動通信とは戦略的提携を締結しているため、広東欧珀移動通信のスマートフォンを積極的に販売している。U Mobileの販売店では店内に広東欧珀移動通信の専用ブースを設けていることが多い。

▼ジョホールバル市内のU Mobileの販売店。U MobileのLTEサービスはエリアが非常に狭いが、この販売店はLTEサービスのエリア内となっている。
ジョホールバル市内のU Mobileの販売店。U MobileのLTEサービスはエリアが非常に狭いが、この販売店はLTEサービスのエリア内となっている。

▼ジョホールバル市内のU Mobileの販売店には広東欧珀移動通信のブースが設けられている。U Mobileのコーポレートカラーである橙色を基調とした店内に広東欧珀移動通信の緑色はよく目立つ。
ジョホールバル市内のU Mobileの販売店には広東欧珀移動通信のブースが設けられている。U Mobileのコーポレートカラーである橙色を基調とした店内に広東欧珀移動通信の緑色はよく目立つ。

▼クアラルンプール市内のU Mobileの販売店にも広東欧珀移動通信のブースが設置されている。販売店はガラス張りでお洒落に仕上げられている。
クアラルンプール市内のU Mobileの販売店にも広東欧珀移動通信のブースが設置されている。販売店はガラス張りでお洒落に仕上げられている。

Telekom MalaysiaがLTEを導入

マレーシアでは携帯電話サービスを提供する移動体通信事業者4社以外に、Telekom Malaysiaがデータ通信専用でLTEサービスを提供している。携帯電話サービスを提供していない移動体通信事業者を含めると、マレーシアでは5社がLTEサービスを導入していることになる。ブランド名をTMgoとして2014年8月にLTEサービスを開始した。周波数は850MHz帯(Band 5)を使用する。LTEサービスの開始当初はエリアがムラカ州とケダ州の一部に限られていたが、850MHz帯とカバレッジに有利な周波数を使っているせいか、ボルネオ島も含めて一気にエリアを拡大している。対応端末としてはUSBモデム型データ通信端末とモバイル無線LANルータを投入している。

▼クアラルンプール市内のTMpoint。Telekom Malaysiaは販売店をTMpointとしている。
クアラルンプール市内のTMpoint。Telekom Malaysiaは販売店をTMpointとしている。

▼プトラジャヤ市内でTelekom MalaysiaのLTEネットワークを検出した。502-11がTelekom Malaysiaのネットワークである。
プトラジャヤ市内でTelekom MalaysiaのLTEネットワークを検出した。502-11がTelekom Malaysiaのネットワークである。

WiMAX事業者もLTEを計画

マレーシアには複数のWiMAX事業者が存在しており、複数の事業者が将来的にはLTEサービスを提供する計画である。主要なWiMAX事業者としてはYesブランドのYTL Communications、P1ブランドのPacket One Networks、REDtoneブランドのREDtone InternationalがWiMAXサービスを提供しており、LTEサービスを導入する方針を示している。日本のUQコミュニケーションズがTD-LTE互換のWiMAX2+規格の導入で事実上TD-LTEへの移行を決めたが、マレーシアのWiMAX事業者もおそらくそのようになると思われる。

携帯電話サービスを提供する移動体通信事業者は全社がLTEサービスを導入済みであるが、今後はWiMAX事業者がLTEサービスの開始ラッシュとなる可能性があり、引き続き目が離せない市場である。

▼ジョホールバル市内のYTL Communicationsの販売店。過去にはWiMAX対応スマートフォンなども販売していたが、すでに在庫が尽きていた。
ジョホールバル市内のYTL Communicationsの販売店。過去にはWiMAX対応スマートフォンなども販売していたが、すでに在庫が尽きていた。

▼クアラルンプール市内のPacket One Networksの販売店。WiMAXサービスを4Gと呼ぶこともある。
クアラルンプール市内のPacket One Networksの販売店。WiMAXサービスを4Gと呼ぶこともある。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。

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