NTTドコモとKDDIをぶった斬るソフトバンクの挑発的CM

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2015.06.01

Updated by Hitoshi Sato on 6月 1, 2015, 09:30 am JST

2015年5月、ソフトバンクは自社のLTEの速度をアピールするための動画広告を公開した。刀剣商で居合術家の町井勲氏が、高速で飛ばされてくるみかん、エビフライを日本刀で真っ二つにぶった斬る内容である。

ドコモは2014年末に、同社が提供する「フルLTE」の速さをアピールするため、『3秒クッキング』という動画広告を作成した。エビを高速で飛ばし、衣をつけ、炎の中を通過させ、エビフライを作るという内容で、1,400万回以上再生され、世界的な話題にもなった(参考:NTTドコモ「3秒クッキング爆速エビフライ」:サクサク感は伝わったか)。

またNTTドコモはエビフライに続いて「PREMIUM 4G」(LTE-Advanced)をアピールするために「爆速餃子」の動画広告を公開し、こちらも500万以上再生されている(参考:NTTドコモ:3秒クッキング、今度は「爆速餃子」)。しかし、今回のソフトバンクの動画では餃子をぶった斬ってはいない。

【ソフトバンク:平成の侍「町井勲」居合斬りで一刀両断】KDDIを想定したと思われるみかん(オレンジ色だから)、NTTドコモを想定したと思われるエビフライをぶった斬っている。最後には、「さらに速く、切れ味するどい速さ。プラチナバンドLTE」というメッセージで締められている。

 

▼ぶった斬られる「エビフライ」だが、NTTドコモが作成した「爆速エビフライ」の動画広告を知らない人にとっては何のことだかわからない。
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そして、2015年5月29日からソフトバンクはお馴染みの白戸家の広告「岡山篇」を公開した。「桃太郎の故郷」と言われている「岡山県の奥津峡」でもソフトバンクの電波が届くことをアピールしたCMである。

「まんが日本昔ばなし」の語り手でお馴染みの市原悦子さんが演じるおばあさんが川で洗濯をしているところに大きな桃が流れてきたが、おばあさんは桃を無視してかかってきた電話に出る。そのまま桃は川を流れて、鬼ヶ島に流れ着く。そして鬼たちに斧で桃はぶった斬られる。

この桃太郎の桃は、KDDIのテレビ広告で、松田翔太さん、桐谷健太さん、濱田岳さらんがそれぞれ桃太郎、浦島太郎、金太郎を演じた「あたらしい英雄」CMの桃太郎をぶった斬ったもののように見える。

2015年4月に発表された2014年度「企業別CM好感度ランキング」で、KDDIのこの「三太郎」シリーズのCMが初の1位に輝いた。そのせいで、前年度まで7連覇だったソフトバンクモバイルの「白戸家」シリーズは2位に後退してしまった。

鬼ヶ島で鬼にぶった斬られてしまえば、ライバル桃太郎は生まれてこなかったことからソフトバンクとしては、そのような桃はまさに「ぶった斬ってやりたい」心境であろう。

しかし、このような挑発的な広告を立て続けに行っていたら、話題にはなるかもしれないが、かえってソフトバンクは好感度を下げていかないだろうか。今回のソフトバンクの岡山県の奥津峡でも電波がつながるようになった広告も、「裏を返せば、今までつながらなかったの?」ということを視聴者に訴求しているようで、あまりクールなものとは思えない。それとも、もはや全国どこでも「つながるのが当たり前」になった現代において、つながることだけでは物足りないから、ついでにライバルKDDIも挑発したのだろうか。

他社との差別化や自社の独自性と優位性の訴求が難しくなってきた通信業界においては、もはやこのような挑発的な広告でしか視聴者に訴えられないのだろうか。

 

【ソフトバンク CM 白戸家「岡山」篇】KDDIを想定したと思われる桃は無視され、鬼が島で鬼にぶった斬られる。

 

▼鬼ヶ島で鬼にぶった斬られてしまえば、KDDIの桃太郎も誕生することができなかったかもしれない?20150601-sato-2

【参照情報】
ソフトバンクCM

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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