2600年間、誰も答えられなかった問いに答えを出すための戦略
There is no 'supposed to be' nor 'supposed to do'
2015.06.26
Updated by Ken Takai on June 26, 2015, 10:46 am JST
There is no 'supposed to be' nor 'supposed to do'
2015.06.26
Updated by Ken Takai on June 26, 2015, 10:46 am JST
イノベーションや新しい価値創造が生まれた瞬間を振り返った時、そこには多くの科学の発展がありました。科学の発展を支えるため自然の摂理の中に潜む「発見」に日夜努力するサイエンティスト、そして「発明」に注力するエンジニアの言うことに耳を傾けることは、これからの未来を創るヒントを得ることにつながります。
そこで、「これまでの当たり前」を変える研究と、その研究結果が世の中をどう変えていくのかについて、今回は海洋研究開発機構(JAMSTEC) 深海・地殻内生物圏研究分野 分野長である高井研氏にお話を伺ってきました。
前回までの高井氏へのインタビュー記事はこちら
>>生命の起源を明らかにするため。微生物学者、地球外生命体を探す
──「生命の起源」「生命とは何か」を定義できることで、我々一般市民にとって何かいいことがあるのでしょうか。
高井:いいことなんてたぶん何もないです。日常生活になんの影響もないけれども、ではなぜ人間はギリシャ時代のアリストテレスからずっとそれを問い続けているのか。それは、人間が人間である以上、どうしても知りたいことだからです。経済的価値は無い、でもずっと問い続けてきた命題に答えを出すことには大きな意義があります。
生命を理解するというのは、説明抜きで、人間がホモ・サピエンスとして意識を持ち始めた時から始まる本能の一つだと思います。というのは、人間は生きるためには他の生き物を食べなくてはいけない。石や鉱物を食べては生きていけないですよね。だから人間の脳の中には、生物と無生物を見分ける脳部位があって、それがずっと培われて本能として持っています。そもそも人間が生き延びるために、それが必要だったからです。
だから「生命とは何か」という問いは、人間が人間である最初から持ち続けている根源的な疑問の一つでしょう。でもそれに対して、2600年間誰も真の答えを出せませんでした。それはなぜか。人間が見ている「生命」が地球上の生命に限定されているからです。
──自分のことは自分では分からない、ということですか。
高井:そうです。自分を理解するには、他人との比較を通じて「あの人とここが似ている、あそこは違う」ということを認識して、初めて自分という姿が意識の中に作られます。でも、地球上の生命に関しては、皆同じシステムで動いていますから、「生命とはこういうものである」というイメージを地球上の生命だけで形作ることはできません。だから、地球外の生命を探さなくてはいけない。
地球の生命とエンセラドスの生命とエウロパの生命、比較して同じ部分と違う部分を理解することで、「生命として共通している部分」を見つけることができます。それが、「本当の生命とは何か」の答えになります。
──「生命の起源を明らかにする」というのは壮大な目標ですが、先生が生きている間に成果が出せるのでしょうか。
高井:私が描いているのはあくまでも自分の人生の中で達成できることです。もしくは、自分の人生が残したものが次世代の人にどう影響を及ぼすか。興味があるのはそこまでです。
夢やロマンは誰にでもあります。それをいかにして、自分の人生の中で表現するか、あるいは達成するか、そのための戦略を立て、プロジェクト(計画)を立てることが重要なんです。私は「生命の起源を明らかにする」という大きな問題が解ければいいなと客観的に言っているわけではなくて、自分がやるんです。ロマンとして、夢としての設定と、それを実現する戦略は違うんですよ。
インタビューの続きはこちら
>「ビジョンを持つ力」を鍛える方法
今回インタビューを受けていただいた高井氏には第7回SCHOLAR.professorに登壇いただき、「なぜ微生物学者が地球外生命体を探すのか」をテーマにお話いただきます。
日時 :2015年7月13日(月) 19:30~22:00(開場19:00)
会場 :devcafe@INFOCITY(渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル16F)
受講料:5,000円(税込)
詳細はこちら:http://scholar.tokyo/
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 深海・地殻内生物圏研究分野 分野長
超好熱菌の微生物学、極限環境の微生物生態学、深海・地殻内生命圏における地球微生物学を経て、現在は地球における生命の起源・初期進化における地球微生物学および太陽系内地球外生命探査にむけた宇宙生物学を探求。
著書に『生命はなぜ生まれたのかー地球生物の起源の謎に迫るー』(幻冬舎)、『NHKサイエンスZERO 深海で生命の起源を探る』(NHK出版)、『微生物ハンター 深海を行く』(イーストプレス)など。
National Geographic日本版webにて連載『青春を深海に賭けて』:
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20110518/270393/