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「とりあえずオープンデータ」から真の情報活用へ。GitHubは日本のオープンガバメントを進化させるか?[後編]

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2015.07.06

Updated by Yuko Nonoshita on 7月 6, 2015, 10:00 am JST

本記事の前編では、「第3回自治体オープンデータ推進協議会(関西会議)」のプログラムとして、行政や公共機関でのGitHubの採用とオープンソース化に向けた取り組みを紹介するGitHub本社の行政担当エヴァンジェリストであるBenBalter氏の講演内容を紹介した。後編では、日本の行政としては初めてGitHubの公式アカウントの登録と活用を行っている和歌山県をはじめ、滋賀県、大阪市、神戸市での、オープンデータに向けた取り組み事例を紹介する。

和歌山県では、地域が持つヒト、モノ、カネ、情報を全て活かすために県庁が持つデータの公開を推進し、今年2月にGitHubのアカウントの運用を試験的に開始した。県内の道路規制や避難先一覧、トイレマップなどを公開している。発表を担当した和歌山県情報政策課の田中一也課長は、県がGitHubを運用する利点として、データの利用履歴が残ることでニーズを把握したり、多くの開発者に参加してもらいやすい点をあげている。運用にあたっては地元で活動しているCode for WAKAYAMAの協力を得ており、GitHubの運用だけでなく、地域データを作成する活動にも力を入れている。例としてはオープンストリートマップを使った独自の地図情報を発信するためのマッピングパーティの開催や、Localwikiを使って地域イベントに参加した飲食店の情報を収集、公開するなどしている。地図づくりには地元の学生らも参加し、地域からの反響も良かったという。さらに、収集された情報をマッシュアップしてイベントで活用したり、アプリを開発するなど、積極的な取り組みが目立つ。

▼和歌山県情報政策課の田中一也課長からGitHubの採用など同県のオープンデータへの積極的な取り組みが紹介されたが、行政が一方的に動くのではなく、地域で活動する開発者や住民も巻き込んだオープンな取り組みにしている点が特徴的であるといえる。
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滋賀県からは勉強のために個人として参加したという滋賀県観光交流局の筈井淳平氏から、自治体でオープンデータ化できる情報とはどのようなものが考えられるかといった話が紹介された。自治体での取り組みとしては、公文書作成プロセスの原則オープン化、ウェブページのオープンデータ化、統計やリストなどのオープンデータ化があるが、課によって扱う情報は異なり、観光交流局では多文化共生推進に関わる各種情報の発信として、課題をイメージしてもらうための情報や外国人らの生活に役立つ情報のオープン化が求められているという。すでにある情報はもちろん、まとまっていなくても目に付く形で公開することが課題の認識につながるのであって、オープンデータ化にニーズの高い、低いはないともコメントしている。ともすれば「とりあえずオープンデータ」という流れになりがちなので、そこでビジュアライズやフィードバックが得られやすいようにすることが大切ではないかとも提案していた。

▼滋賀県観光交流局の筈井淳平氏は直接のオープンデータ担当ではないが、自分の課だけでもこれだけ公開する価値のある情報があると具体例を見せ、情報を視覚化する必要性を強調していた。
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大阪市からは現在進行中のICT戦略の骨子が大阪市総務局行政総務課の中道忠和課長代理から紹介された。大阪市でオープンデータの取り組みを積極的に行っており、24区の広報誌をオープンデータ化したり、地域課題を解決するアプリを開発するシビックテックハッカソンなども実施している。カタログサイトも制作予定だが、こうした流れは情報を提供するプラットフォームが整ってきたことなど、環境に後押しされているところがあり、やらなければならない状況になっているとも説明する。とりあえずデータを公開するから、出し方まで考えて、集めた情報を一元化するといったシステムの運用からアウトプットまでの流れを改善するなど、現場が納得する方法で情報が活用できるようにしている点が特徴だと言える。また、共通のフォーマットを用意しても区ごとに事情が異なることを理解し、導入にはあたっては説明と意味付けを行うことで現場のモチベーションを維持できるようにすること、特にICTに自分の仕事が奪われると誤解されないようにするのが大事だと説明した。

▼大阪市ではオープンデータおよびオープンガバメントの基礎となるICT戦略を推進し、市民サービスと地域活力の向上につなげようとしている。
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▼オープンデータの具体的な活用例として、地域課題を解決するアプリを開発するハッカソンを開催し、作品を公開している。
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▼すでにオープンデータを行っている区のシステムを見直し、改善することにも成功している。
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最後に神戸市企画調整局情報化推進部の中川雅也係長から、今年4月から始まったオープンデータの取り組みが紹介された。ステップとしては6つのゴールを設定し、3年かけて段階的に作業を行っていくが、課題はオープンデータをどう扱うかにあり、そもそもどのようなデータが蓄積されているのかを把握する、”データの棚卸し”から始める必要があったという。過去のアクセス数やダウンロード数を参照して優先順位を決めたり、ニーズを把握するために地域で活動する開発者とアイデアソンやハッカソンを実施するなどしているが、並行して作業を行う現場に対し、技術や心理的な負担を軽減する必要もあるという。具体的には、外部からメンターを招いて庁内アイデアソンを実施して一気に作業を進めたり、データコンサルタントの役割を担うCDO(Chief Data Officer)の存在も必要ではないかと提案している。具体的なツールとしてはGitHub以外にjig.jpのデータカタログなども利用している。また、アニメ攻殻機動隊と連携したプロジェクト「神戸市公安9課」を公開し、オープンデータをはじめとした政策のアピールを行うユニークな取り組みも行っている。

▼神戸市ではオープンソースの推進にあたり6つのゴールを設定しており、技術や心理的な負担を排除しながら、地域の開発者や官民連携のプロジェクトも交えながら3年かけて行うとしている。GitHubも活用しているが和歌山県とは手法が異なり、jig.jpなど他にも様々なツールを活用している。
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今回の事例発表は、先進的な取り組みの裏で発生する現場の問題や課題も数多く共有され、これからオープンデータを推進する自治体にとって大いに参考になったといえるだろう。その中には「オープンデータが漏えいしたらどうするんですか?」と本気で心配する声があるという衝撃の事実もあり、自治体の中から改革を進める難しさも伺えた。

オープンデータ化に向けては個々で動くよりも、地域全体で推進するのが効果的であることから、イベントの会場を提供する大阪イノベーションハブでは、同施設を拠点とする「ODI Osaka」*と共に、オープンデータが安心して活用できるODIオープンデータ証書の発行を行うことを発表。さらに7月には観光・イベントとオープンデータをテーマにしたハッカソンの開催をはじめ、9〜10月には関西自治体のオープンデータ整備を進めるための勉強会など、様々なイベントを開催する。それらの活動がオープンデータとして公開され、さらに日本全国の自治体のオープンデータを推進することを期待したい。

*ODI Osakaは非営利組織でのオープンデータ活用を推進するため2012年に英国政府が設立したODI(Open Data Istitute)に、アジアで初めてソウルと共に認定された組織で、ODIに認定されたアジア初の組織で、世界と地域をつなぐハブとしての役割を担う。

▼会場では関西自治体のオープンデータ化をさらに推進するための様々な活動が紹介された。
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【参照情報】
第3回自治体オープンデータ推進協議会(関西会議)
和歌山県(GitHub)
大阪市市政オープンデータに関する取り組みについて
神戸市(GitHub)
ODI Osaka

 

※修正履歴
・「滋賀県観光局」を「滋賀県観光交流局」に修正いたしました。(2015/7/6 13:00)

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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