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最優秀賞は「Cinderella Shoes」KDDI∞Labo 8th Demoday開催、第9期はハードウェアプログラムが新たにスタート

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2015.07.15

Updated by Asako Itagaki on July 15, 2015, 09:38 am JST

7月14日、インキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」第8期参加チームが成果を発表する「KDDI∞Labo 8th Demoday」が開催された。

開会の挨拶で、江幡智広KDDI∞Labo長は、「4年間の活動でベンチャーファースト、ギブファーストの気持ちは一貫して持ち続けている。スタートアップがやりたいことをどう支援していけば実現できるのかをいつも考えている。本日卒業する5チームは、まだまだ足りないところがあるが、卒業生、支援者、事業会社の方々とネットワーキングしながら支援していきたいので、ぜひ応援して下さい」と述べた。

▼第2期卒業生のエウレカが本格的に海外進出することも紹介された。

当日プレゼンテーションした第8期のチームは以下の5チーム。

OSHARECA(オシャレカ)(OSHARECA株式会社)

美容師と既存顧客をつなぐ、サロン専用コミュニケーションプラットフォーム。顧客は美容師にヘアイメージやヘアケアについてSNS感覚で相談でき、履歴はカルテとして蓄積される。「世界で一番美容師さんの声に耳を傾けている」と自負する現役女子大生が考案した。「今までは2ヶ月に1回だったお客さんと美容師さんのコミュニケーションを変えます。22万件の美容院で働く美容師さんがはさみとOSHARECAがあれば行きていける世界を実現します」(OSHARECA代表 佐竹夏美氏)3店舗に試験導入を開始しており、クローズドβ版を本日リリース。今秋正式版リリースを予定する。
OSHARECA(Facebookページ)

Bee Sensing(ビーセンシング)(Bee Sensing)

現役養蜂家が考えた、ミツバチ飼育を支援するシステム。用法業者にとって負担となる蜂の健康の遠隔管理と養蜂場の巡回を履歴管理をセンサーとスマホアプリで支援する。また、「いつ、どこで生産された蜂いつか」を記録に残すことで、蜂蜜を作るプロセスを消費者に開示し、「四季の蜂蜜」を届ける。全国各地から集められた四季の蜂蜜を、ブレンドされることなく皆さんに知っていただきたい、ワインのように楽しんでいただきたい。私たちは180億円の日本の養蜂市場を変えます」(BeeSensing代表 松原秀樹氏)現在、ReadyForでクラウドファンディングで資金調達を行っている。
Bee Sensing 

PU(ピーユー)(株式会社SUPERSTUDIO)

ものづくり特化の動画ハウツーサービス。家具、アクセサリー、雑貨、ガーデニングなどのものづくりを支援する。ハウツー動画による学び、レシピの共有、都内にある工房でのものづくり体験イベントなどを通じてものづくりを学べる。今秋には会員が商品を売買できるECプラットフォームを実装予定。「PUを通して作る楽しみ、見せる楽しみ、売る楽しみを与えていく。ものづくりユーザー1,000万人が集う日本最大のモノ作りプラットフォームを作る」(SUPERSTUDIO 林紘祐氏)と抱負を語る。
PU 

LYNCUE(リンキュー)(TEAM LYNCUE)

今までにない「人とのつながり」を提案する照明型IoTデバイス。カメラとプロジェクターが搭載されており、カメラで撮られたリアルタイム映像をネットワークを介して離れた場所のプロジェクタでうつせる。デバイスは照明と同様に、1つのスイッチで操作が可能。「お年寄りを見守るサービスはたくさんあるが、おばあちゃんい笑顔を取り戻すサービスはない。このコンセプトは海外でも通用することがわかった」(TEAM LYNCUE 塩塚丁二郎氏)。メンタリング企業の日立製作所は自社の施策部門を紹介し回路設計をサポートした。すでに中国の深圳でデモプロダクトの展示を実施している。
LYNCUE

シンデレラシューズ(株式会社シンデレラ)

足の画像4枚をスマートフォンから送るだけで数値を割り出し、特徴をまとめた診断書を作成し、それにもとづいてECサイトの靴の中から合う靴を選び出す。デザインと価格で選んでいた靴選びを変える。代表の松本久美氏は13年間靴業界で企画・デザインから販売までを経験した靴の専門家。「靴は、フィッティングとデザイン・価格が両立できない、矛盾したマーケット。EC上にバーチャルなシューフィッターを作ることで解決する。靴を志したのは女性がきれいになる瞬間が好きだったから。世の中には既に靴はたくさんあるので、自分で靴を作るよりも良い靴を合う人に届ける方が幸せになれると思った」と語る。
Cinderella Shoes

来場者の投票により選ばれるオーディエンス章にはシンデレラシューズが選ばれた。また最優秀賞にもシンデレラシューズが選ばれ、第7期のDr.JOYに続いてダブル受賞となった。

▼プレゼンターの高橋誠執行役員と全チーム代表。女性起業家の最優秀賞受賞は初となる。

第9期は地方連携強化、ものづくり支援の6ヶ月プログラムを新たに実施

授賞式の後、この日から参加チーム募集が始まる第9期の取り組みについてKDDIの高橋誠執行役員から説明があった。パートナー連合に新たにGoogle、三菱UFJニコス、住友不動産の3社が加わり、合計18社となる。また支援強化だけでなく第8期から取り組みを始めた地方連携を強化し、大阪市につづいて石巻市、広島県、福岡市との連携を行う。「MeetUP!プログラム」を開始し、距離を超えたビジネスマッチングに取り組む。ひいては、スタートアップ、自治体、地域社会が持つアセットとKDDI∞Laboがもつアセットをスタートアップ、自治体、地域社会のもつ資産とKDDI,パートナー起業のアセットを集めることで、持続可な地方産業の振興を実現する。

▼第9期の地方連携プログラムに参画する石巻市、広島県、福岡市、大阪市の担当者。この日は、第8期に行われた大阪インキュベーションHUBでのイベントに参加したチームから3チームがプレゼンテーションを行った。

新たな試みとして、第9期と並行して、モノづくり系スタートアップを支援する6ヶ月の「KDDI∞Laboハードウェアプログラム」の実施が発表された。高橋氏はLYNCUEのメンターだった日立製作所から「ハードウェアのスタートアップに3ヶ月は短すぎる」と言われたというエピソードを披露。IoT市場が成長するとともにまたKDDI ∞ Laboへもハードウェア系プロジェクトの応募が増えており、モノづくり機運が高まっていることが背景にある。

ハードウェア系スタートアップ支援として、開発拠点は増えているが、それに対して量産化支援や販売チャネルが不足しており、ビジネスとして持続できないことが課題となっている。ハードウェアプログラムはこの課題に応えるものだと高橋氏は説明した。プログラム期間中にクラウドファンディングに載せられるレベルの試作品を完成することを目標として、Demodayの後も量産化支援、販路提供、ビジネスマッチングで、事業化までを一気通貫で支援する。

第9期の応募期間は2015年7月14日から8月17日まで。実施期間は、オリジナルプログラム(従来の3ヶ月プログラム)が2015年10月上旬から2016年1月上旬まで、ハードウェアプログラムは2015年9月上旬から2016年3月上旬までを予定している。

 

【報道発表資料】
「KDDI ∞ Labo」第8期最優秀チームの発表および第9期プログラムの開始について

 

※修正履歴:
OSHARECA代表のお名前およびLYNCUEの社名に誤記がありましたので本文を修正いたしました。読者の皆様および関係者の皆様にはご迷惑をおかけいたしましたことをお詫びいたします。(7/17 18:00)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。