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UWB屋内測位によるカート動線可視化でピッキング作業の大幅効率化 NICTが実証実験成果発表

Tips for a more efficient warehouse operation

2015.08.12

Updated by Asako Itagaki on August 12, 2015, 07:31 am JST

国立研究開発法人情報通信技術研究所(以下NICT)と株式会社富士ロジテックは、UWB(超広帯域無線)測位システムの物流倉庫における実証実験を共同で実施した。富士ロジテックの物流倉庫内にNICTが開発したUWB屋内測位システムを配置し、同倉庫内の全16台の作業ピッキングカートの動線可視化に成功した。これにより、ピッキング作業の大幅な効率改善が可能となる。

物流倉庫での商品ピッキング作業の作業効率向上には動線の正確な把握を元に適切な商品および棚配置を行うことが重要となるが、これまで動線把握の有効な手段がなかった。今回の実験ではNICTが開発した数十cmオーダーでの高精度な測位が可能なUWB屋内測位技術を物流倉庫で作業中のピッキングカートを対象に適用して動線取得をうもので、2015年3月から7月の間、作業中ピッキングカートの全稼働時間・全台数の動線取得を試みた。

実証実験ではまず、倉庫の構造を考慮にいれてUWB測位システムを配置することで、動線取得に要する測位精度を達成。ピッキングカートがピッキング作業中に移動しているか、又は止まっているかを可視化して、移動時間とピッキング時間を分けて集計した。

▼ピッキングカートの動線取得例20150812_nict_pikking1
▼物流倉庫に設置した固定器
20150812_nict_pikking2

▼ピッキングカートのとその上に取り付けた移動機
20150812_nict_pikking3

富士ロジテックはこの結果を受け、ピッキング担当エリアを区切ったり商品棚の配置を見直すなどの対策を実施した。対策前と対策後の動線とカートデータを解析した結果、商品ピッキングのための歩行時間は平均50%削減した。また、商品1個あたりの平均ピッキング時間も従来の平均8.5秒から6.5秒へ、2秒短縮した。歩行時間を減らすことは作業効率の向上に直結し、また省エネにも寄与する。

今回の実証実験は作業員が押して歩くピッキングカートを対象としたが、今後はフォークリフト等が高速で移動する倉庫環境でのUWB測位システムの有用性についての実験を行う。将来的には、UWB移動機と商品搭載パレットをひもづけることで、商品の在庫管理等への活用も期待される。

UWBを利用した屋内測位システムはナノ秒オーダーのパルス電波を用いることで、Wi-FiやIMESなどを用いた屋内測位システム(数m~10メートル程度の精度)に比べ、一桁高い精度で位置測定が可能だが、測定距離が短いため測距のための固定器を多数設置する必要があり実用化の支障となっていた。NICTは固定器の中に内蔵する通信モジュールの数を増やし、少しずつずらして連続送信することにより、時間軸上の合成電力を大きく得ることで測定距離を長くする技術を開発した。今回の実証実験でもこの技術が利用されている。

▼UWB技術の解説動画(NICTオフィシャルチャンネルより)

 

 

【報道発表資料】
UWB測位システムを使い、物流倉庫作業を大幅に効率化 

【関連情報】
UWBを利用した高精度の屋内測位システムを開発

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。