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市政府(日本の区分で言う県)が大規模に会場を設営する深圳のフェア

ルールを変える未来 DIWG Do It With Government?

DIWG Do It With Government?

2015.08.21

Updated by Masakazu Takasu on August 21, 2015, 11:19 am UTC

台北、深圳、シンガポール、東京と、この4ヶ月は毎月アジアのMaker Faireが続きます。特に台北、深圳、シンガポールこれらの3都市、3カ国はMakerムーブメントにかなり期待と投資をしています。

Maker Faireの会場は公的機関が用意して、そこまでの交通手段とか警備も行政のほうが提供する。素人が作った変わった発明品が集まるマイナーなイベントであるMaker Faireは、いつも展示場所や世間からの理解に苦労するのですが、アジアのいくつかの場所ではむしろ「そちらがメジャー」になりつつあります。

市政府(日本の区分で言う県)が大規模に会場を設営する深圳のフェア

市政府(日本の区分で言う県)が大規模に会場を設営する深圳のフェア

MakeそのものはアメリカのDIY(Do It Yourself、自分でやる)精神にルーツのあるムーブメントで、誰にも頼らず自分の手で作りたいという美意識があります。大企業の新製品や大学での研究よりも自分で起業するスタートアップのほうがカッコイイとされる。砂漠の中にゼロから建築物をつくってフェスを行い、終わった後完全に砂漠に戻すバーニングマンというイベントがあるのですが、そういうものと近い精神があります。

とはいえ、オープンソースやコミュニティが称揚される文化でもあるので、Do It Yourselfの発展系として、Do It With Others(DIWO、ネットにオープンソースで置いたものを誰かが発展させるように、自分以外の誰かが自然に巻き込まれて一緒に作る)という言葉もよく言われるようになっています。

台北の次に訪ねた深圳で、フェアの開幕を待っている間、国際ゲストたちが一緒に出番待ちをしているときに、Fablab創設者でMITメディアラボ教授のニール・ガーシェンフェルドに、DIWOをもじってDo It With Government(DIWG,政府と一緒にやる)という冗談を言ったところ、やたらに感心されて僕がむしろびっくりしたことがありました。

市政府の長ほか中国政府の偉い人たちがカメラマンやお付きの人たちを引き連れて待合室に入ってきたときのことです。

オープニングを待つVIPたち

オープニングを待つVIPたち

Maker Faire深圳の実質的な運営をしているSeeedStudioの社長エリック・パンや実行委員長のケビン、もとFOXCONNのTerryなどは急にピリッとしはじめたのですが、MakerMediaのCEOデールやMITのニールなどは誰が来たのかよくわからず、中国語で会話が始まったのでちょっと手持ちぶさたになったときの冗談でした。そのとき、深圳のMaker Faireがとにかく急速に大きくなっていて、そのパワーについて話していた最中だったので、DIWGという冗談が響いたのかもしれません。

アメリカのMaker Faireは今年で10年目を迎えます。昨年は130カ所を超える場所で開かれました。一気に広がるきっかけとして、オバマ大統領が2013年からアメリカの各学校にデジタル工作機械を入れはじめ、昨年2014年から行われるようになったホワイトハウスのMaker Faireの影響が大きいと思われます。アジアでもそのころから、各国の政府がMakerムーブメントに力を入れ始めたように感じます。

そう思って、ホワイトハウスMaker Faireの仕掛け人である、MakerMedia CEOのデールとシンガポールのMaker Faireで会ったときに話してみました。シンガポールのMaker Faireは、教育省の管轄にあるサイエンスセンターシンガポールが主宰する、まさに国営のMaker Faireだし、シンガポールにはギーク大臣など、政府の人間でありながらMakeが好きな人たちがいっぱいいます。デールは僕の話を聞きながら、こう言いました。

「政府のサポートがあるのはすごくいいことで、それと市民が一緒にやること、その“一緒”というところがとても大事だと思う。シンガポールはいま他にも政府主催のサイエンスイベントやってるけど、上手くコラボレーションできてるMaker Faireが一番いいもののように感じる。」

実際、シンガポールではサイエンスウィークという大きなイベントの中にMaker Faireを位置づけていて、大きなショッピングモールの中にシンガポール内の学校がブースを出す、サイエンスフェスタというイベントを平行して開催し、両方をシャトルバスでつないでいました。

ブースはわかりやすいものだし、ショッピングモールの中でやっているので多くの人に見せられるモノではありましたが、ショッピングを求めて来たお客さんがスッと入ってくる感じではなかったように思います。

ショッピングモール内で行われていたサイエンスフェスタ

ショッピングモール内で行われていたサイエンスフェスタ

デールはその話をしながら、僕にこの写真を見せてくれました。

「このOneMakerGroupの写真は象徴的だと思うのだけど、政府がMakerムーブメントに関与して、全体がパワフルになるのはよいことだ。ルールを整備するとか、学校で教えるとか、政府でないとできないこともある。

でも、政府だけが中心になって行うと、どうしてもMaker Faireっぽさ、DIYっぽさが出づらくなる。シンガポールは、政府を含めた全員が目的のもとに協力する、一つの大きいコミュニティのように動くことができる。OneMakerGroupはその象徴だし、それがいいことだと思うなあ。」

と話してくれました。

たしかに、政府の人が絡んできたからと言って、なんでもそちらを中心に考えてしまうとMakeではなくなりそうです。デールがオーガナイズしたホワイトハウスのMaker Faireは、場所がホワイトハウスであるものの、まさにMaker Faireでした。オバマ大統領はそれに絡めて、教育にデジタルファブリケーションツールを活用するなど、Makeを志向した教育プログラムを始めています。

テクノロジーの進化とインターネットにより、実際にモノを作ること、システムを作ることの重要性がますます増しつつあります。「作れる人」がどんどん世の中を進めていくようになるでしょう。

Do It With Governmentは、これからもますます進んでいくように思います。

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高須 正和(たかす・まさかず)

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動をしています。日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、メイカーズのエコシステムという書籍に活動がまとまっています。ほか連載など:http://ch.nicovideo.jp/tks/blomaga/ar701264