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ユニクロ “自分サイズ”のメンズシャツをオンラインでセミオーダー:ファストファッションからの脱却になるのか

Made-to-measure shirts can be cheap these days

2015.08.21

Updated by Hitoshi Sato on August 21, 2015, 17:37 pm JST

0393669_01ユニクロは2015年8月17日、メンズシャツをインターネットでセミオーダーメイドできるサービスを開始した。寸法やシャツ生地を選んで自分に合ったサイズのシャツをネットで注文できる。

胸囲や腹囲などの体のサイズを入力して、生地を選んでオーダーする。第1弾として「レギュラーフィット」「スリムフィット」の2タイプで白/青の2色を展開。生地は光沢感のある「ファインブロード」、カジュアルな「ファインオックスフォード」から選べる。その組み合わせは全1,183通りと、その組み合わせ数の多さをウリにしているようだが、人の体型は、そんなに変わらないから、結局はタイプ(フィット)と生地と色の組み合わせの以下の8通りの中からの選択になる。

■レギュラーフィット
・ファインクロス ブロードシャツ (レギュラータイプ襟、青か白)
・ファインクロス オックスフォードシャツ (ボタンダウンタイプ襟、青か白)

■スリムフィット
・ファインクロス ストレッチスリムフィット ブロードシャツ (レギュラータイプ襟、青か白)
・ファインクロス ストレッチスリムフィット オックスフォードシャツ (ボタンダウンタイプ襟、青か白)

価格は2,990円(税別)、注文から配送までは2~5日前後。一定の条件を満たせば翌日配送も可能。年内にはストライプ柄、チェック柄の追加を予定しているとのこと。サイズがわからない人は全国のユニクロ店舗でも、採寸をしてくれるそうだ。

ハードルの高い「オンラインでのシャツ購入」

ネットでシャツを買うと失敗することが多い。既製品で体型をチェックしても、同じMサイズでも胴回りがきつい、丈が長いなど、ブランドによって微妙に異なることが多い。既製品でも店舗で実際に手にとってから購入する方が「はずれ」がなくてよい。生地も自分の手で触ってみて気に入ったものを購入した方が安心である。「ファインクロスブロード」がどんな生地か、すぐにわかる人なんて、そんなに多くないだろう。そして購入をやめたいと思っても、ネットで購入すると返品するのも手間であるし、なんとなく気が引ける。

ファッションにこだわりがなければ、「いつも購入する店で、いつものシャツを購入するのが無難」なので、ついつい「いつもの店の同じシャツ」を選んでしまう。それはオーダーシャツでも同じことで、最初にオーダーするときに店舗で採寸してもらって生地を選んで作るが、自分のサイズや気に入りの生地を正確に覚えている人はどれだけいるだろうか。ほとんどの人は、体型がそれほど変わらないからと、前にオーダーした店舗で次もオーダーすることになる。

だがあえてその市場に参入するユニクロ。今回、セミオーダーを開始する背景として「既製品のシャツでは体型や嗜好に合わない、という多数のお客様からのご要望に応える」と述べている。従来の常識では、「体型や嗜好が合わない」という要望への対応をユニクロのような安さをウリにしたマスプロダクションのメーカーに期待するのは酷なことだが、一度自分の体型にフィットしたシャツを見つけることができた人には便利なサイトになるだろう。顧客の声に応えようとするユニクロには敬意を表したい。

「安物の代名詞」とされる「ファストファッション」では、どこで買っても同じようなもので、ユニクロのシャツである必要がないから差別化を出そうとしているのだろうか。オンラインとはいえセミオーダーで2,990円(税別)はかなりお手頃価格である。従来のセミオーダーの概念を変えるかもしれない。

 

【参照情報】

セミオーダー感覚で選べる本格仕立てのメンズシャツを発売(報道発表資料)
セミオーダー感覚で選べるファインクロスシャツ

 

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。