台湾でWiMAXサービスが相次いで終了 – 2.6GHz帯はLTEに
Some Taiwanese operators shut down WiMAX service - 2.6GHz will reallocate for LTE
2015.08.31
Updated by Kazuteru Tamura on August 31, 2015, 18:24 pm JST
Some Taiwanese operators shut down WiMAX service - 2.6GHz will reallocate for LTE
2015.08.31
Updated by Kazuteru Tamura on August 31, 2015, 18:24 pm JST
中華民国(以下、台湾)ではWiMAXサービスを国策で推進していた。しかし、そのWiMAXサービスも衰退の一途を辿り、台湾から完全に姿を消す日はそう遠くないだろう。台湾ではWiMAXサービスが相次いで終了しており、WiMAX用に割り当てられた2.6GHz帯はLTE用に転用されることが決定し、周波数オークションも始まっている。今回は台湾におけるWiMAXサービスおよびそれに関連した現状や今後の展望を紹介する。
台湾では2007年7月に電気通信事業などを管轄する行政機関である国家通訊伝播委員会がWiMAX Release 1.0(以下、WiMAX)方式による無線ブロードバンドアクセス(WBA)のライセンス競売を実施し、同月中に結果を公示した。
周波数は2565.0〜2595.0MHzの30MHz幅、2595.0〜2625.0MHzの30MHz幅、2660.0〜2690.0MHzの30MHz幅をWiMAX用に割り当て、各周波数におけるライセンスは台湾の北区と南区で異なる事業者に割り当てられたため、北区の3社と南区の3社で計6社にライセンスを交付したことになる。
なお、周波数のブロックおよび区域は2565.0〜2595.0MHzの北区がA1、南区がA2、2595.0〜2625.0MHzの北区がB1、南区がB2、2660.0〜2690.0MHzの北区がC1、南区がC2と指定されており、本記事では以下からブロック名で記載する。周波数が低い方から高い方に向かってAからC、北区が1で南区が2と覚えればブロック名を理解しやすいだろう。区分は北区が苗栗県・新竹県・宜蘭県以北、南区が台中市・花蓮県以南となる。離島は連江県が北区、金門県および澎湖県が南区に含まれる。ただ、事業者によっては各社の方針でWiMAXサービスを提供しない市・県も存在した。
ライセンスを獲得した6社は全球一動(Global Mobile)、威達雲端電訊(VeeTIME)、威邁思電信(VMAX Telecom)、大同電信(Tatung InfoComm)、遠傳電信(Far Eastone Telecommunications) 、大衆電信(First International Telecom:通称、FITEL)である。周波数のブロックはA1が大衆電信、B1が全球一動、C1が威邁思電信、A2が遠傳電信、B2が大同電信、C2が威達雲端電訊となる。なお、全球一動はライセンス取得時の社名は創一投資(Global On)であったが、後に全球一動に社名を変更しており、また威達雲端電訊はライセンス取得時の社名が威達有線電視(Vastar Cable TV System)であったが、後に合併や社名変更を経て威達雲端電訊としている。
ライセンスを取得した事業者のうち、当時は遠傳電信がW-CDMA/GSM方式による3G/2Gサービスを提供し、大衆電信がPHSサービスを提供していたが、その他の4社は移動体通信への新規参入となった。なお、威邁思電信は東訊(Tecom)とW-CDMA方式による3Gサービスを提供していた威寶電信(VIBO Telecom)の合弁会社として設立されており、当時の出資比率は東訊が55%で威寶電信が45%であった。後に威邁思電信は大同電信とともに威達雲端電訊に買収されており、威達雲端電訊の親会社である午陽企業集団(Markwell Group)の傘下となったが、各社のブランドを残して展開した。
参考表
▼全球一動の直営店。全球一動としては唯一の直営店である。
▼全球一動はWiMAX対応スマートフォンとしてHTC JやHTC EVO Designなどを取り扱う。
▼威邁思電信に出資していた威寶電信は台湾之星電信(Taiwan Star Telecom)に買収されて消滅した。
台湾ではWiMAXサービスが相次いで終了しており、2015年8月末時点で1社にまで減っている。
WiMAXサービスの終了は大同電信から始まった。大同電信はWiMAXサービスを継続する意思を示したが、国家通訊伝播委員会による検査で稼働中の基地局が少ないことが判明した。基地局の運用にはコストがかかるため、WiMAXサービスが衰退する中ですべての基地局を稼働させると経営面で苦しくなることは想像に難くないが、国家通訊伝播委員会はライセンスの更新を拒否したため、大同電信の意に反してライセンス満期の2014年12月3日をもってWiMAXサービスの終了を余儀なくされた。
その次は大衆電信が2015年2月11日にWiMAXサービスを終了することになった。WiMAXサービスやPHSサービスを手掛ける大衆電信は両サービスの衰退が大きく影響し、慢性的な経営難の末に台湾台北地方裁判所から破産宣告を受け、ライセンス満期の2016年3月18日を待たずにWiMAXサービスを終えた。なお、PHSサービスは2015年3月31日をもって終了した。
遠傳電信のWiMAXサービスは2015年3月10日に終了した。同社は2014年6月3日よりLTEサービスを導入しており、それを主要事業とする遠傳電信にとってはもはやWiMAX事業はお荷物となっていたに違いない。ライセンス満期は2015年12月27日であるが、それを待たずに終了したことになる。
そして、威達雲端電訊と威邁思電信が2015年8月24日にWiMAXサービスを終了した。両社は相互にローミングを提供するなど実質的には同体となっている。、両社のライセンス満期は、威邁思電信が2016年1月3日、威達雲端電訊が2016年3月11日であるが、WiMAXサービスの衰退を受けてサービスを終了する決断を下した。
WiMAXサービスを国策で推進した台湾において約9ヶ月の間に5社も一気にWiMAXサービスを終了し、残りは全球一動のみとなった。だが、全球一動がWiMAXサービスで使用中の周波数はLTE用に再割り当てされることが決定しているため、2015年12月10日のライセンス満期をもってWiMAXサービスを終了する可能性もある。
▼大同電信の販売店。立ち寄った際には営業していなかった。
▼全球一動の広告には正文科技(Gemtek Technology)製のWiMAX対応スマートフォン7G miracleも掲載されている。
国家通訊伝播委員会は2.6GHz帯をLTE用に割り当てることで決定しており、入札の申請を開始している。LTE用には2500.0〜2690.0MHzを割り当てるため、WiMAX用に割り当てられた周波数はすべてLTE方式に転用されることが分かる。
2.6GHz帯の割当ブロックはD1〜D6に分けられており、北区と南区のような区分けはない。具体的にはD1が上り2500.0〜2520.0MHz/下り2620.0〜2640MHzの20MHz幅*2、D2が上り2520.0〜2540.0MHz/下り2640.0〜2660MHzの20MHz幅*2、D3が上り2540.0〜2560.0MHz/下り2660.0〜2680MHzの20MHz幅*2、D4が上り2560.0〜2570.0MHz/下り2680.0〜2690.0MHzの10MHz幅*2、D5が2570.0〜2595.0MHzの25MHz幅、D6が2595.0〜2620.0MHzの25MHz幅である。D1〜D4はFDD-LTE方式となり、D5とD6はTD-LTE方式で利用されることになる。なお、D5の2570.0〜2575.0MHzおよびD6の2615.0〜2620.0MHzはガードバンドで利用不可であるため、D5とD6の利用可能な帯域幅が20MHz幅となる。
各ブロックの最低入札額も公示されており、D1が35億台湾ドル、D2が37億台湾ドル、D3が37億台湾ドル、D4が19億台湾ドル、D5が9億台湾ドル、D6が7億台湾ドル、最低入札額は総額で144台湾ドルに達する。
全球一動以外はすでにWiMAXサービスを終了しているため、国家通訊伝播委員会がライセンスを交付すればすぐにLTEサービスで利用可能となる見通し。D1の下りの一部とD6のすべては全球一動のB1と重なっており、全球一動が明け渡すまでは利用できないことになる。D1の最低入札額は帯域幅が同じD2やD3より低く、またD6も帯域幅が同じD5より低く設定されているが、全球一動がすぐに明け渡さない可能性を考慮したものと思われる。
参考表:2.6GHz帯の割当ブロック
▼遠傳電信の直営店店内。遠傳電信はWiMAXサービスを終了する前からLTEサービスを提供している。
全球一動と威達雲端電訊および威邁思電信はWiMAX Release 2.1の導入を表明し、国家通訊伝播委員会はWiMAX Release 2.1へのアップグレードを承認した。WiMAX Release 2.1は従来のWiMAX (WiMAX Release 1.0)やWiMAX Release 2.0を含み、またAdditional ElementsとしてTD-LTE方式との互換性を確保した規格を盛り込んでいる。
2.6GHz帯の周波数オークションはD5とD6がTD-LTE方式となるため、WiMAX Release 2.1を導入する計画の3社は実質的にTD-LTE方式を導入する可能性がある。午陽企業集団傘下で実質的に同体の威達雲端電訊と威邁思電信は1社と見なされる可能性が高く、そうなればTD-LTE方式の2ブロックは2社でうまく割れる。また、全球一動はWiMAX基地局の代わりにTD-LTE基地局の設置をすでに始めているとの情報もある。
世界的にWiMAX方式からTD-LTE方式への移行する事例が増えており、その流れが台湾にも来ることは間違いないだろう。台湾ではLTEサービスの開始から1年以上経過したが、業界の大きな動きは今後も続きそうである。まずは、2.6GHz帯の周波数オークションの行方に注目しておきたい。
▼全球一動の直営店店内。台湾ではLTEサービスが4Gとして大々的に展開されているが、それより先にWiMAXサービスが4Gを謳っていた。
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。