「ロボットの社会導入に向けて、法律家も技術者もともに議論を」——「ロボット法学会」の設立準備イベント開催

2015.10.13

Updated by Katsue Nagakura on 10月 13, 2015, 06:23 am JST

▼パネルディスカッション1「ロボットをとりまく人間の保護と責任」で登壇した、(左から)慶應義塾大学SFC研究所上席所員の赤坂亮太氏、花水木法律事務所・弁護士の小林正啓氏、中央大学教授で米国弁護士の平野普氏、明治大学教授で弁護士の夏井高人氏。
ロボット法学会

サービスロボットや自動運転車、ドローンなど、ロボットが私たちの生活の中に入ってくるにあたり、法整備や法規制のあり方について議論する「ロボット法学会」の設立準備イベントが10月11日、都内で開催された。イベントでは、法律の専門家や弁護士らが登壇し、会場の参加者らとともに熱い議論が繰り広げられた。

イベントは「ロボット法学会」設立準備研究会として「ロボット法原則の提言に向けて」と題して、開催された。法律の専門家らが登壇し、ロボットを活用し、共生する社会の実現に向けた法制度の課題などについて、会場の参加者も交えて熱い議論が繰り広げられた。

▼慶應義塾大学教授の新保史生氏がロボット法についての提言をしたほか、パネルディスカッションの司会進行を務めた。
ロボット法学会

イベントの冒頭で同研究会の慶應義塾大学総合政策学部の新保史生教授は、ロボットが日常生活にかかわるSFのような世界が現実になりつつあり、情報やネットワークといったバーチャルなものだけでなく、物体を伴う存在が人間に変わって社会生活に入ってきつつあるなどとして、ロボット法の必要性を強調した。その上で新保教授は「ロボット法 新8原則」として提案を発表。(1)人間第一の原則、(2)命令服従の原則、(3)秘密保持の原則、(4)利用制限の原則、(5)安全保護の原則、(6)公開・透明性の原則、(7)個人参加の原則、(8)責任の原則の8原則からなる、ロボット法を提言した。

なお、アメリカの化学者で作家のアイザック・アシモフが1950年に発表したSF小説「私はロボット(I, Robot)」の中で示した「ロボット工学三原則」(第1条:ロボットは人間に危害を加えてはならない、第2条:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない、第3条:ロボットは1,2条に反するおそれのないかぎり自己を守らければならない)が知られているが、新保教授は「これは思想であって法や規範ではない」として、ロボットを扱うにあたっての法原則を新たにつくる必要性を強調した。

一方、同研究会メンバーやイベント登壇者には法律家が目立ち、ロボットを開発したり利用したりするエンジニアやビジネスの人の参加はなかった。これについて新保教授は「研究会にあたり、エンジニアの人たちにも声をかけたが、(ロボット法の研究は本当に必要かといった)厳しい声をいただいた。」と言う。

▼パネルディスカッション2「ロボットの技術・産業発展と施策のあり肩」で登壇した、(左から)慶應義塾大学SFC研究所上席所員の工藤郁子氏、日本総合研究所戦略コンサルティング部融合戦略クラスター長の東博暢氏、経済産業省産業機械課長・ロボット産業室長の佐脇紀代志氏
ロボット法学会

技術の推進を勧めるエンジニアやビジネスサイドからは、法規制によって技術の社会導入の障壁になるのではないかという懸念は大きい。だが、ロボット法をめぐっては、「技術産業の発展のために議論することが必要」(新保教授)と言う。花水木法律事務所の小林正啓弁護士は「特に自動運転車の実用化では世界で熾烈な主導権争いが起きており、(参入の主導権を得るにも法整備は)喫緊の課題だ」と強調した。

弁護士で明治大学法学部の夏井高人教授は、「これまでは労働現場だけで規則をつくってきた。法律家だけで空想をしても仕方がないし、技術家だけが空想をしても進まない。みんなが集まって議論をして修正をしていく、プラットフォームが必要だ」という。そのプラットフォームとしてのロボット法学会であるとして、法律家以外の多様なステークホルダーの参加を呼びかけた。ロボット法学会は今後、発起人を募り、2016年度の設立を目指している。

(写真提供:ロボット法学会設立準備研究会事務局)

 

【関連情報】
「ロボット法学会」設立準備研究会 | Robot Law @ Japan

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長倉 克枝(ながくら・かつえ)

記者、フリーランスライター。1981年名古屋生まれ、北海道大学獣医学部卒。新聞記者(科学技術部、証券部)などを経てフリー。「日経サイエンス」「wired」「週刊朝日」などに執筆。関心領域はIT全般、テクノロジーと社会をめぐる問題、医療・介護福祉など。

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