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「日本の玄関で最高のおもてなしを」羽田空港で情報ユニバーサルデザイン高度化実証実験

2015.12.04

Updated by Asako Itagaki on December 4, 2015, 06:30 am JST

東京国際空港ターミナル、日本国際空港ターミナル、NTT、パナソニックの4社は、12月3日から東京国際空港(以下羽田空港)国際線・国内線旅客ターミナルで「空港の情報ユニバーサルデザイン高度化の共同実験」を開始した。訪日外国人や車いす・ベビーカーなどで移動する人、高齢者などの、空港を起点とした移動をICT技術で安心・便利にサポートすることを目指す。

ユニバーサルデザインで高い評価を得ている羽田空港

羽田空港国際線旅客ターミナルは2010年の開業だが、その4年前から「ユニバーサルデザイン検討委員会」を立ち上げ、当事者参加型のユニバーサルデザインを推進してきた。また、開業後も隔年で検討委員会を設置し、継続的な改善を図っている。

「(航空サービスリサーチ会社の)スカイトラックス社による評価では、2年連続で最高評価の5つ星を得ており、総合的に優れている中でもユニバーサルデザインのレベルが高いという評価をいただいている」(東京国際空港ターミナル株式会社代表取締役社長 土井勝二氏・写真右)と、その取り組みは高く評価されている。

2014年の検討委員会では、今後インバウンドの旅客が増えることをふまえて、外国人への情報提供、情報伝達とコミュニケーションの方法についての改善を検討した。これを踏まえて、ICT活用ソリューションの提言がされている。

なお、4社は11月26日に設立された「空港における情報UD検討委員会」に参画し、本共同実証実験に関する評価と助言を受ける。

「音」「光」「画像」「無線」でナビゲーション

実証実験のテーマはNTTが「かざして案内」「インテリジェント音サイン」「プロジェクションサイン」、パナソニックが「光IDサインと高性能ビーコンを使用したTIAT案内誘導アプリ」をそれぞれ実施する。12月3日に開催された説明会では、デモンストレーションが行われた。

▼NTTの実証実験テーマ

▼パナソニックの実証実験テーマ

かざして案内

空港内のサインにスマートフォンをかざして認識させることで、そのサインに紐付いた情報を利用者の言語で表示する。画像の認識にはNTTが開発した「アングルフリー物体検索技術」を使用しており、認識させる際の向きの違いや人の映り込みなどがあっても正確に特定できる。

▼サインにかざすことで画像を認識する。向きが違っても正確に特定できる。

▼サインに対応した情報が表示される。フロアマップや交通案内など必要な情報をここから探すことができる。

看板の画像と紐付けられる情報はクラウド上に格納されており、ネットワーク経由で情報を表示する。操作はブラウザ上で行うため、専用アプリのインストールは必要ないとのこと。

今後は、空港内の店舗の看板を登録して何の店かを表示したり、ショーケースの食品サンプルを登録して原材料を表示することで、宗教上食べられないものがある人にも安心して食事を楽しんでもらえるようなサービスを考えているとのことだ。

インテリジェント音サイン

聴覚障がい者向けに整備されている「音サイン」をより利用しやすくする方法。雑音がある場所での聞き取りにくさを解消するために単純にボリュームを上げたのでは、逆に周囲に対する騒音になってしまう。この課題をNTTが開発した「音声明瞭化技術」とビーコンを組み合わせて解消する。

音サインのある場所の近くにビーコンを設置する。専用アプリをインストールした端末(スマートフォンやウェアラブルデバイス)を持った人が近づくと、「音サインが近くにある」ことが知らされる。端末から操作すると、音サインの音声のうち聞き取りやすさを左右する周波数のみを強調することで聞き取りやすく変換された音声が再生される。

▼音声明瞭化技術(前半が適用無し・後半が適用あり)

また、近くに音サインが設置されていない場所でも、ビーコンを設置することで、端末から音声を再生することもできる。スピーカー再生と端末再生の使い分けや、わかりやすい案内の文言などについて、実証実験を通して検証する。

プロジェクションサイン

出国口や到着ロビーなどの人の滞留が発生しやすい場所に、状況に応じて混雑を回避するように人を誘導するサインを動的に表示する。また、従来は音声アナウンスが中心だった緊急案内などについても、プロジェクションサインを活用した視覚による案内の有効性を検証する。

サインの表示にあたっては、NTTが研究する「時空間多次元集合データ分析技術」により過去の人の動きのビッグデータから混雑具合を予測し、混雑が発生する前に先読みした表示を実現する。

▼デモンストレーションでは、混雑している中央セキュリティゲートウェイから比較的空いている北セキュリティゲートウェイに人を誘導するサインが表示された。なお、このサインは空港のチェックインカウンターの待機列から見上げられる位置にあり、「待っている間に自然に目を止めてもらえる場所」を選んだとのこと。
20151203-haneda-06

▼情報提示の表現についても検証する。この例では、「北からのほうが近い搭乗口」の情報を提示することで、自発的に北ゲートウェイへの移動が促せるという仮説を検証する。

TIAT案内誘導アプリ

LEDを高速点滅させることでスマートフォンに高速でIDを送信するパナソニックの「光ID技術」と、天井に設置した高指向性ビーコンで屋内でのナビゲーションをスムーズに行う「高指向性ビーコンを使用したナビゲーション」を組み合わせて、フロア案内図から店舗までのナビゲーションを行う。

▼光ID技術の概要

▼光ID対応したフロア案内図にスマートフォンをかざすと目的地一覧が表示される。言語はスマートフォンの言語設定に合わせて自動設定される。

▼ナビゲーションは、大きなエスカレーターなどの目につくランドマークを強調しており、顔を上げて施設内を歩くことができる。

▼ランドマークの位置まで来るとビーコンが感知して次のランドマークまでの道順を表示する。

フリーWi-Fiでプッシュ配信できるパッケージアプリも開発

今回実験する仕組みは、プロジェクションサイン以外はいずれも利用者が自分の端末に専用のアプリをインストールしたり、特定のウェブページに接続する必要がある。そのため、実用にあたっては、「アプリをインストールしてもらう」という壁をいかに越えるかが課題となる。

その点について東京国際空港ターミナルに確認したところ、2015年度中を目標に、これらのナビゲーション関連のアプリの機能を1つにパッケージしたアプリを開発し、空港のフリーWi-Fi接続時にプッシュ配信する仕組みを目指すとのことだ。同社によれば現在羽田国際線ターミナルを利用する訪日外国人のおよそ3割程度がフリーWi-Fiを利用しており、有効な対策となることが期待される。

 

【報道発表資料】
空港の情報ユニバーサルデザイン高度化の共同実験を開始 - 日本の玄関を起点とした世界最高のおもてなしに向けたショーケース -

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。