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Project Hecatoncheirメンバーが一般社団法人EDAC設立 救急救命へのドローン活用早期実現目指す

2016.01.19

Updated by Asako Itagaki on January 19, 2016, 15:57 pm JST

「ドローンで人命を救う」を掲げ活動してきたProject Hecatoncheir(以下ヘカトンケイル)は、一般社団法人救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(EDAC)を設立する。阪神淡路大震災から21年を迎えた1月17日、東京都内で記者説明会が行われた。

ヘカトンケイルはIoTによって「センサーによる心停止や災害などの緊急事態の自動覚知と通報」「ドローンを活用した迅速な現場視察や医療機器の運搬」を可能にする「都市の神経系」を確立することで救命連鎖をICTで補完するプロジェクト。2029年に舞台設定された近未来SF「攻殻機動隊」の世界観をリアルに実現する技術を探る「攻殻機動隊REALIZE PROJECT」神戸大会で優勝し、2月11日に開催される本戦進出を決めている。

▼災害・救急現場における救急隊の役割(上)とICTによる支援(下)

※プロジェクトの詳細はこちら
 「ドローンで命を救う」Project Hecatoncheirがスタート 2年以内の実用化目指す

「このままでは次の災害に間に合わない」現場と開発者のマッチングが必要

EDACの設立メンバーはヘカトンケイルのメンバーである小澤貴裕氏(国際医療福祉専門学校 ドローン有効活用研究所 主席研究員)、岡田竹広氏(株式会社魔法の大鍋)、大畑貴弘氏(株式会社リアルグローブ)、円城寺雄介氏(佐賀県庁)、沼田慎吉氏(臨床工学技士)、稲田悠樹氏(ドローン情報サイトDRATION運営)。の6名。法人代表にはヘカトンケイルの代表である小澤氏が就任する。法人設立の理由として小澤氏は、「9月にヘカトンケイルを立ち上げてから今まで活動してきたが、救急の現場である消防や行政と、ドローンを開発するメーカーの間に想像以上の壁があった」ことを挙げる。

▼EDAC代表 小沢貴裕氏
EDAC代表 小澤貴弘氏

「現場側はドローンの活用と言われてもそもそも無人機とは何かというところからわからないし、導入には訓練が必要でますますハードルが上がる。一方で開発側は現場の活動が分からないのでニーズが分からない。そもそも救急救命の現場は、患者の情報などセンシティブで秘匿性が高いため、基本的に情報を表に発信できない。その結果、いつまでたっても現場に即した商品開発ができない。災害はいつ起きるか分からないのに、今のプロジェクトの進捗速度では災害が起きるまでに(ビジョンが)実現できると思えない。こうした状況を解消するために、両者が交流できる場としてEDACを設立する」(小澤氏)

EDACはユーザーにあたる消防、医療、行政など(ユーザー会員)のニーズと、サプライヤーにあたるメーカー(メーカー会員)および研究者、個人などの強みのマッチングにより、新しいプロジェクトの立ち上げを支援する。ヘカトンケイルはEDACの中の1つのプロジェクトとして位置づける。

「ヘカトンケイルを立ち上げたことで、プロジェクトメンバーそれぞれに対してさまざまなオファーがきており、『同じことを考えている人が出会う場が必要だ』と感じた。業界全体として現場にアプローチすることで底上げをはからない限り、前には進めないと考えました」(小澤氏)「ドローンやICTで人命を救いたい」という志をもつ個人や組織が集まる場としての法人を設立することで投資や補助金による支援の受け皿とし、それぞれのプロジェクトを加速する。

2016年中にオープンソースのクラウドプラットフォームを公開、2年以内に偵察飛行を実用化

発表会では、これまでのプロジェクトの進捗状況についても報告された。

岡田氏が手がける国産フライトコントローラーについては、電源2系統でインターネットに接続できるものを現在開発中。偵察用小型ドローンについては、Raspberry Piなどを搭載してリアルタイムに3D情報を作成しながら飛ぶ室内用ドローンを開発中だ。どちらも個別技術については目処が立っており、2016年中には何らかの形でお披露目ができる予定とのことだ。

大畑氏がてがけるクラウドプラットフォーム「SUGOS」については、2015年12月に50kmの距離を隔てた現場にあるドローンをインターネット経由で操縦することに成功した。現在は通信の遅延に対する対策を中心にチューニングを行っている。この後、コマンド体系やAPIなどを整備し、EDACのオープンソースプラットフォームとして2016年中の公開を目指す。

▼2015年12月の遠隔操縦実験。Facetimeで状況確認しながらドローンを遠隔操作する。

また、長距離飛行用のドローン開発については、米国のSwift Engneering社からオファーがあり、航続距離50-100km、連続飛行時間2時間程度をめどに、現在開発を進めている。2016年5月頃には情報開示できる予定としている。

今後の予定としては、2年以内にクラウドプラットフォームを利用したドローン自動コントロールによる現場偵察の実用化を目指す。佐賀県庁の円城寺氏は「2020年のオリンピック以降は投資がシュリンクすることは予測できる。オリンピック村でドローンが飛び回っているぐらいまで達していないと、ヘカトンケイルの構想は絶対に実現できない。そのために、なんとしても2年以内の実用化を目指したい」と語った。

「個人的には救急救命は宇宙開発と同じぐらい難しいと思っている。5分後にやってくるかもしれない次の災害に向け、人と競争するのではなく、ありとあらゆる分野の人を集めて戦いたい。そのための法人化」と小澤氏は語る。会員募集の詳細についてはウェブサイトで今後案内する。ドローンによる救急救命のオープンプラットフォーム実現に向け、新たな挑戦が始まった。

【関連情報】
一般社団法人 救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(EDAC)
一般社団法人 EDAC(Facebookページ)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。