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受験シーズン

[2016年第3週]今春は「学割」が熱い! MVNOを安早で提供できるプラットフォーム

2016.01.19

Updated by Naohisa Iwamoto on January 19, 2016, 14:31 pm JST

本格的な携帯電話の春商戦を前に、今年も「学割のキャンペーン内容が3社から出揃った。基本使用料の割引よりも、若年層が多く利用する傾向にあるデータ量を増量する施策が目立つのが特徴だ。MVNOやIoTに関連するニュースも豊富な一週間だった。

学割がデータ量の増量合戦に

携帯電話サービスの「学割」の季節が始まった。今後、MNP時のキャッシュバックなどの強力な施策がしにくくなることを踏まえると、各社とも生徒・学生うちの最初の契約時に囲い込みたいわけだ。

まず、ソフトバンクは、SoftBankブランドで、「ギガ学割」を1月12日に発表した。25歳以下の利用者が、パケット定額サービスのデータ容量に100GB(実際は3GB×36カ月)が増量される特典を選択できるキャンペーン。ギガ学割では、データ容量増量の代わりに、ホワイトプランの月額基本使用料の1008円が3年間0円(「スマ放題」「スマ放題ライト」の場合は2年間毎月1620円割引)の割引特典も選択できる(報道発表資料:SoftBank、25歳以下のお客さまとご家族を対象とした「ギガ学割」を実施)。

同日、KDDIは、25歳以下で「データ定額5/8/10/13」を契約している利用者に、25歳までデータ容量(5GB)を毎月プレゼントする「2016年auの学割」を発表した。また、25歳以下の利用者とその家族を対象に、新規契約(MNP含む)時に「データ定額5/8/10/13」を契約すると、毎月のデータ定額料金から最大1年間1000円を割り引く施策も提供する。「LTEフラット」を契約した場合は、最大1年間934円を割り引く。新規またはMNPの場合は、データ容量増量と割引の双方が受けられるケースがあることになる(報道発表資料:2016年auの学割は「割って足す!」25歳までず〜っと、毎月5GBプレゼント さらに、学生も家族も1年間毎月1,000円割引!)。

KDDIが「5GB」をプレゼントするという発表を受けてソフトバンクは同日、「ギガ学割」の特典を変更する発表を行った。25歳以下の利用者へのデータ増量特典を毎月3GBから6GB(合計では100GBから200GB)へと拡大した。また、ギガ学割と同時に新規で契約した家族にも毎月3GBのデータ量を特典として提供する(報道発表資料:SoftBank、「ギガ学割」の特典を毎月3GBから6GBへ拡大! 合計200GBに!)。

これらを受けてNTTドコモは1月14日、25歳以下の利用者を対象とした「ドコモの学割」の実施を発表した。「ドコモの学割」は、「U25応援割」と併用することにより家族でわけあえるデータ量を36カ月の間、毎月合計で6GBプレゼントするとともに、基本使用料を12カ月、毎月合計で1300円割引くもの。ドコモのデータ量はシェアグループ内の家族でわけあうことができ、増量分のデータ量を家族でまとめて利用できる(報道発表資料:「ドコモの学割」を実施)。

さらにKDDIは1月18日「2016年 auの学割」の内容を変更すると発表した。データ定額サービス「LTEフラット」を契約した場合の割引を、最大1年間934円割引から最大3年間934円割引へと拡大し、ドコモの基本使用料12カ月間1300円割引に対抗した(報道発表資料:「今年は何かが違う」auの学割、LTEフラットの割引期間を最大1年間→最大3年間に拡大)。

学割を受ける利用者の年齢が低ければKDDIの25歳までずっとデータ量増量にメリットがあり、25歳までの期間が短い利用者でもドコモの学割は36カ月間(U25応援割は26歳の誕生月まで)受けられるメリットがある。シーズンごとに施策を変えて即効性を求める「学割」だけに、各社の考え方の違いが現れているようだ。

MVNOに低コストで参入、JRエキナカコンビニでSIM販売

MVNO関連のニュースをまとめる。MVNO構築事業者のレンジャーシステムズは、従来の10分の1程度の構築費用と3カ月程度のリードタイムでL2接続型MVNOサービスの開始を可能にする「レイヤ2接続型MVNOプラットフォームサービス わくわくモビリティ」の提供を開始する。

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レンジャーシステムズがMNOとの接続に必要な設備を各事業者に専有で貸し出す。回線帯域についてはMVNEから調達する。これにより、3000万円の初期投資と約3カ月のリードタイムでMVNOビジネスへの参入が可能となる(関連記事:初期投資3000万円でL2接続型MVNO事業参入を可能に レンジャーシステムズがサブスクリプション型プラットフォームを提供開始)。

訪日外国人などに向けてエキナカのコンビニでプリペイド型SIMを販売。インターネットイニシアティブは、訪日外国人や一時帰国者向けのモバイルデータ通信サービスとして提供しているプリペイド型のSIMカード入りパッケージ「Japan Travel SIM」を、JR東日本リテールネットが運営するエキナカのコンビニエンスストア「NewDays」の山手線沿線70店舗で販売する。「1GB(30日間)」が3000円、「2GB(3カ月)」が4000円(報道発表資料:IIJ、訪日外国人向けプリペイド型SIMカード「Japan Travel SIM」をJR東日本エリア駅構内のコンビニ「NewDays」にて販売開始)。

市場も拡大している。MM総研は、2015年度上期のSIMフリースマートフォン市場規模に関する調査結果を発表した。2015年9月末時点で、MVNO SIMを利用するスマートフォンの比率は全体の4.4%、SIMフリースマートフォンの出荷台数は66万8000台だった。

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いずれも増加傾向が続いており、SIMフリースマートフォンの市場での存在感が着実に高まっていることを数字からも裏付けた格好だ(関連記事:2015年9月末のMVNO SIM比率はスマホ契約の4.4%、SIMフリースマホ出荷は66万台超--MM総研)。

IoTを簡単に始められるサービス、汎用型電子おくすり手帳を提供

そのほかの一週間のトピックを紹介する。組込開発支援パッケージの開発・販売を手掛ける、アイ・エル・シーは、「IoT、M2Mシステム構築用スマート制御プラットフォームS/WパッケージSEP(Smart Embedded Platform)」の提供を開始した。モノとモノを簡単で安全につなぐことができる制御プラットフォームの提供により、利用する企業などが新しい付加価値を生み出せるようにする。特徴は、豊富なクラスライブラリの提供、通信を意識せずにモノとモノをつなぐ仕組みの提供、非力なマイコン搭載機器でも暗号化通信ができる仕組みの提供--の3点だ(報道発表資料:IoT、M2Mシステム構築用スマート制御プラットフォームを1月18日に提供開始  H/W、OS、通信の違いをこえ、 世界中のMachineとMachineをシームレスに接続可能)。

IoTの1つの形を具現化。ソニーは、スマートフォンから家電機器などを操作できるようにする「マルチファンクションライト」を開発した。専用のLEDシーリングライトと、コントロール機能などを備えたマルチファンクションユニットを組み合わせたもの。家電機器をスマートフォンから操作する機能のほか、スマートフォンとの間で会話ができる機能や、不在中に人の動きがあったときにメールで通知する防犯機能も搭載する。2016年度前半の商品化を目指す(関連記事:天井照明がスマホと家電を仲立ちして操作、ソニーがマルチファンクションライトを開発)。

スマートフォン利用のおくすり手帳が便利に。NTTドコモは、電子お薬手帳サービス「おくすり手帳Link」の提供を2016年3月に開始する。おくすり手帳Linkは、服薬指導に利用する薬局向けの「おくすり手帳Link」(薬局向けシステム)と、薬の効能や用法、容量などを確認できる利用者向けの「おくすり手帳Link」(対応アプリ)で構成する。ドコモではこれまでも、チェーン薬局向けにカスタマイズした電子お薬手帳を提供してきたが、今回は汎用的な電子おくすり手帳を提供することで、普及促進を目指す(報道発表資料:電子お薬手帳サービス「おくすり手帳Link」を提供)。

荷物のお届けも「LINE」がサポート。ヤマト運輸は、LINEが運営するコミュニケーションアプリ「LINE」を使って荷物の「お届け予定」や「ご不在連絡」などのメッセージを届ける新サービスを開始する。受け取ったLINEのメッセージからは、配達日時や場所の変更が可能になる。新サービスの提供に当たり、ヤマト運輸は「ヤマト運輸」LINE公式アカウントを開設する。1月19日から提供を始め、料金は無料(関連記事:宅急便の不在メッセージや再配達依頼をLINEで、ヤマト運輸が新サービス)。

KDDIが、2016年春モデルの新製品4モデルを発表。タブレット1機種、スマートフォン2機種、いわゆる「ガラホ」が1機種をラインアップに追加する。auのオリジナルブランド「Qua」(キュア)には、タブレットの第2弾となる「Qua tab 02」(ファーウェイ製)と、Quaシリーズ初のスマートフォン「Qua phone」(京セラ製)をラインアップした。

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スマートフォンのもう1機種はコンパクトタイプの「AQUOS SERIE mini SHV33」(シャープ製)。ガラホは「GRATINA 4G」(京セラ製)で、3Gケータイとして提供してきた「GRATINA」の4G LTEモデルである(関連記事:KDDI、auオリジナルブランド「Qua」2機種など2016年春モデル新製品として4モデル発表)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。