WirelessWire News The Technology and Ecosystem of the IoT.

by Category

そろそろシェリングエコノミーのダークサイドに目を向けるべきだ

Time to see the dark side of sharing economy

2016.02.06

Updated by Mayumi Tanimoto on February 6, 2016, 08:00 am UTC

このところ日本ではシェアリングエコノミーがバズワードと化しています。シェアリングエコノミーでは、自分の持っているものを他人とシェアすることでモノや場所を有効活用することが可能です。さらに、自分の持っているものや空き時間を活用して、他の人に自由にサービスを提供する機会を提供します。

しかし、シェアリングエコノミーの実態はそんなにバラ色に満ちたものでしょうか?

イギリスと大陸欧州はシェアリングエコノミーのサービスが日本より先行していますが、現地で実態を見ている限りは、そんなに良い話ばかりではないのではないか、と感じています。

まず、シェアリングエコノミーでお金を稼ぐことは、フェアではない場合があります。

例えば多くの国ではホテルや民宿に宿泊するお客さんは「ホテル税」を払います。訪問者が多い町ではこの税収は少なくなく、地元の観光インフラの強化や治安維持にとって大変重要な財源です。さらに、ホテルや民宿は事業税を払っています。

しかし今のところAirbnbの様なサイトで宿泊する人も、宿泊を提供する側もホテル税を払う必要はないし、事業税も支払いません。ほとんど同じ商売をやっているのに、他の人達が払った税金で作ったインフラにただ乗りしてもうけているだけです。この点で、シェアリングエコノミーの人々はフェアではありません。

アメリカ大都市ではAirbnbがホテル業界の脅威になっており、ホテル需要の5-8%を占めるほどに成長。需要サイドでは8-15%。ニューヨークシティでは8%の需要を占め、ホテル業界の損失は4.6%と言われています。ホテル業界の損失はイコール税金は入ってこない、ということです。Airbnbで訪問者が増えれば町の経済に貢献するとはいっても、はやりただ乗りは芳しくないでしょう。

その次に、シェアリングエコノミーは、「その辺の人」がお金を生み出したり、モノやサービスを有効活用する機会を作り出している、と言われていますが、単に価格が安くて質の劣るサービスを提供する土壌になっているにすぎない、という側面もあります。

例えばBritish Hospitality Association (BHA)のCEOがイギリス国会におけるヒアリングで、イギリスにおいてAirbnbで部屋を貸すオーナーの40%はプロの不動産屋や大家であり、そのほとんどは、自宅の一部ではなく投資用のマンションや家を消費者にそのまま貸しており、もはや部屋のシェアサイトではなく、「ホテルのレベルに達しないチープな部屋を客に貸すサイト」と化していると述べています

こういうプロ大家の貸す物件は、当然、ホテルであれば従わなければならない安全衛生基準には沿っていないので、初期コストも運用コストも安くなります。

しかし、Airbnbで提供される部屋はホテルよりも安いとはいえず、ロンドンの場合は、Airbnbで賃貸に出ている部屋のほうが値段が高い、という現象が起こっています。

例えば調査会社であるSTR Globalが、2015年9月にロンドンのホテルとAirbnbの掲載物件を調査したところ、Airbnbに掲載されている物件の価格はホテルよりも高いということがわかりました。Airbnbのシェアはロンドンのホテルの8%ほどですが、価格のパターンは普通のホテルとほぼ変わらない上、50ポンド以下の物件はたった3%以下と決して安くはないことがわかっています。

これはUberに関しても同じです。ロンドンの場合、法定のタクシーであるブラックキャブとミニキャブは法令に従わなければなりません。特にブラックキャブの場合は、ドライバーになるための審査は厳しく、ロンドン市内のありとあらゆる道を暗記しなければならない「the knowledge」という試験に合格しなければなりません。もちろん、犯罪歴や事故歴のチェックもありますし、法定の休息時間を取る必要もあります。

ところがUberの場合は、ドライバーの犯罪歴や事故歴のチェックはない上、十分な休息を取っていない人でも何時間も運転可能です。EU出身者の場合は、母国で犯罪歴があってもイギリスに入国できてしまうこともあるので、バックグラウンドのチェックが不可能です。

さらに英語がわからなくてもドライバーになることができるので、交通ルールを理解していないドライバーに当たるという可能性もあります。EUの運転免許がここでも通用するからです。

タクシー会社が負担する安全管理や品質保持のコストは全てドライバーの「自己責任」なので、ブラックキャブやミニキャブよりは安価ですが、安全性は保証されません。ブラックキャブのドライバーのように、通りの名前をいうだけで一発で目的地に行ってくれることも期待できません。

シェアリングエコノミーの信奉者は、世の中の規制は全て悪だという見方をしますが、Uberのドライバーに怒鳴られたくないなら、規制には良い規制と悪い規制があることを理解するべきでしょう。

 

 

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

RELATED TAG