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[MWC2016]AT&Tの物流管理IoTソリューション、ユーピーアールと提携して国内で提供へ

2016.02.23

Updated by Naohisa Iwamoto on February 23, 2016, 06:10 am JST

スペイン・バルセロナで開催中のMobile World Congress 2016(MWC2016)の開催に合わせ、AT&TのIoTソリューションを日本国内でも利用しやすくするサービスの提供が発表された。AT&Tと国内大手物流管理会社のユーピーアール(UPR)が提携し、物流管理IoTのサービスを提供するというもの。国内外でのシームレスな物流管理に、AT&TのIoT技術を活用できるようになる。

▼AT&TがMWC2016で展示している「AT&T Cargo View with FlightSafe」のデモ。右端の白いボックスがセンサーで、専用の管理画面でセンサーの情報を表示する20160222_att001

具体的には、AT&Tが2014年8月に米国で提供を開始した物流管理IoTソリューション「AT&T Cargo View with FlightSafe」(以下Cargo View)と、UPRが提供している物流管理ソリューション「World Keeper」を連携させて利用できるようにする。Cargo Viewは、手のひらに乗るほどのサイズの専用センサーを貨物に同梱して利用するソリューション。センサーが、輸送中の位置、温度、湿度、気圧、照度、衝撃・振動をリアルタイムに監視し、異常が起きたときには即座に荷主や物流会社などのサービス利用者に通知する。温度センサーや気圧センサーにより食品や医薬品などの輸送時に温度や気圧が一定の範囲にあるかをモニターしたり、貴重品の輸送時に照度センサーで予定外のコンテナの開閉による盗難を監視したりするなどの利用法がある。

AT&Tと連携してサービスを提供するUPRは、これまで自社の専用センサーを使ったWorld Keeperを提供してきた。World Keeperは位置、温度、衝撃・振動をセンサーで捉え、リアルタイムにダッシュボード上に表示したり、一定の範囲を超えると警告したりするサービスだ。ただし、「日本の企業も国際化が進み、荷物を飛行機で運ぶケースが増えてきた。その際、飛行機の離着陸と飛行中はセンサーが通信する電波を止める必要がある。従来のWorld Keeperでは空港で人手により電波をオフにしなければならず、利用の妨げになっていた」(UPR IT事業統括本部 IT営業部部長の袴田真一氏)。

▼バルセロナでのCargo Viewのセンサーの移動情報をWorld Keeperで地図上に表示。その際の温度や振動などの情報が確認できるほか、グラフで時系列情報を表示することもできる20160222_att002

AT&TのCargo Viewには、飛行機の離着陸、飛行中に発信が許されていない電波を自動的に停止する「Flight Safe」機能が用意されている。「位置や気圧(高度)、離着陸のための衝撃などの情報を使って、自動的な制御が可能。国際的に定められたガイドラインに適合するよう飛行機の離陸時に自動的に電波をオフにし、着陸後にオンにする機能を提供する」(AT&T AVP IoT Strategy & Product ManagementのMobeen Khan氏)。UPRが求めていた機能がCargo Viewにあった一方、AT&Tにとっても日本はCargo Viewの展開で攻めあぐねていた市場だった。Cargo Viewが提供するユーザーインタフェースは英語で、詳細の条件設定などの仕方も日本の利用者にはわかりにくい点があったという。両者の利害が一致し、提携して日本向けにサービスを提供することになった。

▼飛行機による輸送の際の課題を解決できるCargo Viewの採用で、World Keeperでは国際物流でも位置をはじめとするセンサー情報をリアルタイムに管理できるようになる。地図上に示されている飛行中の位置は離着陸の地点を結んだ予測図20160222_att03

実際の連携の仕方としては、Cargo ViewとWorld Keeperのサーバーの間をAPIで連携する形態を採る。Cargo Viewのセンサーで取得した情報はCargo Viewのサーバーでデータ処理され、APIを介してWorld Keeperのサーバーに転送される。日本の利用者にとって使い勝手の良い日本語のWorld Keeperのユーザーインタフェースによって、Cargo Viewのデータを表示できる。AT&Tのグローバルなローミングネットワークにより、世界の広い国や地域への物流管理ができることも、提携の成果として挙げられる。

UPRでは、まず海外への物流を管理したい国内企業に向けて新サービスを展開する計画だ。さらにUPRが物流サービスの拠点を構えるシンガポール、タイ、マレーシアを核として、アジアにCargo ViewとWorld Keeperの連携サービスを拡販していく考えだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。