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成長著しい東南アジアEC市場で負けた楽天、Rakumaで挽回できるか

2016.03.02

Updated by Hitoshi Sato on March 2, 2016, 06:17 am JST

楽天は2016年2月に発表した「Vision 2020」の中で、東南アジアにおけるビジネスモデルを見直していくことを明らかにした。

インドネシア、シンガポール、マレーシアの「マーケットプレイス」、いわゆるオンラインストアは閉鎖する。楽天はシンガポールで「Rakuten.com.sg」、インドネシアで「Rakuten Belanja Online」、マレーシアで「Rakuten.com.my」を運営している。また楽天が2009年に買収したタイの「Tarad.com」は売却する。シンガポールのオンラインストアは2016年3月1日に閉鎖。インドネシアとマレーシアは3月末で閉鎖する。

オンラインストアを閉鎖するのに代わって、C2Cモバイルアプリの「Rakuma」を展開していく予定である。さらにインドネシア、シンガポール、マレーシアの現地スタッフ150人が解雇されると報じられている。

競争激しいインドネシアのEC市場

「各国の市場に合わせてC2Cモバイルアプリの方が適切」とのことだが、東南アジア各国にも日本の楽天と同様のプラットフォーム型のECサービスは存在している。

例えばインドネシアではeコマースが急速に伸びている。インドネシア人なら誰もが知っている「Tokopedia」の他にも「BeliBeli.com」や「Lazada」、「Supermarket Online」などECサイトはたくさんあり、インドネシア人は大好きである。日本では楽天のライバルはアマゾンやヤフーであり、この3強が日本のEC市場を席巻しているが、インドネシアでは楽天はローカルのECサイトに負けた。

日本で楽天を利用している人の多くは、楽天カードを利用してポイントを溜めているから楽天を利用しようというモチベーションがある人だろうが、インドネシア人にはそのようなモチベーションがない。それに、楽天にしか扱ってない商品はそれほど多くない。

インドネシアでは現地で大人気のJKT48のグッズを楽天限定で扱っていたこともあり、2012年にはJKT48を楽天の広告に起用したこともあるが、その限定グッズを購入するファンは一部に限られている。そして彼らも限定商品は楽天で購入するが、日常のECはTokopediaを利用する人が多い。

インドネシア政府は、インドネシアでECを推進していくために、政府省庁を横断した31項目にわたる規定を記したロードマップを2016年1月末に策定した。そこにはECに関する税金、消費者保護、通信インフラ、資金の確保、教育、人材育成、ロジスティックスなどが含まれている。インドネシアのEC産業は、2020年までには1,300億ドルに上ると予測されており、これからも大きな成長が期待されており、それだけに非常に競争が激しい。

C2Cモバイルアプリなら成功するのか?

楽天の事業は日本で成功しているが、海外でそのまま通用するほど甘くない。現にオンラインストアは東南アジアでは軒並み失敗している。C2Cモバイルアプリになったからといって成功するとは限らない。

東南アジアでも、従来のようなマーケットプレイスの提供による「プラットフォーム型」のECだけでなく、消費者間同士の取引を行うC2Cも同様に競争が激しい。それはインドネシアだけでなくシンガポールでもマレーシアでもタイでも同じであろう。

「マーケットプレイス」、いわゆるオンラインストアからC2Cモバイルアプリ「Rakuma」に事業転換をしたところで、そもそもマーケットプレイス型で勝てなかった楽天に優位性があるのだろうか。それでも楽天には東南アジア市場で頑張ってもらいたい。

【参照情報】
楽天株式会社: 決算短信・説明会資料 2015年度
Important announcement from Rakuten Singapore
Rakuten to close Singapore, Malaysia, Indonesia marketplaces, lay off about 150 staff
Finally, Indonesia draws up e-commerce roadmap

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。