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「テレワーク」想定してWebExとCWSを導入しやすく、シスコが中堅中小企業向け新戦略発表

2016.04.07

Updated by Asako Itagaki on April 7, 2016, 11:05 am JST

20160407-cisco-start-1シスコシステムズ(以下シスコ)は2015年秋に発売した中堅・中小企業向けブランド「Cisco Start」について、新たな取組を発表した。4月6日に開催された説明会では、同社専務執行役員パートナー事業統括の高橋慎介氏(写真右)より、日本市場向けの機能拡充、クラウドサービスの追加としてWeb会議システムCisco WebEx(以下WebEx)とCiscoクラウドWebセキュリティ(以下CWS)の提供、パートナー向け施策としてユーザーが最寄りの販売代理店に見積を依頼できる「Cisco SMBマーケットプレイス」の立ち上げについて紹介された。

WebExの特別価格提供とCWSのライセンス体系見直しで中小企業にも導入しやすく

日本市場向け機能拡充としては、Cisco 841ルーターの日本語GUIに、アプリケーションの可視化・ブロック機能を搭載する。非業務アプリケーションの可視化による業務効率の向上やShadow ITの検知によるセキュリティ向上をはかる。

今回発表した取り組みの目玉ともいえるのが、ハードウェアとのバンドルでWebExのキャンペーン特別価格提供と、ルーターとセットで販売するCWSのライセンス体系見直しだ。ユースケースとして「テレワーク」を想定し、2つのソリューションを「中堅中小企業の働き方変革を進めるには必須のソリューション」(高橋氏)と位置づける。

WebExはCisco Startシリーズのハードウェアとセットで1ライセンス25ユーザー年額37,900円(最低2ライセンス(75,800円)から販売)となる。「ルーターは不要だというお客様が、セットで購入していただいてWebExだけご利用いただいてもお得になる価格」(高橋氏)と訴求する。

CWSについては、中堅中小企業向けに、25ライセンスから提供する小ライセンス体系を新設した。価格は1ユーザーあたり年額3,980円。有害サイトのフィルタリングやポリシー管理に基づくアクセス制限など、従来エンタープライズ向けにセキュリティアプライアンスで提供していた機能をクラウドで提供する。設定はWebベースのGUIで簡単に行える。

「お客様の買い方の変化に対応した」SMBマーケットプレイス

新規に立ち上げを発表したSMBマーケットプレイスは、販売パートナーとの共同マーケティングの場として位置づけ、ユーザーとパートナーの接点を増やすための施策。その背景には、顧客の購買行動が変化しており、「購買決定前のネットでの情報収集プロセスにリーチすること」の重要性が増していることがある。

マーケットプレイスといえば、商品をカートに入れ決済して購入が完了するのが一般的だが、SMBマーケットプレイスでは商品をカートに入れた後、販売パートナーを選択すると、販売パートナーからの見積が届く。Cisco Start製品の情報収集から販売パートナーへのコンタクトまでワンストップで行える仕組みだ。

販売パートナーは、見積依頼のあったユーザーからヒアリングしてシスコ以外の製品も合わせて提案することが可能。また、シスコと競合しない範囲であれば自社のプロモーションをSMBマーケットプレイス上で行うこともできる。シスコは、SMBマーケットプレイスへの動線をサポートするために、WebEx、CWSのライセンス30日間無料の限定キャンペーンを実施する。

地方キャラバンに迅速なリカバリーショット、今度こそ中堅中小企業市場に本気のシスコを見せる

2015年9月に市場投入したCisco Startシリーズは、「何度かトライしたがこれまでシェアをとれなかった中堅中小企業市場に対し、不退転の決意で投入した」(高橋氏)というラインナップ。「シンプル」「スマート」「セキュア」を特徴に、ルーター、スイッチ、アクセスポイント、セキュリティアプライアンスをシリーズとして提供する。この日の発表会では、半年間の成果についても説明された。

販売開始直後の10月と比較すると、販売パートナーの数は60社から935社に増加。うち600社はこれまでほとんど取引がなく、Cisco Startによって新たな販売チャネルを獲得したことがうかがえる。また、販売支援体制として、全国10拠点での説明会の実施。「本気を見せる」(高橋氏)ために、ソーシャルリスニングによるユーザーニーズの組み上げと米国本社まで巻き込んでの迅速なリカバリーショットにより評判を上げてきた。

中堅中小企業のネットワークについては、OA機器を納入している販売代理店ががこれまで必要に応じてルーター、無線アクセスポイントなどを順次追加しているケースが多く、古い機器がボトルネックとなりネットワーク品質が低くなり、また販売代理店にとってもサポート負荷が高くなっていた。

「大企業でも中小企業でもネットワークインフラに求められるものは同じはずだが、中堅中小企業のネットワークはこれまで場当たり的にその時必要な機器を追加していくことが多く、パートナーから見てもサポート負荷が高かった。Startシリーズでは1つのアーキテクチャにもとづき全てを一気通貫で提案できることを販売パートナー様からは高く評価された」(高橋氏)彼らがシスコの販売パートナーとなってユーザーのつぎはぎなネットワークをリプレイスすることにより、ネットワーク品質が向上し、販売パートナーにとってもサポート負荷の低減と新たな提案の幅が広がるとしている。

また、「テレワーク」というシナリオについては、「(ネットワーク上のセキュリティを強化するだけではなく)中堅中小企業を働きやすく環境整備することで人材流出を防ぐことが、情報漏えいリスクの低減につながる」という考え方を示した。簡単・安全にテレワークができるユーザーガイドを販売パートナーに提供して、販売促進をはかる。

【報道発表資料】
シスコ、中小企業向けブランド「Cisco Start」の新たな取り組みを発表

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。