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[2016年第17週]対話ロボットづくりが手軽に、IoT施策続々、中古端末には抵抗感あり

2016.04.26

Updated by Naohisa Iwamoto on April 26, 2016, 17:20 pm JST

対話ができるロボットを手軽に作れるサービスやモノづくりの最適化プラットフォームの構築、地域の社会課題の解決など、ICTの新しいアプリケーションの話題が相次いだ。またIoTの導入を低コストかつ短期間に進められるプラットフォームのニュースも重なった。平成28年熊本地震の被災地に向けて遠隔健康相談サービスを提供するニュースもあった。

対話ロボットからモノづくり、社会課題解決まで、ICTが支援

まず、ICTのアプリケーションの広がりを感じるトピックから見ていこう。NTTドコモとインターメディアプラニング(IPI)は、ドコモの「自然対話プラットフォーム」を活用して、自動で対話ができるロボットを簡単に作れるサービス「Repl-AI(レプルエーアイ)」を共同開発し、IPIがトライアル提供を開始した。サービス提供者は、GUIで対話の流れや文章を編集可能で、GUIで作成したボットはクラウド上に保存され、プログラミング技術がなくても簡単に対話サービスの提供が可能になるという。サービスは6月末までトライアル提供する。提供期間中に得られたフィードバックを基に改善した上で、7月から月額数千円〜1万円程度の料金で商用提供を予定している(情報サイト:Repl-AI)。

モノづくりへのICTの適用としては、ファナックが、シスコシステムズ、Rockwell Automation、Preferred Networks(以下PFN)と協業して、「モノづくり」最適化プラットフォーム「FIELD system」(FANUC Intelligent Edge Link and Drive、以下FIELD)を開発すると発表している。

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ファナックのオートメーションシステムで使用されるCNC、ロボット、センサーなどからデータを吸い上げ、機械学習機能とディープラーニングも含めた高度な分析機能によって、予防保全や制御にフィードバックすることで、設備効率、生産高、品質を向上するソリューションを構築する(関連記事:ファナック、IoTで製造業の高度自動化を実現する「FIELD system」を発表)。

神戸市とNTTドコモは、ICTやデータの活用に関して事業連携の協定を締結すると発表した。地域のさまざまな社会課題の解決を目的とした事業連携である。締結するのは「ICT及びデータ活用に関する事業連携協定」。

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協定の具体的な内容としては、(1)先進的データ活用サービスの実証、(2)庁舎内向けデータ活用の啓発活動の実施、(3)ICTを利活用できる地域人材の育成--の3項目を挙げている(関連記事:神戸市とドコモが連携、子どもや高齢者の見守りなどICTとデータ活用で社会課題解決へ)。

IoTを簡単に活用するための施策が続々

IoT関連の動きも活発だ。KDDIは、IoT市場の拡大に備えた技術支援サイト「au OPEN DEVICE DEVELOPER SITE」を開設した。デバイスメーカーや開発者が主な対象で、KDDIのネットワーク接続に必要な情報から実際の接続試験の申し込み情報までを一元化して提供する。KDDIではこの技術支援サイトにより、検証体制がないデバイスメーカーや開発者に向けて、新しい製品や技術開発に関する情報を提供することでIoT デバイスの開発をサポートしていきたいという(関連記事:KDDI、IoT開発者向け技術支援サイト「au OPEN DEVICE DEVELOPER SITE」を開設)。

日立情報通信エンジニアリングは、IoT機能を統合して提供するクラウド型サービスの「スマートIoTサービス」を提供する。IoTやM2Mのシステムの早期導入や、データ収集・利活用による新しい価値の創出を支援する。顧客にはクラウド環境を提供するほか、システムの構築・保守、モバイル回線によるデータ収集、メールや電話などを使った警報の通知、収集データのレポーティングといったサービスを用意する(関連記事:IoT機能を統合しクラウドで提供する「スマートIoTサービス」、日立情報通信エンジニアリングが提供)。

組込み機器向けのソフト開発などを手掛けるユビキタスは、IoTサービスの開発を短期間で実現できるようにするための「IoT開発キット」を5月20日に提供する。IoTサービス開発用の組込みソフト、クラウドプラットフォーム、Webアプリケーションをセットにして提供することで、サービス開発を効率化できるという(関連記事:ユビキタス、組み込みソフトからクラウドまでセットで提供する「IoT開発キット」)。

被災地ではスマホで健康相談も、中古端末には女性のほうが「抵抗感」

そのほか、この週のトピックを見ていく。オプティムとMRTは、平成28年熊本地震の支援を目的として、無償で医師に遠隔健康相談ができる「ポケットドクター for 震災支援版」を被災者向けに提供する。ポケットドクターは、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル機器などを活用して、医療を必要としている人々と遠隔地にいる医療の専門家をつなぐサービス。

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スマートフォンのカメラを利用して相談者の顔色や幹部の状況確認や、ウェアラブル機器で収集されたバイタルデータの確認により、より具体的なアドバイスや診療が行える(関連記事:オプティムとMRT、「ポケットドクター for 震災支援版」で医師による遠隔健康相談を無償提供)。

MMD研究所は、15歳以上の男女2213人を対象に「2016年中古端末に関する購買動向調査」を実施致した。それによると、中古端末の利用率は2.7%。内訳は、「中古で購入したAndroidスマートフォン」が1.3%、「中古で購入したiPhone」が0.7%、「中古で購入したフィーチャーフォン」が0.5%、「中古で購入したその他のスマートフォン」が0.2%だった。中古端末への抵抗感については、回答者の8割弱が「抵抗あり」としたが、女性のほうがより抵抗感が強い結果だった。今後の中古端末の購入意向は約1割だが、格安SIM利用者に限ると16.0%が「購入意向あり」と回答し、格安SIMと中古端末の組み合わせの市場が拡大する可能性を示唆している(報道発表資料:中古端末の利用率は2.7%)。

ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)は、モバイル高速データ通信サービス「DTI SIM」で、通信速度制限の緩和と、データ容量繰り越しサービスの追加を発表した。通信制限に当たる連続する3日間の合計のデータ通信容量は、契約プランが1GBの場合366MBが700MBに、3GBの場合は1GBが2GBに、5GB/10GBの場合は1GBが3GBへとそれぞれ拡大する。4月29日から対象者は自動的に適用になる。また、使い切れなかったデータ容量は、契約プランの容量まで翌月に繰り越すことができるようになる。繰り越しは4月利用分から適用される(報道発表資料:「DTI SIM」、“通信速度制限の緩和※1”と“データ容量繰り越しサービス※2”を追加
)。

日本通信は、ヨーロッパの事業会社であるJCI Europe Communications(以下、JCIヨーロッパ)がアイルランドに設立されたと発表した。ヨーロッパに事業会社を構えることで、ヨーロッパで携帯電話事業者のとの相互接続が可能になる。これまでに米国で金融向けのモバイル専用線サービスを提供しているが、ヨーロッパに拠点を置くことで、セキュアなモバイル接続を可能にするサービスのグローバル提供を推進する(関連記事:日本通信、ヨーロッパに現地法人を設立、モバイル専用線網のグローバル展開に布石)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。