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一週間

[2016年第29週]ソフトバンクのARM買収劇、2枚SIMで同時待ち受けできるSIMフリースマホ

2016.07.20

Updated by Naohisa Iwamoto on July 20, 2016, 13:55 pm JST

ソフトバンクが大手チップメーカーの英ARMを234億ポンド(320億ドル)で買収することで両社が合意に達したというニュースが海の日を含む3連休となった週末に飛び込んできた。このほか、IoT関連ではソフトバンクが米社と共同で会社設立を行ったニュースや、SORACOMのサービス拡充のニュースに注目したい。ビッグローブが3GとLTEの2枚のSIMを挿して同時待ち受け出来る新端末を発売するというトピックもあった。

ARM買収でIoTへのパラダイムシフトに対応

ソフトバンクグループの孫正義代表取締役社長は、ロンドンでARM買収提案に関する説明会を実施した。

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ARM買収の狙いを、「今までソフトバンクはパラダイムシフトの入り口で大きな投資をしてきた。今、モバイルインターネットの次のパラダイムシフトがIoTだと考えているから」だと説明した。今後、自動車には多数のARMベースのチップが入ることになる。また家庭内でもIoT化されることであらゆるものがインターネットにつながるようになる。セキュリティが重要になるが、ARMはTrust Zoneというテクノロジーを持っており、ありとあらゆるIoTデバイスを安全につなぐためにますます重要になる。孫社長は「ARMは情報革命のコア中のコアになっている」という表現でその重要性を語った(関連記事:ソフトバンク 孫社長、ARM買収提案についての記者説明会を開催 「パラダイムシフトの入り口で大きな投資をしてきた」)。

ARM買収の発表に先駆け、ソフトバンクは米Aeris Communications(エリアス)と共同出資で企業のIoTやテレマティクスの利活用、サービスの構築を支援する新会社「Aeris Japan」を設立したことをアナウンスしている。「IoTワンストップサービス」プラットフォーム、テレマティクスサービス、IoTソリューションサービスの提供を予定する。今後、両社が持つIoT分野のテクノロジーやビジネス基盤をベースにして、IoTの利活用ニーズの多様化、高度化に対応するサービスを共同開発し、主に日本の企業向けに提供していく(報道発表資料:ソフトバンクと米Aeris社、IoTやテレマティクスのサービスプラットフォームを提供する合弁会社を設立)。

従来型の通信事業でも手をこまねいてはいない。ソフトバンクとレノボ・ジャパン、日本マイクロソフトは、SoftBankブランドの新製品としてWindows 10 MobileをOSに採用した「SoftBank 503LV」(レノボ製)の開発を発表している。法人向けの製品で、10月下旬以降の発売を予定している。ビジネスでの利用を想定し、マイクロソフトが提供する各種のビジネス向け機能に対応している。またスマートフォンをテレビやモニターに接続することでパソコン向けのWindowsと同等のユーザーインタフェースに切り替わる「Continuum」機能を搭載する(関連記事:ソフトバンク初のWindows 10 Mobileスマホ「SoftBank 503LV」、法人向けに10月以降発売
)。

IoTのグローバル対応からメイカーズ対応まで

IoTの本格導入に向けたサービスやソリューションの話題は事欠かない。ソラコムは自社カンファレンス「SORACOM Conference “Discovery”」を開催し、ネットワークセキュリティを強化する2つのサービスが発表した。1つは「SORACOM Door」で、VPN経由でSORAOM Airで接続されたデバイスからユーザーのシステムへの接続を可能にするサービス。

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もう1つは「SORACOM Gate」で、SORACOM Canal、SORACOM Direct、SORACOM Doorで接続されたシステムとSORACOM Airで接続されたデバイスを仮想的なLANとみなしてプライベートアドレスで接続するサービスである。また、SORACOMの全てのサービスがグローバルで利用可能となることもアナウンスした。「SORACOM Air」 グローバル対応 SIMで、120以上の国と地域でSORACOM Airによる接続とその他全てのサービスが利用できるようになる(関連記事:SORACOM、120カ国以上でのグローバル展開やネットワークセキュリティを強化する新サービスを発表)。

この発表に先立ち、ソラコムは同社のIoT通信プラットフォーム「SORACOM」のパートナープログラムにColtテクノロジーサービス(以下、Colt)を認定したと発表した。Coltは、SORACOMによるIoTシステム構築時に、インターネットを介さないイーサネットサービスを提供する。今回のパートナーシップにより、グローバルでのネットワーク接続実績を持つColtのetherXENをSORACOM導入企業が活用しやすくなり、グローバルでのIoTシステムの構築の際のネットワークの選択肢を広げることになる(関連記事:ソラコム、SORACOMのパートナーとしてColtのイーサネットサービスを認定)。

メイカーズなどがIoTデバイスを手軽に作成して新しいサービスなどを生み出せるようにする動きもあった。マクニカは、IDCフロンティアと協力してIoT自作デバイスキットの「myThingsをはじめようキット konashi Edition」の提供を開始した。「myThingsをはじめようキット konashi Edition」を使って自作したIoTツールは、IoTデバイスやWebアプリを組み合わせて利用できるようにするスマートフォンアプリ「myThings」(提供はヤフー)と連携して、新しい便利な使い方を創りだすことができる(関連記事:メイカーズ向けにIoTデバイスの自作キット、マクニカが提供開始)。

新端末や新サービスで地歩を固めるMVNO

MVNOの話題もあった。1つは、ビッグローブがSIMを2枚挿して同時に待ち受けできるSIMフリースマホを発売するというニュース。高速モバイル通信サービス「BIGLOBE SIM」とスマートフォンを組み合わせた“BIGLOBEスマホ”の新端末「Moto G4 Plus」(Motorola製)を、7月下旬に提供開始する。BIGLOBEスマホで初めて3GとLTEを同時に待受けできる、1台の端末で個人用と会社用などの2つの電話番号の使用や、通話とデータ通信でSIMの使い分けが可能になる。端末スペックとしては、Android 6.0を搭載、指紋センサーや急速充電にも対応する(報道発表資料:BIGLOBEが、3GとLTEの同時待ち受けに対応した、Motorola製スマートフォン「Moto G4 Plus」の取扱いを開始)。

インバウンド需要への対応も進む。インターネットイニシアティブ(IIJ)は、訪日外国人や一時帰国者向けに提供しているプリペイド型SIMカード入りパッケージ「Japan Travel SIM」を、台湾のコンビニエンスストアで販売する。販売するのは、台湾最大のコンビニエンスストアである台湾セブンイレブンの全店舗(5045店、2016年4月末時点)。台湾からの訪日外国人旅行者数は、中国、韓国に次ぐ3位で、2015年は前年比で約3割増の367万人と過去最高を記録しており、現地のコンビニに販路を拡大することで利便性を高める(報道発表資料:IIJ、訪日外国人向けプリペイド型SIMカード「Japan Travel SIM」を台湾セブンイレブンにて販売開始)。

MVNOのサービスに関する調査結果の発表もあった。MMD研究所は「2016年7月格安SIMサービスの利用者満足度調査」を実施し、その結果を発表した。格安SIMの利用率の上位8サービスのユーザーを対象としたもので、利用者満足度は約70%に上った。一方、「やや不満」「不満」を合計した否定的な回答は7.0%にとどまった。格安SIM利用者に、通信速度の遅さにストレスを感じるかを尋ねた結果は、「よくストレスを感じる」(15.9%)、「たまにストレスを感じる」(48.7%)の合計が64.6%となった(関連記事:格安SIMの満足度は約70%、一方で6割が通信速度でストレス--MMD研究所)。

AI技術でソリューションやサービス提供、5Gなどのテスト機器に新モデル

このほかのトピックを紹介する。ディー・エヌ・エー(DeNA)とPreferred Networks(PFN)は、ディープラーニングや高度な機械学習などの最先端AI技術を活用した企業向けソリューションおよび消費者向け商品・サービス等の提供を目的とした合弁会社を設立する。

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新会社であるPFDeNAでは、DeNAのインターネットサービスを通して蓄積したデータや複数事業領域での経験と、PFNのAI技術を組み合わせることでDeNAおよび顧客企業が持つデータ価値の最大化を図る(関連記事:DeNAとPFN、AI技術活用の企業向けソリューション活用に向け合弁会社を設立)。

日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は、RF設計/テストに用いるベクトル信号トランシーバー(VST)の第2世代製品となる「NI PXIe-5840」を発表した。既存製品の5倍の帯域幅である1GHzの計測帯域幅に対応するなど性能を向上。さらに、モジュールのサイズを小型化することで、シャーシ1台で8×8 MIMOのテストを行うことができるようになった(関連記事:日本NI、1GHz帯域幅に対応し5G対応機器などの計測が可能なベクトル信号トランシーバー)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。