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プロセラネットワークス CTO アレキサンダー・ハバング

もしもあなたが、オペレーターのCEOだったら──モニタリングから始まるゼロ・レーティングサービス(パケット料金無料化)の立案と改善とは

2016.08.09

Updated by 特集:トラフィック可視化で変わるネットワークの姿 on August 9, 2016, 17:16 pm JST Sponsored by プロセラネットワークス ジャパン

もしもあなたがオペレーターのCEOだったら──INTEROP TOKYO 2016の会場で、プロセラネットワークス CTOのアレキサンダー・ハバングは問いかけました。今回は、ハバングと一緒に、オペレーターの新たなビジネスプラン立案と投資の意思決定にプロセラネットワークスの製品がどのように役立つのかを見ていきます。

プロセラネットワークス CTO アレキサンダー・ハバング

ライバルが始めたサービスが好評で、顧客が乗り換えている!

ハバング:想像してみてください。あなたはオペレーターのCEOです。ライバルが、ある特定の音楽のストリーミングについて、ゼロ・レーティングのサービスを開始しました。そのストリーミングサービスがとても人気があり、自社の顧客が何千人と乗り換えています。さて、あなたは何をすべきでしょうか?

価格を下げるのもアイデアですが、収入が減るわけですから、安易には実施できません。まずチームメンバーをあつめて、競合会社に勝つためのプログラムを立ち上げなくてはいけませんね。そのプログラムは多くの加入者が利用したくなるような魅力的なものでなくてはいけないし、ネットワークも人気があるサービスを提供できるだけのキャパシティが必要です。

まず最初にすべきことは、今の顧客がいつ、どのようなアプリケーションを使用しているのかを明らかにすることです。

菅野:プロセラネットワークスの「インサイト」というソリューションでは、アプリケーションの利用状況の可視化を行います。具体的には、アプリケーションごとにトラフィックに占める割合を算出します。

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ハバング:さて、インサイトを見ていると、あなたのネットワークの加入者の特徴として、ビデオストリーミングの利用が多いことが分かりました。加入者の流出を食い止め、新たな加入者を獲得するためには、ビデオストリーミングに対して、ゼロ・レーティングのサービスを提供するのは良いアイデアかもしれませんね。

しかし一つ問題がありました。ビデオストリーミングの特徴として、ピークタイムにかなりのトラフィックを使用します。インサイトでも、Youtubeがピークタイムのトラフィックのほとんどを占めていることが明らかになりました。時間ごとに見ていくと、かなり逼迫した状況も見えています。

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はたして、本当にビデオストリーミングサービスをゼロ・レーティングで提供してもネットワークは耐えられるでしょうか。

菅野:現在の状況の確認には、以前ご紹介したSCORE CARDを使います。アプリケーションの種類別に、AからFまでの6段階で加入者が体験している品質を分かりやすく可視化するソリューションです。

ハバング:SCORE CARDで確認したところ、現在、あなたのネットワークはビデオサービスで「A」評価となっていました。

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ゼロ・レーティングサービスを提供してもこの評価を落とさないよう、事前にシミュレーションをしてみましょう。

シミュレーションによる検証

ハバング:実際にストリーミングを無料にした場合、ネットワークがどうなるかのシミュレーションを行います。

まずは現在のネットワークの状況をロケーション別に可視化しましょう。都心部では現在それほどビデオトラフィックは多くないこと、とはいえ郊外にはビデオトラフィックが大きいセルが多数見つかり、「Excessive」とカテゴライズされる上位7%の人がデータトラフィックの半分を使っていることがわかりました。

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菅野:インサイトの中の「ヒートマップ」という機能を使うことで、ロケーションごとに、トラフィック状況がわかります。

ハバング:ここ3年で増加した加入者の多くがビデオトラフィックを利用しています。このままではかなり深刻な輻輳が発生することが予想されます。インタラクティブなアプリはほとんど使えなくなってしまうでしょう。

対策はいくつかあります。ひとつは、アプリケーションによってパケットの優先度を変える方法です。ネットワークが混雑してきたら、トラフィックの帯域を制限することで、コンテンツプロバイダーから送信されるビデオの解像度が連携して下がります。一方で、インタラクティブなアプリケーションに対しては優先度を上げて確実に通信できるようにします。

菅野:弊社のPacketLogicが提供する、シェイピングやポリシーベースのトラフィック制御が活用できます。

▼PacketLogicが提供するトラフィック制御(概念図)
PacketLogicが提供するトラフィック制御(概念図)

ハバング:もう一つの方法が、コアネットワークに近いところにコンテンツをキャッシュすることです。利用者が増えてきた時問題になるのは、コンテンツサービスプロバイダーのネットワークにコンテンツを取りにいくための経路が混雑することです。ネットワークのコアに近いところにコンテンツをキャッシュすることでこの問題は解決できます。

もちろん、コンテンツプロバイダーの意向は重要ですが、彼らとしてもキャッシュによって利用者がストレスなくサービスを利用できるようになるので、お互いメリットがあります。提案する価値はあるでしょう。

ファイナンスチームの課題は?

ハバング:ファイナンスチームは、コストと加入者状況を調べます。また、新しいゼロ・レーティングのサービスによってトラフィックがどう変化するか、またそのために必要な投資はどのくらいになるかをシミュレーションします。

菅野:適切に設計された料金プランとトラフィック管理は、加入者を増やし、ARPUを上げつつも、投資を抑制することを可能にします。というのは、料金プランによって加入者の行動が変化していくからです。

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一例を挙げると、あるモバイルオペレータは、主要コンテンツプロバイダーのストリーミングのトラフィックには課金しない「ゼロ・レーティング」のサービスを提供しています。しかし同時に「ゼロ・レーティングで提供されるストリーミングは、低解像度の映像とする」というコントロールを行い、高解像度の映像を見たい場合は別途課金を行うメニューを設けています。

その結果、通信コストをおさえてストリーミングを見たい加入者は低解像度の映像を見ることになるので、従来に比べると全体のトラフィック量は下がります。また、高解像度の映像がどうしても見たければお金を払うことになるので、ARPUは上がります。

ハバング:お客様もファイナンスチームも、どちらもハッピーになれますね。

結果の確認、そして次のステップへ

ハバング:新しいプランをエンジニアリング部門が実装し、マーケティング部門がキャンペーンを行います。プロモーションの目的は、革新的なストリーミングサービスの提供による新しい加入者の獲得、より高いプランへの移行促進や、プリペイドからポストペイプランへの移行促進などです。

エンジニアリング部門は、シミュレーションの結果にもとづき、混雑した場合でもきちんと動作する様、パケットシェイピングとWebやSkype, フェイスブックなど、インタラクティブなアプリケーションを優先する制御を組み込みます。また5インチ以下などの小さな画面に向けたサービスについては、ピーク時にセルが混雑した場合飲み480p程度でサービスを提供します。大きなスクリーンには720pにします。こうすることにより、ビデオのトラフィックを50%以下に抑える事が可能になります。

また、ビデオコンテンツのプロバイダーとも、市場にすばらしいビデオサービスを提供するためのアライアンスを結び、あなたのネットワークの中にキャッシュサーバーを設置します。

3ヶ月後にサービスが始まりました。あなたの「ストリーミングサービス無料」のプランはとても魅力的なので、毎日何千人という多くの新しい加入者が申し込み、ビデオを利用します。加入者とビデオトラフィックの増加でネットワークには予想通り大きな負荷がかかりますが、PacketLogicによる制御で乗り切ることができます。

菅野:加入者の体感は、SCORE CARDで可視化できます。評価がAではないアプリケーションやセルがあれば、次はそこに照準を合わせてネットワークをアップグレードすることで、さらに加入者の満足度を高めることができます。またそのあとは継続して評価をモニタリングしていきます。

ハバング:ネットワークの改善には終わりがありません。モニタリングの結果を元に、改善すべき点を見つけ、計画を立て、実行し、その結果をさらにモニタリングする。その繰り返しでネットワークはどんどん良くなっていくのです。

コンテンツプロバイダーとオペレーターの関係のあり方

プロセラネットワークス CTO アレキサンダー・ハバング

ハバング:また、加入者の声を聞いて、ゼロ・レーティングで提供するアプリを追加することもできるでしょう。ビデオプロバイダーからは、自社についてもゼロ・レーティングでサービスを提供して欲しいという要請が来るかもしれません。

菅野:NetflixやYoutubeなどの大手だけではなく、日本には多くのコンテンツプロバイダーがあります。また、動画配信のスタートアップもこれからどんどん増えてくるでしょう。そうした会社からは、大手の会社だけをゼロ・レーティングで優遇するのは不公平だという声があるでしょうね。

ハバング:先ほどのケースでは、オペレーターはゼロ・レーティング実現のためのコストをコンテンツプロバイダーに請求していません。

コンテンツプロバイダーは、オペレーターのネットワークを使ってサービスを提供しています。サービスの加入者が多くなるほどネットワークにかかる負荷は高くなりますが、そのコストを全てオペレーターが負担することになるのは果たして良いのかという問題はあります。

皆さんがCEOならどの様な対応をされますでしょうか?さまざまな考え方があり、どれが正解とはいえませんが、加入者、コンテンツプロバイダー、オペレーターの三者にとって良い方式とは何かという問題提起はしたいと思います。

オペレーターに必要なのは「透明性」ではないか

ハバング:アメリカでもヨーロッパでも、「ネットワーク中立性」についてはさまざまな議論が行われており、たくさんの異なる見解があります。

私は、オペレーターは透明性を持っているということが大前提だと思います。同じようなコンテンツやアプリケーションを提供するプロバイダーが複数あった時に、それを差別することはよくないでしょう。しかし、「コンテンツプロバイダーを差別しない」というルールさえ守れば、アプリケーションをベースとしたプランは提供できるのではないでしょうか。

すべてのサービスを等しく提供できて、すべての加入者が満足できるネットワークがあれば理想的です。でも現実には加入者によってネットワークの使い方はさまざまです。主にゲームをする加入者と、ビデオを見る加入者と、メッセージングサービスを使う加入者では、ネットワークに求めるものが違うのです。すべてを満足させるネットワークを提供するのは現実的ではありません。厳密な「ネットワーク中立性」にこだわりすぎると、イノベーションやオペレーターの差別化はできなくなってしまいます。

菅野:弊社のソリューションでは、帯域を等しく平等に加入者に提供する機能もありますし、アプリケーションやロケーション、サービスプラン毎などに重み付けする機能も持っています。オペレーター様が考える加入者体験向上の実現のために、プロセラネットワークスのソリューションを役立てていただければと思います。

▼同席していたトーマス・バッセン(エヴァンジェリスト)と共に
プロセラネットワークス アレキサンダー・ハバング 菅野真一 トーマス・バッセン

【関連情報】
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メールでのお問い合わせはこちらまで japan-sales@proceranetworks.com

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特集:トラフィック可視化で変わるネットワークの姿

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