「エクセレントサービスカンパニー」に変わらなくてはSIerは生き残れない

2016.08.09

Updated by Asako Itagaki on 8月 9, 2016, 17:27 pm JST

「日本のIoTを変える99人」に登場いただいたユニアデックス株式会社 山平哲也氏のインタビューを公開したところ、複数の読者の方から「山平氏の所属にある“エクセレントサービス”とは何か」という質問をいただいた。(ユニアデックス株式会社 エクセレントサービス創生本部 プロダクト&サービス部 IoTビジネス開発室長 山平哲也氏(前編):IoTは「異業種格闘技」だ

そこで、2016年4月、同社代表取締役社長に就任すると同時に「エクセレントサービス」を部署名に採用した東常夫氏に、同社の事業環境と「エクセレントサービス」の意味について聞いた。

東 常夫(とう・つねお) ユニアデックス株式会社代表取締役社長。1984年日本ユニバック株式会社(現日本ユニシス株式会社)入社。テレコム分野の営業を長く担当し、2002年経営企画部へ。2005年ユニアデックス株式会社戦略営業本部本部長。以後、営業推進を担当する。2012年取締役執行役員、2014年取締役常務執行役員に就任。2016年4月より現職。座右の銘は「感謝の気持ちを忘れずに、謙虚な気持ちを忘れずに」

東 常夫(とう・つねお)
ユニアデックス株式会社代表取締役社長。1984年日本ユニバック株式会社(現日本ユニシス株式会社)入社。テレコム分野の営業を長く担当し、2002年経営企画部へ。2005年ユニアデックス株式会社戦略営業本部本部長。以後、営業推進を担当する。2012年取締役執行役員、2014年取締役常務執行役員に就任。2016年4月より現職。座右の銘は「感謝の気持ちを忘れずに、謙虚な気持ちを忘れずに」

変化する市場の中で変わるSIerと顧客の関係

――ユニアデックスといえばシステムの保守運用領域に強みを持つSIerというイメージがあります。現在の市場環境の変化をどのようにとらえておられますか。

東氏:お客様のシステムの利用形態がどんどん多様化しています。ネットワーク接続は無線になっているし、デバイスも多様化している。使い方も、映像も含めてさまざまな形になっています。データ量も増えています。それをどのように束ねていくかということが課題になっています。

いちばん大きな問題はセキュリティです。その脅威に対するエンジニアとしての知見を持って、お客様のネットワークをどう最適化していくのか、さまざまなやり方があると思いますので、どのようにお客様と課題を共有し、どのような形態にしたうえで実装していくのか、というところが我々の仕事だと考えています。

――単刀直入に聞きますが、SIerは従来のやり方ではなかなか利益を出すことが難しくなっているのではないですか?

東氏:今まで我々はひとつひとつのネットワークやシステムについて、設計・構築・保守運用をご提供していました。ですが、このままでは付加価値をつけにくくなっているというのは確かにあります。

ひとつひとつのネットワークではなく、お客様の会社全体でシステムをどのように構築運用していくべきか、さらに広げて社会基盤、社会全体を見たうえで我々に何ができるかという方向に視点を変えなくてはこれから厳しくなっていくでしょう。難しい話ですが、チャレンジしなくては付加価値が出せない、したがって利益も出せない、厳しい自転車操業になってしまうと考えています。

そのためには、お客様のICT環境の全体とその課題を把握し、新しい技術も含めて将来に向けた提案をできるようにしていく必要があります。今、(お客様と)そこまでの話は正直できていないと思いますので、私自身が全国を回って社員と議論をしながら変えていこうとしています。

――そのためにはお客様との関係も変えていく必要がありますね。

東氏:そうですね。お客様の情報システム部は企業全体の情報システムの最適化を考えていらっしゃいますが、我々SIerに対しては「今年はこのシステムの更新を、このサーバーの導入をお願いします」という形で個別最適化を図ろうとされてきました。案件ごとに複数のベンダーにRFPを出して安いところに発注する、というやり方を何年もされている場合が多いのではないでしょうか。

そうしてきたことで、障害の切り分けがしづらかったり、インテグレーターや契約の管理のために膨大なオーバーヘッドがかかってくるという問題をお客様自身も抱えられているのではないでしょうか。一方ではクラウド化、IoT、AIなどの最新の動向も勉強しながら自社のビジネスにICTを戦略的に活用しなくてはいけないという課題を抱えておられます。にもかかわらず、多くのお客様がレガシー領域に相当のリソースを割くことを余儀なくされています。

お客様とお話していても「リソースをもっと新しいところに向けていかなくてはいけないのにできていない」という悩みを抱えているケースが増えています。弊社の強みはマルチベンダー、マルチレイヤーで、サーバーもネットワークも含めて、設計・構築・保守・運用全て対応できること。信頼していただけるのであればお客様の環境全てを見させていただきますと言えるし、そういうお客様は増えています。

我々としては、それで儲けることよりは、新しい技術や仕組みで効率化をはかり、お客様のコスト削減目標と我々の利益を両立させたいと思っています。

「RFPに表現できない価値」を提供するエクセレントサービスカンパニー

――山平さんへのインタビューでは、「ユニアデックスの強みは修羅場から逃げないサポート力」という言葉が出てきました。

東氏:日経コンピュータが毎年実施している顧客満足度調査で、弊社はシステム運用関連サービス(情報サービス会社)領域で4年連続No.1の評価をいただいています。その理由のひとつが山平の言う「逃げない」ということだと思っています。

でもそれはお金で表せる価値ではないので、残念ながらRFPに対する提案内容には反映できないんですね。日本のSIerはある意味皆同じ悩みを抱えているのではないでしょうか。

アメリカの新しいプロダクトやソリューションをいち早くご提案するのも、10年前には有効でしたが、今はあっという間に皆同じことをしますね。結局差別化要素をなかなか見いだせなくなります。そこを打開し、差別化要素として明確な独自サービスを提案していきたい。

それは明示的に分かる仕組みかもしれないし、そうしたものを通して最終的には「おなじことをこれだけ安くできる」というコストに反映することも目指したい。でもなかなか難しいというのが正直なところです。

――そのような背景がある中で、東社長が打ち出されている「エクセレントサービス」とは何でしょうか。読者からもその点を知りたいという声がありました。

東氏:我々のコアビジネスはハードウェア、ソフトウェアの保守サービス・運用。つまり我々はサービス企業です。もっとよりよいサービスを提供するためには社員が価値観を共有し、方向性を一つにしなくてはいけない。そのために若手社員を中心に時間をかけて議論し、3年前に「ユニアデックスフィロソフィ」を作りました。

フィロソフィでは「信頼される・期待を超える・感動を与える」という行動指針を掲げています。そこから導かれたビジョンが「エクセレントサービスカンパニーになろう」、すなわち「お客様に信頼され、期待を超えて、お客様に感動を与えるサービスを提供する」会社になることを目指す、というものでした。

3年前に社内目標として掲げ、オフサイトミーティングなどを通して社内には浸透してきたと思います。そして今年度からは対外的にも表明していこうということで、部署名にも「エクセレントサービス」とつけました。

社外の方と名刺交換すると、最初に「何ですかこれ?」という反応をされることが多いですね。でも、ご説明させていただくと「いいね」「うちもこれにしようか」と言っていただけます。「エクセレントサービス」というのはお客様にいただく評価であって、自分で言うのはちょっとおこがましいかなという思いもあったのですが、逆に「目指すところ」を理解していただけるという点では良かったと思います。

ユニアデックスフィロソフィの中では、我々のミッションは「お客様のICT環境全体を最適化する」であることをうたっています。「同じ未来を想うことから」というコーポレートメッセージの通り、お客様と目線を共有し、こうすれば未来はもっと良くなるという提案をして、実装することがミッションです。そのためには日々の小さな改善提案も、大きな仕組みの提案も必要でしょう。エクセレントサービスはその全体を包む概念です。

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技術や環境が変わっても、常に我々はサービス企業

――これからお客様の環境やニーズはどのように変わっていくのでしょうか。また、ユニアデックスはそこでどのようなサービスを提供していく未来を描いているのでしょうか。

東氏:これまでお客様からは顧客満足度No.1の評価をいただいてきましたが、これは従来のICT環境でのサービスに対する評価だと思います。これからお客様の環境にはクラウドやIoT、AIといったものが入ってきます。だからといって従来のオンプレミスな環境がなくなるわけではなくて、たとえば基幹系システムはオンプレミス、新しいものはクラウド、クラウドの中にもAWSもあればAzureもある。あるいは、我々が提供する信頼性が高いUクラウドをご利用いただくほうがいい場合もあります。

さまざまな環境が複雑に入り組んで併存する時に、それらを一括して保守運用含めてマネージしていくのが、新しい環境下でのサービス領域だと考えています。今、本丸の保守運用サービスも、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを対象にした運用にシフトしていくのではないでしょうか。

あまり先のことをイメージするのは難しいのですが、2020年頃をターゲットにした目標としては、新しいクラウドIoTの世界の中で、新しい技術を使って効率的にマルチクラウドの環境をマネージし、新しいサービスを提供していきたいと思っています。

個人的な願望としては、その頃には趣味のサーフィンにIoTが役立つようになっていればいいなと思っています。週末になるとウェブサイトで提供されている「明日の波予報」を見て行き先を決めるのですが、現地に行ってみたら様子が違っているようなことがよくあるんですよ。海に浮かべたセンサーのデータと位置情報を、衛星を使ってクラウドに集めて、もう少し正確な予報が提供されたりするといいですね。

その先はどうなるかは、正直、分かりませんが、我々は自ら最先端のハードウェアやソフトウェアを作る会社ではなく、トッププレイヤーが出すものを提供していく立場。よく西部劇にたとえて話をするのですが、ゴールドラッシュを夢見て皆西海岸で金を掘りますが、我々はそうではない。そこに必ずある宿屋や食堂でサービスを提供する立場で生き残っていく企業なんです。

我々はサービス企業であるということを常に念頭におき、その時に必要な新しい技術とサービスを常に追いかけ、お客様の求めるサービスを柔軟に提供するユニアデックスでありたいと考えています。

――ありがとうございました。

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集長。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2013年春、長年住んだ中目黒を離れて、世界一高い電波塔の近所で下町生活を満喫中。

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