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EU、租税回避問題でアップルに追徴金支払い命令へ - 最大数十億ドルの可能性も

2016.08.30

Updated by WirelessWire News編集部 on August 30, 2016, 12:59 pm JST

アップル(Apple)が、アイルランドに設けた子会社を使って納税額を圧縮している問題で、この件に関する調査を進めていた欧州委員会(European Commission)が現地時間30日にアップルに対して追徴金の支払いを命じる見通しになったと複数の媒体が同29日に伝えている。

この件で問題とされているのは、アイルランド政府が雇用創出を目的としてアップルに提示したとされる法人税などの優遇措置。EU加盟国が自らの裁量で企業に対して税の優遇措置を認めること自体は違法ではないものの、その対象が特定の企業に限られている場合には、一部の企業の優遇を禁じたEUの法律に違反する可能性があるという。

なお、この話題を採り上げたWSJでは、アップルに課される追徴金の金額について、最小2億ドルから最大で190億ドルになる可能性があるとするアナリストの見方を記しており、Bloombergでも同様に最大190億ドルという数字を挙げている。

Bloombergによると、アップルは7月時点で合わせて約2320億ドルの現金を保有。またそのうちの2140億ドルは米国外の法人に留保したいわゆる海外滞留金だという。

欧州委員会が多国籍企業による租税回避の問題で、企業各社や加盟国の政府に追徴金の支払いを命じるのは今回が初めてではない。今年1月には、ベルギー政府が石油会社BPや飲料メーカー大手のアンヒューザーブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)など少なくとも35社に対して違法な優遇措置を提供していたとして、同委員会から7億ユーロの支払いを命じられていた。また昨年にはコーヒーチェーンの米スターバックス(Starbucks)が、オランダ政府に3000万ユーロを支払うよう命じられていたとBloombergは記している。

さらにグーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)などの各社でも、欧州各国やいわゆるタックスヘブンに設けた法人を使って利益や納税額の圧縮を行っていることが知られている。

いっぽう、米国政府などはこの問題に関し、特に米国企業を狙い撃ちにする欧州委員会のやり方に反発する姿勢を示してきている。また米国内では、連邦議会で長年議論されながら結論を先送りされてきている法人税制の大幅見直しの一環として、米企業による海外滞留金の国内持ち込み・再投資などを促す目的で通常の法人税率よりも低い税率での持ち込みを認める試案なども何度か示されてきている。

【参照情報】
EU Set to Rule Apple Tax Deals With Ireland Illegal - WSJ
Apple's Irish Tax Bill May Run Into Billions of Euros - Bloomberg
EU to hand Apple Irish tax bill of $1.1 billion, source says - Reuters

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