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ドライブレコーダーと車載センサー情報から危険運転検知、NTT ComとNCSが成功

2016.09.27

Updated by Asako Itagaki on September 27, 2016, 12:15 pm JST

NTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)と日本カーソリューションズ(以下NCS)は、車両から取得したデータをAIにより解析することで、危険運転を高精度で自動検知することに成功したと発表した。

NTTサービスエボリューション研究所(以下NTT研究所)が開発した技術によるもの。ドライブレコーダーで記録される時系列の映像データと各種センサーデータをAIで分析することにより、飛び出してくる自転車などとの接触事故となりかねない危険な運転を約85%の精度で自動検出することに成功した。このような「出会い頭」の事故は、交通事故の発生状況のうち「追突」に次いで2番目に多く、約24%を占めている。

実験に用いたのは、NCSが安全運転促進のための自動車IoTツールとしてカーリース顧客に提供する「NCSドライブドクター」から抽出した、映像データ、各種センサーデータ(3軸加速度センサー情報、速度情報等)といった時系列なマルチモーダルデータ。抽出したデータを時系列ディープラーニングで分析する移動状況推定技術を用いて、ヒヤリ・ハット判定モデルを生成する。生成したモデルを用いて、「ヒヤリ・ハット」シーンが含まれるドライブレコーダーデータを自動検出したところ、9,000件のデータに対して約85%の確率でヒヤリ・ハットシーンの検出に成功した。

▼ヒヤリ・ハット判別に使用する時系列マルチモーダルデータ例
2016097-nttcom

NCSでは「NCSドライブドクター」のオプションとして提供している「NCS交通安全プログラム」の映像解析サービスを提供しているが、現在は専任スタッフが多くの時間を要しながら、車載器に記録された膨大な映像データの中から、「交通違反」「ヒヤリ・ハット」などの危険運転シーンを抽出し分類する作業を行っている。NTT Comがこれまでに行ってきた時系列ディープラーニング技術を用いたAI映像解析実験の成果とNTT研究所のAI技術である「移動状況推定技術」を活用することで、車載器の映像データと速度などの各種センサーデータから危険運転を自動判別できる可能性があると考え、今回の実験につながった。

NTT Comは、本実験で得た時系列マルチモーダルデータをAI技術により分析する知見を、映像分析の共通プラットフォームや各種IoTソリューションなどに広く提供していく予定。また、NCSは今回対象とした接触事故につながる運転以外にも一時停止不履行や信号無視など法令違反も含めた危険運転データや地域性、時間帯、車種など個別の状況を踏まえた様々なケースの分析を行っており、これらのインシデントを自動検出するために、AIによる自動分析の高度化を検討する。

マルチモーダルデータによるインシデント検出とリアルタイムでのフィードバックが可能になれば、運転者アシストシステムや自動運転ソリューションにおける交通事故削減につながることが期待される。

【報道発表資料】
人工知能(AI)を活用した危険運転の自動検出に成功 〜ディープラーニング活用で高精度検出を自動化。運転手への教育強化や事故軽減を実現へ〜

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。