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産業ロボット

産業向けIoTに新機軸、LTE over Wi-Fiの新会社、クアルコムはプロセッサーを代理店販売へ

2016.10.04

Updated by Naohisa Iwamoto on October 4, 2016, 06:27 am JST

産業用IoTの進展に影響を及ぼす可能性があるニュースが相次いだ。1つは、ワイヤレスゲートとモバイル・インターネットキャピタルによる、産業用IoTに向けた高速通信プラットフォーム提供会社の設立。もう1つは、米クアルコムによる組み込み用プロセッサーの代理店販売の開始のニュースだ。

ワイヤレスブロードバンドサービスを提供するワイヤレスゲートと、NTTドコモなどが出資するベンチャーキャピタルのモバイル・インターネットキャピタルは、2016年9月28日に合弁会社「LTE-X」を設立した。LTE-Xは、産業用IoTに向けて、高速で高セキュリティにデータを扱えるモバイルプラットフォームを提供する。IoT向けの通信サービスでは、低容量のデータ通信を対象としたIoTプラットフォームが多く提供されているが、新会社では高速、大容量で高セキュリティなプラットフォームを提供することを目指す。

LTE-Xが提供するサービスのコアテクノロジーは、「LTE over Wi-Fi」(LTEトネリング技術)と呼ぶもの。この技術は、ワイヤレスゲートが出資する米nCore Communicationsが持つもので、LTE-Xでは国内の独占ライセンスを持ってサービスを提供する。LTE over Wi-Fiは、Wi-FiのアクセスポイントをLTEの基地局のように動作させることで、LTEネットワークと同等の機能をWi-Fi上で実現できる。LTE基地局を設置するためのコストをかけることなく、Wi-Fiアクセスポイントを利用して低コストでLTEが備えるサービスを提供できるようになる。

LTE-Xが提供するプラットフォームがターゲットとするのは、工場、病院、セキュリティ、物流などの市場。高速、大容量で高セキュリティの通信プラットフォームを提供することで、これまでとは異なるIoTのソリューションを具現化する力になる。

もう1つが、クアルコムが9月29日に行った発表で、組み込み用途を想定した「Qualcomm Snapdragon 600Eプロセッサー」および「同 410Eプロセッサー」を、販売代理店を通じて販売することをアナウンスした。クアルコムのプロセッサーは、これまでクアルコムと直接の取引でのみ提供されており、モバイル端末メーカーなど大ロットでの購入が前提となっていた。今回の販売代理店経由の販売により、組み込み機器やIoTアプリケーションを開発する企業などが、クアルコムと直接の契約をすることなく、小ロットでプロセッサーを購入できるようになる。

Snapdragon 600Eおよび 同 410Eプロセッサーは、デジタルサイネージ、セットトップボックス、メディカルイメージング、POSシステム、産業ロボットやIoT関連のアプリケーションに向けたプロセッサー。少なくとも10年間にわたって、グローバルで販売を継続することをアナウンスしている。産業用IoTなどで利用する際も、10年間は同じプロセッサーを入手可能であり、継続して安定した製品供給が可能になる。

販売代理店は、当初は米Arrow Electronicsが担当する。国内では、Arrow Electronicsの販売権のもとで、アロー・ユーイーシー・ジャパンおよびチップワンストップが販売を開始する。

【報道発表資料】
Qualcomm Snapdragon 600E and 410E Designed for Embedded Computing, Internet of Things Applications Now Widely Available
アロー・ユーイーシー・ジャパン、チップワンストップ クアルコム社のSnapdragon 410Eのチップセットを米国アローエレクトロニクス社のグローバル販売権のもと発売開始

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。