IoT

ウフルIoTイノベーションセンターの活動から学ぶ、「IoTはアライアンスでできている」の意味

2016.10.06

Updated by Asako Itagaki on 10月 6, 2016, 07:11 am JST

日本のIoTを牽引するオピニオンリーダーに話をうかがう特集「日本のIoTを変える99人」に登場いただいた2人のビジョナリストが合流した。当時シスココンサルティングサービスの八子知礼氏が、2016年4月に杉山恒司氏が所属する株式会社ウフルに入社、同時に発足したウフルIoTイノベーションセンターの所長に就任したのだ。

さらに6月にはウフルが事務局となって「IoTパートナーコミュニティ」を立ち上げた。「ウフル」の名がつかないコミュニティに対して深くコミットしていくことはウフルという企業に対してどのような意味があるのか、またIoTパートナーコミュニティのこれからの活動について、八子氏と杉山氏に話を聞いた。

▼株式会社ウフルIoTイノベーションセンター所長・八子知礼氏(左)と同センターGM・杉山恒司氏
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ウフルの企業文化も変わりつつある

IoTイノベーションセンターのウフル社内での位置づけは、「お客様のIoT案件を発掘して、座組を推進していく部門」だ。「IoTのウフル」としてのポジション確立をめざし対外的な知名度を上げるエバンジェリスト活動を行いながら、パートナーの目利きと新規案件に対するアドバイザリーの提供、PoC支援を行い、商用化段階への橋渡しをする。

橋渡しといっても、「ウフル社内のコンサルティング部門やインテグレーション部門に引き継ぐ」という意味だけではない。「弊社はマーケティング領域のインテグレーションには強くリソースも多いのですが、IoTのインテグレーションにおいては受託している案件数に比してリソースが決して潤沢というわけではないので、パートナー企業に任せることも徐々に増えている」と八子氏。

むしろ社内向けには「リソースも増やして取り組んでいかないとパートナー企業にどんどん発注するよ」と発破をかけているという。「これまでどちらかといえばインテグレーション部門はプラットフォーマーからの紹介による受託開発中心だった」(杉山氏)というウフルの企業文化も、IoTイノベーションセンターの設立によって自前で創出した案件の主体的なインテグレーションビジネスに変わりつつある。

あらゆるリエゾンでアライアンスの引き出しを増やす

「IoTはアライアンスでできている」というのは以前杉山氏にインタビューした時の言葉だ。顧客から相談を受ける前に多くのプレイヤーとリエゾンを組んでおくことで、アライアンスの引き出しを増やすことができる。

6月に設立した「IoTパートナーコミュニティ」もその取り組みの一つだ。さらにコミュニティに欠ける領域を補完するために、日本OMGやMIJSといった他団体との相互団体アライアンスを検討するなど、他団体とのリエゾンも進めている。

また、プラットフォームベンダーとも、IoTパートナーコミュニティとの取り組みとは別にアライアンスを仕掛ける。「ウフルは長年セールスフォースドットコム(SFDC)の付加価値再販パートナーとして実績がありますが、IoTにおいては一つのプラットフォームだけで完結しないことも多い。産業別に得意な領域のプラットフォームを選定して最適化提案をせざるを得ないこともある。」(八子氏)ゆえに、SFDC以外にもPTC、GE、Microsoftなどのメガベンダーとのアライアンスを積極的に仕掛ける。

こうした活動はIoTパートナーコミュニティにも還元される。「相談を受けた時にコミュニティの中で業種、シナリオに応じたアライアンス先を選び、プラットフォームも強みに合わせて選ぶことで、お客様の課題に対するPoCを短期間で実現できる」(八子氏)

顧客に「内部検討します」と言わせない

PoCとはProof of Conceptの略、すなわちコンセプトの検証だが、目的の確認やシナリオの検討が不十分なまま始めてしまうと、「できたはいいがビジネスとしてスケールしない」「技術検証が限定的でこのまま進めて良いのか分からない」という失敗を引き起こす。PoCに入る前の準備が重要だ。

ウフルのIoTビジネス、およびIoTイノベーションセンターは「DeCIDE」というコンセプトを掲げているが、それはすなわち「早く決めて早く着手せよ」という意味だという。「お金がなければ小さな予算で小さくはじめることもお手伝いします。とにかく使えるデータが溜まっていないのは貯金がないのと同じですよ、と説得しています」(八子氏)IoTイノベーションセンターでは、アドバイザリーとして1か月ぐらい入り込んで意思決定早期化支援を行うか、あるいは2週間に1回程度3ヶ月間のビジネスモデル策定のアドバイスをしていくこれまでのコンサルティングとも異なるサービスメニューを用意している。そのようなサービスによって、商用化開発の意思決定に直結できるPoCを実現する。

準備不足のPoCは終了後商用化フェーズに移るまでに内部検討を必要とする。だが八子氏の今までの経験から、PoCの後「内部検討します」という企業のプロジェクトはほぼ間違いなく失敗事例になるという。「内部検討は予算ゼロ、すなわちやる気がないのと同じこと。残念ながらそんな企業ののらりくらりした議論にはつきあっているほどの余裕はありません」(八子氏)実際にPoCを実行しないまま意思決定を引き延ばしている会社に4-5カ月を超えて付き合うことはまずないというから徹底している。

「何もしない人には退場してもらう」新しいコミュニティのあり方

6月に17社の参画で立ち上げたパートナーコミュニティは、現在は30社まで拡大。既報の通り、最大50社程度をメドにしており、規模を追求する予定はない。「ウフルは事務局という位置づけで確かに企画と立ち上げを行いましたが、パートナーコミュニティには“ウフル”という名前をつけていません。この船はウフルの船ではなく、参加企業みんなの船。オープンイノベーションを体現していくために、同じ温度感・スピード感で動ける会社と一緒に、案件を実現していくんです」(八子氏)という方針だ。

入会にあたっても「大手IoTプラットフォーマ―ではない、もしくは大手IoTプラットフォームを前提としない」「 独自の技術やソリューションを持っているか、コミュニティのテストベッド提供に貢献できる」「具体的に実現したいこと、案件、アイデアを持っている」などいくつかの条件があり、パートナーコミュニティの活動に貢献できない企業は後述する各WGリーダーから成る運営委員による事前審議で入会を断ることになる。ウフルだけが独断で判断できない仕組みを採用している。

現在、「IoT x AI」「流通」「ヘルスケア」「スマートビルディング」「セキュリティ」「ブロックチェーン」「大手飲料メーカー」の7つのワーキンググループ(WG)が設置され、12月のフォーラムに向け活動を開始している。

WGは半年間を1タームとして、それまでに成果がでなければ終了、PoCが完成すれば次タームで実証WGへと進む。こうした活動で2ターム(1年)続けて活動実績がない企業は、翌年の参加を認められない。「IoTパートナーコミュニティは情報交換ではなくビジネスをやる」という姿勢がここにも表れている。

「エコシステム構築のために、参加者を集めてゆるやかなつながりを作り、情報収集や講演を中心に情報提供を行っていく」という従来のコンソーシアムのやり方とは、参加資格の考え方や組織運営の方法も全く違う。今後成果として公表されるシナリオと共に、1社で全てを抱えることはできないIoTの世界の新たな組織のあり方としても注目したい。

(インタビュー実施日:2016年7月20日)

 

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<八子知礼氏インタビュー>
(前編):かつての「最新」に縛られて身動きがとれない日本の現場
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<杉山恒司氏インタビュー>
(前編):「つないで新しいビジネスを作る」のがIoT
(後編):IoTには考える人を増やし、地球を良くする力がある

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。