株式会社ウフル IoT事業推進部長 杉山恒司氏

株式会社ウフル IoT事業推進部長 杉山恒司氏(前編):「つないで新しいビジネスを作る」のがIoT

日本のIoTを変える99人【File 011】

2016.02.09

Updated by 特集:日本のIoTを変える99人 on 2月 9, 2016, 15:00 pm JST

Salesforce、AWS、Microsoft Azure、NTTコミュニケーションなどと複数のクラウドベンダーのパートナーとしてユニークな地位を築いてきた株式会社ウフル。さまざまなクラウド間連携サービスの構築に使われるenebularの無償提供など、ユニークな戦略を次々と繰り出すIoT事業推進部長 杉山恒司氏は、15年以上前から「モノをつなぐ」事業に取り組んできた先駆者だ。杉山氏の考えるIoTとウフルのビジョンについて話を聞く。

株式会社ウフル IoT事業推進部長 杉山恒司氏

杉山 恒司(すぎやま・こうじ)
株式会社ウフル IoT事業推進部長。大手通信事業者IT部門に約20年勤務し、その後は、ベンチャー企業の経営や、WEB制作会社でプロジェクトマネージャーや新規事業企画、その後はフリーとして各事業会社顧問やアドバイザーとして複数社と関わりながら、2012年ウフルに参画。コンサルティング部門長、人事総務部門長等を歴任し、現在はIoT事業の推進とアライアンス推進を担当中。

IoTはアライアンスでできている

2000年頃から大手通信事業者の新規開発事業部門で、当時はIoTという言葉はまだ普及していませんでしたが、デバイスと通信を組み合わせた事業の立ち上げに携わっていました。最初に手がけたのが、スウェーデン製の電子ペン。日本に普及させるために、印刷会社やペンのOEMメーカーなどを巻き込んでコンソーシアムを作りました。また、当時流行っていたRFIDを活用した物流の実証実験にもかかわりました。「ユビキタスマンション」をやりたいというゼネコンの新規プロジェクトの裏方として、家電メーカーやゲートウェイを作る通信屋などを集めたアライアンスを作ったこともあります。

何でも手を出すのが早過ぎるんですよね。RFIDタグの実証実験の時には、大手コンビニエンスストアチェーンの役員に「100円のジュースに1個30円のタグを付けるなんて非現実的では?」と笑われました。

2003年からはベンチャー企業の経営をしたり、WEB制作会社でプロマネをやったり、その後は顧問やアドバイザーとして数社と関わりながら、飲食店を経営したりしていました。

ウフルにジョインしたのは2012年です。きっかけは、Salesforceに転職した知人から「クラウドでCRMが簡単に実現できる」という話を聞いて興味を惹かれたことです。当時はまだSalesforceのリセラーが少なくて、その中の一つがウフルでした。Salesforceだけでなく、マルチベンダーのクラウドサービスを提供している会社であることがおもしろいと思って入社させて頂きました。

最初はコンサルタントとして入社したのですが、当時は40名弱の小さい会社でしたから、人事・総務・採用などあらゆることをやりました。今年の1月1日付でIoT事業推進部長となって、ようやくIoTに特化してやれることになりました。今は、アライアンス担当としてパートナーとの関係を構築することと、自分の人脈をフル活用して、IoT事業にたずさわる優秀な人材の採用に力を入れています。

IoT事業は、プラットフォーム、ネットワークインフラ、デバイスを組み合わせることで、初めて実現します。クラウドの会社だったウフルがIoTをやりはじめたのは半ば必然で、クラウドの会社がアライアンスを進めようと思うと、相手はプラットフォームとデバイス。これをつないで、うちはコンサルティングと実装をやって、結果的にIoTのソリューションができあがります。すべてを一つの企業で提供するのではなく、得意分野を持つ企業が連携して提供することで新たなソリューションが生まれるのです。

私はもともと人と話すのが好きで、出会ったあの人とこの人をつなげば新しいビジネスになりそうだ、と妄想するのが楽しくて仕方がないんです。まさにそれがIoTです。

「インターネットを使う」文化が根付き始めた

▼Uhuru受付にいるPepperも、IoTにつながるデバイスの一つだ
Uhuru受付にいるPepperも、IoTにつながるデバイスの一つだ

今、IoTという言葉が流行っていますけれども、言葉自体は1999年に誕生した言葉です。ちょうど私がモノをつなぐ新規事業に取り組み始めた頃で、当時は、似たような言葉で「ユビキタス」「どこでもいつでもネットワーク」「U-Japan」などと言われていました。で、その当時のビジネスは、あまり今のビジネスモデルと変わっていないんです。15-6年やっていると言われるのはそういうことで、私からみるとデジャヴ感がすごくあります。

当時と今とでは何が違うか。「通信料金が高かった」「デバイスが高かった」「バッテリーが持たなかった」などと技術的な要因を挙げる人が多いですが、私の個人的な意見としては、「インターネットを使う」という文化が日本にようやく根付き始めたからだと思います。

弊社の主力事業であるクラウドにしても、3、4年前には提案しても特に大企業では「サーバーは自前で」「データを海外に預けるなんてとんでもない」という会社ばかりだったのが、今や当たり前に利用されるようになっています。文化が熟成してきたというのが一番大きな要因でしょう。広がることで、当然価格は下がります。良いスパイラルになっていると思います。

ここ1年で引き合いはとても増えていますが、中には「IoTっていくらするの?」と言うような人も出て来たりします。でもインターネットもかつてはそうでしたよね。そういう人たちに対して啓蒙活動をしていくのも、弊社のようなソリューションを提供している会社の役目だと思います。「IoTはウフル」という新聞広告を出稿しているのはその一環です

コミュニティ作りは市場づくり

ウフルでは、国内外の主要クラウドサービスを簡単に連携できるクラウド連携サービス「enebular」を無償で提供しています。その原型が誕生したのは、2012年に受注した水処理施設のセンサーデータを利用したポンプ制御システム開発、まさにIoT案件を進めていた時でした。

IoTのサービスは新しい概念に基づいたモノやサービスが開発されることが多いですから、結局PoC(Proof of Concept)を作って、見せて、評価して、フィードバックする、という手順で開発していくんです。PoCを会議室でレビューして、違うと言われると持ち帰って作りなおして、という繰り返しでした。それがもどかしいと考えたうちの研究部員が、その場でDrag and Dropでサービスをつないで、デプロイまでできる開発ツールを作ったのです。

これをブラッシュアップして、2014年にIoT・ビッグデータの連携プラットフォームとしてリリースしたのがenebularです。flow(enebularで開発した連携機能)をグラフィカルな管理画面から簡単に構築でき、作成したflowを公開してシェアしたり、共有されているflowを取り込んで活用することも可能です。

▼enebularの概要(図版提供:株式会社ウフル)
enebularの概要(図版提供:株式会社ウフル)

enebularを無料で提供しているのには意味があって、誰かが新しいデバイスやサービスを使ったパーツを作って共有すると、それはクラウドを介してenebularの利用者は誰でも試せるんです。つまり、デバイスの提供者とユーザーの両方を巻き込んだオープンコミュニティを形成できるのです。

そこに目をつけて弊社にアライアンスを打診頂いたのが三井物産エレクトロニクス様です。商社である彼らはセンサーやデバイスを売りたいのですが、デバイス単体ではなかなか売れないという悩みを抱えていました。担当部門の方がenebularを見つけて自分でアカウントを作り、簡単なPoCを作って社内に広めていったことで、本格的に営業ツールとして使いたいということでアライアンスにつながったのです。現在、彼らが提供するPoCキットの裏方としてenebularを活用いただいています。

無料で大丈夫ですかと言われますが、PoCを開発しても、これをエンタープライズで展開するためのパフォーマンスを上げたりスケールアウトするには、技術を持ったIT企業の力が必要です。ウフルはそこでコンサルティングや実装をお手伝いすることでお金をいただけばいいのです。

クラウドが広まったのも、AWSがJAWSをやったり、Salesforceがユーザー会をやったりして、コミュニティを構築できたからです。ウフルは、セミナーやenebularを通してIoTのコミュニティを特定のベンダーに依存しない形で育てていきたいと考えています。

後編に続く

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