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ソフトウェア制御によりITシステムとデータセンターの親和性を高め効率化をはかるコンテナデータセンターの試み

2016.12.05

Updated by WirelessWire News編集部 on 12月 5, 2016, 13:16 pm JST

データセンターの効率化

データセンターは同一箇所に多数のサーバを収容するためスケールメリットが発生します。これは、付帯設備を共有できることや付帯設備自体を効率の良い規模で運用できることに由来しており、データセンター以外の環境と比較して効率が良い状態を維持できます。データセンターの効率を表現するための指標としてPUE(Power Usage Effectiveness)という指標がつかわれることがあります。PUEは次の式で定義されます。

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例えば、

  • IT機器の消費電力=10kW
  • IT機器を稼働させるための付帯設備の消費電力=12kW

とした場合のPUEは以下のように2.2になります。

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PUEはIT機器を運用するために付帯設備(電力設備や空調設備や照明設備など)がどのくらい必要かを示しているので、理論上の最良値は「付帯設備が一切電力を消費しない状態」を示すPUE=1.0になります。国内の標準的なデータセンターはPUEが2.0程度と言われています。付帯設備がIT設備と同量の電力を消費していますが、それでも一般のオフィスビルでサーバ運用するよりも十分に効率が良い状態です。しかし、インターネットサービスの拡大によるIT機器総量の増加などから、データセンターの効率をよりいっそう追求しなければなりません。特に、膨大な数のサーバを集約してシステムを構築するクラウド型のデータセンターでは規模効率の向上が停滞することは死活問題です。2010年以降に設計・構築された先進的な大規模データセンターはどれもPUE=1.2程度を目標値として挙げており、実績としてもPUE=1.1~1.3程度の値を出しているようです。

統合型データセンター

構成要素の改善によってPUEの理論限界値である1.0に近い効率化を実現しつつある最新世代のデータセンターにおいて、より高い効率の実現にはデータセンターの定義の見直しを含むパラダイムの変更が必要です。単なるIT機器の収容設備としてデータセンターを扱うのではなく、データセンターとIT機器が一体化されたシステムとして適用できる技術を模索する必要があります。

IT機器も含めたシステム化を検討できるデータセンターの利用形態は、データセンター運用者とITシステム運用者が密接に関連しているもしくは同一であるデータセンターに限られるため、ここでは簡単に「統合型データセンター」と呼びます。

データセンターとITシステムの相互作用

データセンターとITシステムを相互作用させることでより高い効率を実現するためには、データセンターとITシステムそれぞれを扱うためのソフトウェア的インタフェースが必要です。

ITシステムに関しては標準的なAPIやプロトコルが規定されている場合がほとんどなので、それらを用いれば必要に応じて各種情報の取得や制御ができます。また、ITサーバやネットワークスイッチを自動制御するための仕組みやラック全体を集約して扱うシステム構築技法などの検討や評価、標準化も進んでいるので制御可能範囲は十分に広がっていると言えます。

一方で、データセンター設備の制御に関しては課題が存在しています。最大の問題は、データセンターは「ものと設備の集合」を示す概念であり、情報システム的な実態がないことです。データセンターを制御する、としても制御のためのエンドポイントが定義されているわけではありませんから、実際にはデータセンターのすべての構成要素を個別に扱わなければなりません。また、それぞれの構成要素に関する別の問題があります。データセンター設備に用いられる各種制御システムも情報化は進んでおり、専用ネットワークや専用のプロトコルを用いた情報システムを構築できます。しかし、ITの世界ほどオープン化は進んでいないため、外部との接続や情報交換などのインタラクションに必要な機能に関しては遅れているのが現状です。

IIJ技術研究所ではデータセンターを情報システムの一部として扱えるような抽象化を提供するソフトウェア層を新たに導入することで、これらの問題の解決を図ろうとしています。抽象化に加えて

  • データセンター内の構造の記述手法の確立
  • データセンター内部情報のデータ形式の標準化
  • データセンター内要素の制御用手順(APIなど)の整備
  • データセンター制御プログラム向けの標準的なライブラリ群の整備

などを組み合わせることでデータセンターとITシステムの親和性を高める研究を進めています。以下にデータセンターを扱うためのソフトウェア群の構成要素を示します。

▼データセンターのソフトフェアによる抽象化
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コンテナデータセンターによる実証とオペレーティングシステムの開発

IIJは「ITシステムと親和性の高いデータセンター」の研究開発を目的にコンテナデータセンター「co-IZmoSD」を運用しています。2013年に一体型の小型コンテナデータセンターとしてIIJで開発されたco-IZmoをベースとしており、研究開発に必要な機能を付加した上で2014年に設置されました。co-IZmoSDのSD部分は「software defined」を示しており、既存のデータセンター設備に対してソフトウェア制御できる要素を最大化することを目的とした実験設備であることを示しています。

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データセンターを構成する要素はITシステムを含めると大量かつ多種多様となります。また、データセンターは、基本的に全体が停止することはない無停止システムです。しかし、無停止で運用するためにはメンテナンスや設備更新が必要なので、部分的には停止や構造の変動が発生します。そのため、データセンターの構造は流動的であると言えます。巨大で流動的な構造を持つシステムを、何のサポートもなしに1からプログラムによって制御するのは困難なので、これらの特性を考慮した、プログラミングやそのプログラムの実行をサポートするソフトウェア基盤が必要です。IIJでは、co-IZmoSDのような外部のシステムと連携して柔軟な制御を実現できるデータセンターを対象として、ソフトウェア化を補助する「データセンター用のオペレーティングシステム」の研究開発を進めています。

co-IZmoSDの運用開始と共に、データセンター用オペレーティングシステムの概念設計を開始し、2015年度にプロトタイプとして基本的な機能の実装を行いました。現在co-IZmoSDを対象として運用しながらソフトウェアの品質を向上させている段階です。

 

文:宇夫 陽次朗(株式会社IIJイノベーションインスティテュート 技術研究所 主幹研究員)

 

※本稿はInternet Infrastructure Review Vol.32 「ソフトウェア駆動型コンテナデータセンター」を一部編集し、転載したものです。原文では、研究開発用データセンターco-IZmoSDのスペックについても紹介されています。

 

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