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共創パートナーと新サービスの実用化を目指したプロジェクト成果続々と──ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会開催(後編)

2017.03.31

Updated by WirelessWire News編集部 on March 31, 2017, 07:00 am JST Sponsored by ユニアデックス株式会社

「IoT分野でビジネス拡大を狙う企業をつなぐハブとなる」ことを目指し、2016年7月19日、東京サポートセンター(KDX豊洲グランスクエア)にグランドオープンしたユニアデックス「IoTエコシステムラボ」。2017年2月28日、「第2回共創パートナーネットワーキング」と題し、豊洲文化センターにてIoTエコシステムラボの共働プロジェクトの成果報告会が行われた。(レポート前編はこちら

共働PoC#3「看護師業務の最適化」

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

『看護師業務の最適化』と題し、共働PoC進捗発表を行ったのはユニアデックスの藤井氏。本テーマでは、患者と看護師の様々なデータを収集・分析し、業務改善につなげることを目的としているが、今回は老人ホームにおける「ナースコールゼロ」を目指したナースコールログの可視化と、介護士の介助モーション比較を実施した。実証のためのデータ収集は、共働PoC参加企業であるインフィックの協力で、静岡市駿河区に位置する特別養護老人ホーム「まごころタウン静岡」にて行った。平成27年に開設したばかりの非常に新しい施設で、現在100名以上が利用している。

「ナースコールゼロ」の取り組みには、実施施設提供及びナースコールログ提供にインフィック、ナースコールログの可視化にアイホンとユニアデックスが参加した。対象データは約1年4ヶ月分のナースコールログで、平均すると、およそ1日あたり80〜100回程度の呼出が発生している。時間帯では1日に3つほどの山が認められ、また曜日別では土日のナースコールが多く、特に特定の人物の呼び出し回数が多いことも見えてきた。しかし現状、呼び出し理由がデータに紐付いておらず、改善ポイントを絞り込むことはできなかった。

一方で、これらデータの可視化により、現場でのディスカッション促進に繋がったのは改善の第一歩と言えるだろう。実は現状最も呼び出し回数が少ないお昼の時間帯が、スタッフからすると最も呼び出されると困る時間であり、さらなる改善が求められること、想定していない突然の呼び出しの負荷が大きいことなど、データを見ているだけでは分からない現場の声が届いた。今後は改善に必要なデータを収集、利用者の呼出しを予測し、先んじて動けるような患者満足度の高いサービス提供を目指す。

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

「介護士の介助モーション比較」には、ディケイエイチが参加。マーカーレスモーションキャプチャのアナキンシステムを利用し、介助姿勢について、経験の浅い看護師と熟練の看護師にデモを実施してもらい、介助モーションを比較した。すると重心の変化がグラフ上に明確な差となって可視化された。正しい介助姿勢を身につけるための訓練や、リスク評価に適用できる可能性が示されたと言えるだろう。「ナースコール」と同様、今回可視化されたデータを元に課題に対するディスカッションを深めると共に、今後は他のソリューションとの連携について、検討を進めていきたいとの報告があった。

共働PoC#4「空き家のホームセキュリティ」

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

「空き家のホームセキュリティ」をテーマに発表を行ったのはユニアデックスの峯岸氏だ。都市部でも年々増加する「管理されていない空き家」は、不法侵入などに端を発した周辺地域の治安悪化の問題を生んでいる。平成26年に空き家等対策の推進に関する特別措置法が成立し、物件所有者は空き家の適正管理を義務付けられている。この状況下で空き家管理サービスの需要は増しているが、現状は月1回の巡回で1万円程度の価格帯での提供が多く、費用の高さに二の足を踏む所有者が多い。

そこで空き家を安価(1万円以下を想定)に管理するサービス提供をすることで、資産価値の劣化や地域の治安維持貢献などを目指すビジョンを想定した。空き家を管理する際に課題となるキーワードを、資産価値維持、防犯対策、換気のタイミングという3つに設定。それぞれを検知するために、参加企業からセンサーや異常検知用カメラ等の提供があった。具体的にはぷらっとホームからはセンサーやカメラとクラウドを接続するゲートウェイを、アイホンからは侵入者などの異常検知用のカメラ、そして東京エレクトロンデバイスからはカビ発生予報クラウドシステムだ。実地検証の現場としたのは、ユニアデックス木場寮マンションと、市川市の一軒家だ。この全く違う環境でなるべく多くのデータを取得するべく、合わせて23日間の検証を行った。

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

環境データとしては、加速度、温度変化、湿度変化、気圧変化、照度変化の5つを測定。台所、トイレ、扉、窓際、押入れ、洗面台などにセンサーを設置した。湿度と温度の相関関係から、換気や断熱の状況や日当たりなどが明らかになり、資産価値の測定や、価値維持の為のメンテナンス時期を示すなどの可能性が考えられた。カビ発生予報検知では、カビが発生する可能性をアイコンによって表示させるシステムを検証。これにより木造で問題になるカビ発生の予測が継続して観測でき、換気など環境改善のタイミングを促すことができるようになりそうだ。また侵入者検知では、1時間おきに写真を撮影しインターネットから確認できる仕組みや、異常な加速度による侵入検知などを検証した。

検証の結果、データ取得のための閾値を設定する場合、刻々と変わっていく自然環境の変化や、季節的な要因による特徴、また強風や騒音など突発的な環境変化などに配慮することが必要であること、また複数の場所でのデータ取得の際はなるべく同条件での設置が望ましいなどの気づきがあった。

コンセプトとして1万円以下の安価な管理サービスを標榜していたが、2箇所合計での経費は約2万7千円となった。今後サービス化に向けては1システムで複数の空家をカバーすることでコストダウンをはかること、また必要データの絞り込みを行い、取得データを必要最小限にするなどの改善が求められる。また空き家は基本的に電気が通っていないため、太陽光電池の利活用などの検討も視野に入れる必要があるとの課題も明らかになった。今回の知見はブラッシュアップし、案件等に活用する予定だ。

今後も加速する、共創パートナーとの共働PoC

ユニアデックス「IoTエコシステムラボ」共働PoC報告会

様々な知見をもった共創パートナーたちとの協業は、集中的な論議やスピード感ある実証実験などにより実りあるものになったようだ。実際のサービス事業化を想定したプロジェクトもあり、今後の展開が待たれる。一方でお互いがどこまで情報開示をしていいものかの躊躇や遠慮があったことや、ビジネス化の仮説の弱さや実証実験場所探しの難航、共働PoC期間が短すぎるなどの課題も明らかになった。

今後はこの課題をふまえ、共働PoC実施にあたりビジネス化を見据えたテーマを募集して進め、最大6ヶ月という期間を目処に、NDA締結や実証実験場所の確保などをした上で、第2期の共働PoCを実施する。その結果は10月に開催が予定されている第3回目の共創パートナーネットワーキングで発表されるとのことである。共創パートナーからのテーマの募集や実証実験場所の募集などは4月7日締切に設定されており、事務局にはすでにいくつかのテーマについて相談がきているとのこと。今後益々促進される「共創」でのビジネス開発においてさらなる活性化、具体化が期待される。

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