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ドイツ ライプツィヒ イメージ

①「持つ」から「使う」へ─カーシェアリングの2つの形

2017.04.11

Updated by Yu Ohtani on April 11, 2017, 06:00 am UTC

1. 進化するカーシェアリングシステム

ライプツィヒのまちなかを歩いていると、駐車場のような場所に数台の“Teil Auto(タイル・アオト)“とかかれた車が駐車していることがある。これはライプツィヒをはじめとした旧東ドイツ地域でシェア数を伸ばしているカーシェアリング会社の車で、駐車場のような場所は車がプールされているカーステーションだ。こんな場所がライプツィヒだけで250箇所以上もある。まちを歩いていてそこら中に見かけるはずだ。利用方法も簡単で、登録すると電子カードが送付されてくる。使うときはインターネットで希望のステーションの車を予約し、当日ステーションまで歩いていってカードを車にかざせば解錠される。使ったあとは提携先のスタンドで給油と清掃をし、元の場所に戻せば良い 。このように、タイル・アオトのシステムは徹底的に無人化・効率化されている。

ドイツのカーシェアリングは、10年ほどで爆発的にマーケットが拡大した。2016年時点で126万人の人々がカーシェアリングの会員となっており、これは10年前の実に16倍である 。特にここ5年ほどのトレンドは、「フリーフロート型」とよばれるカーステーションを持たないタイプのカーシェアリングで、利用時にはインターネットで近くにある車を検索し、返却時はまちなかの駐車可能な場所ならどこに停めても良いというサービスである。行きたい場所まで利用した後は乗り捨てられるので、実にタクシーのような感覚で利用でき、かつタクシーよりも安く移動することができる。事前予約ができないことが欠点だが、車の絶対数が増加することで「近くに乗れる車がある」状態が作り出せる。ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンなど大都市でサービスが開始されており、登録者もステーション型のそれに追いつく勢いで増えている 。インターネットとGPSの発達により、このような合理的なサービスはさらに多く生み出され、利用する人々はますます増えていくだろう。

2. 「顔の見える」カーシェアリングのリバイバル

ドイツのカーシェアリングの歴史は1980年代に西ドイツの都市ではじまる。都市人口が増加する中、駐車場空間を節約し、かつ都市内の交通網を補完できると注目された。行政の後押しもあり、西ベルリンをはじめ、アーヘン、ブレーメン、フライブルグなどに広がっていったが、ここで注目したいのは、当初のカーシェアリングが小規模な非営利のNPOによって運営されていたという点である。団地や地区の人々が共同で車を購入し、それぞれのルールに従って車を共同管理・共同使用するという、いわば同じコミュニティに属している「顔の見える」範囲でのカーシェアリングである。しかし共同管理の煩雑さやコストをめぐる不平等感などにより、非営利で小規模なカーシェアリングは頓挫することが多かったようで、90年代以降次第にマーケット指向の大規模なカーシェアリングシステムにとってかわられるようになっていった。

しかし2010年以降、実はこの「顔の見える」カーシェアリングが形を変えて再び脚光を浴びるようになっている。2010年に始まった“tamyca(タマイカ)“というインターネット状のプラットフォームがその草分け的存在である。“tamyca“とは“take my car“の略。その名の通り「私の車を使いなよ」という人々がネット上に自分のプロフィール、車の写真と情報、値段、条件などをアップしている。借りたい人は期間と自分のプロフィールを相手に伝え、相手が承諾したらtamycaのサイトを通じて料金を払い、相手の指定した場所まで車を取りに行く。使わないときまで駐車場に放置しておくくらいなら、その間他の人に使ってもらったほうが良いという、カーシェアリングのそもそものコンセプトに立ち返るような仕組みだといえるだろう。

この仕組みの利点は、何と言っても車のバリエーションである。超高級スポーツカーからレトロなクラシックカーまで、様々な車を借りることができる。安いものでは一日5ユーロほどで貸し出している人もいて、カーシェアリングやレンタカーより断然安い価格だ。まさに自分好みの車を選ぶことができるのだ。もう一つの利点は、自分のこだわりの一台を他の人とシェアすることで、車の話や趣味のネットワークが広がることだ。車を媒介に人々のつながりができていく。

一方、トラブルがあっても、基本的には個人と個人の間で解決することが求められるというハードルもある。車を貸す方も借りる方も、トラブルを避けるには相手がきちんと対応してくれるか見極める必要があるのだ。そのため会員になる際にプロフィールを詳しく書き込む必要がある。また借り手と貸し手が相互に評価しあい、その評価が点数として公開されている。見知らぬ人でも、「顔が見える」という状態をある程度担保するための仕組みが組み込まれていることで、相手を選ぶことができ、リスクを軽減することができる。

このような「顔が見える」カーシェアリングのポータルサイトがドイツでは3つほど存在しており、登録者数が最も多い“Drivy(ドライビー)“には、2015年6月時点で約10万人が会員登録しており、110,000の車が登録されている。登録者数はうなぎのぼりに増えており、2016年にはなんと会員が倍になる見込みだという 。

3. カーシェアリングの多様な未来

今回は、都市内の移動の利便性と合理性を追求する方向に進化する方向と、人々がお互いの信頼関係の上で「車を共有する」方向という、2つの異なるカーシェアリングの形を紹介した。どちらもインターネット、SNS、GPSなどの技術の発達によって可能になっている。カーシェアリングの多様な未来が、ドイツの仕組みから見えてくる。

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大谷 悠(おおたに・ゆう)

NPOライプツィヒ「日本の家」共同代表。ドイツ・ライプツィヒ在住。東京大学新領域創成科学研究科博士課程所属。1984年生まれ。2010年千葉大学工学研究科建築・都市科学専攻修士課程修了。同年渡独。IBA Lausitzにてラオジッツ炭鉱地帯の地域再生に関わる。2011年ライプツィヒの空き家にて仲間とともに「日本の家」を立ち上げる。ポスト成長の時代に人々が都市で楽しく豊かに暮らす方法を、ドイツと日本で研究・実践している。