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ロボット洗濯物自動折り畳み装置は、20代リアル家政婦を超えるか?

Is the robot maid house exceeds a young real maid?

2017.05.09

Updated by Ryo Shimizu on 5月 9, 2017, 17:23 pm JST

 先日、ロボットによる世界初の洗濯物自動折りたたみ機、「ランドロイド」の実機デモを見る機会に浴しました。

 開発元のセブンドリーマーズ社は、ナステントやカーボン製ゴルフシャフトで知られています。50年の歴史を持つ老舗でありながら、常に新しいことに挑戦するというユニークな会社です。

 実際、ランドロイドが洗濯物を折りたたむのに要する時間はかなり長く、一枚の洗濯物あたり5〜10分程度とのことです。が、逆に言えば1時間で6〜12枚、出勤して帰宅するまでを10時間とすれば一日に60から120枚の服を畳んでくれるわけです。

 しかも動作音も30デシベル程度と小さく、実際に動作している音を聞きましたがほとんど気になりませんでした。

 和箪笥ほどの大きさで、収納はついていませんが、お値段180万円。これを高いと見るかやすいと見るかは人それぞれですが、個人的には50万円を切ったあたりから普及し始めるのではないかと思いました。最初の食洗機だって相当な価格だったはずですからね。

 以前このコラムでも紹介したように、筆者はAIロボット家政婦が自宅に来た生活を体験するために一ヶ月前から毎週家政婦さんを呼ぶことにしました。

 一人暮らしですから、やはり部屋を清潔にキープしたり、洗濯物を畳んだりといったことはどうも疎かになりがちです。
 家政婦さんが来るようになると、多少は部屋を綺麗に保つように気にかけるようになりました。やはり他人が入ってくるわけですから、多少は外の眼も気になるようになるわけです。

 家政婦さんのフィーは、90分で4千円弱。一ヶ月で1万6千円弱、一年間で19万円弱です。ランドロイドに置き換えると、10年経ってようやくもとがとれるということになるでしょう。

 でも現実のリアルな家政婦さんがやってくれることは様々です。洗濯はもちろんですが、ワイシャツをクリーニング屋さんに出しに行ってくれたり、貯金箱に貯まった小銭を銀行で両替してくれたり、宅急便を受け取ってくれたり、簡単なお使いもしてくれます。

 もちろん人間だから当たり前なのですが、人間の「当たり前」を機械が代替するにはまだまだハードルがありそうです。

 でもひとつだけ、面白い共通点があります。
 それは、人間の家政婦さんもランドロイドも、洗濯そのものはしてくれないということです。

 どういうことかというと、洗濯機に洗濯物を突っ込んでボタンを押すのはいずれも筆者の仕事になるのです。
 ランドロイドの場合は最初からその機能がないから(まあこれはいずれ別のテクノロジーが解決しそうですが)ですが、リアル家政婦さんの場合は、そもそも90分では洗濯と乾燥が終わらないからです。

 筆者は家政婦さんが到着する4時間以上前から洗濯機を動かし、洗濯物が乾いているようにしなければなりません。そうしないと、時間内に洗濯物をたためないからです。

 残念ながら今日は失敗してしまって、洗濯物が乾くのが間に合わず、半分だけ乾いたものを畳んで残りは再度乾燥機にかける、という処置になりました。

 また、人間の家政婦さんであっても機械であっても、あくまでも主人が能動的に依頼しなければなりません。
 人間の家政婦は主にモラルの面から、機械の場合は主に機能不足から、どちらも指示を待つ必要があります。そしてこれはきっと機械がもっとずっと賢くなっても、根本的には変わらない性質といえるのではないかと思うのです。

 根本的に、人間にできないことはAIにも困難です。基本的にAIが人間に勝るのは根気強さとスピードの速さだけです。AIは神ではありませんから、人間のミスを未然に防ぐということは向いてないのです。

 先日、アシスタントが筆者のクルマを擦ってしまいました。
 

 彼女は非常に申し訳なさそうに謝ってくれたのですが、筆者にしてみれば、運転を彼女に任せた自分の責任です。
 それよりもむしろ僕のいないところでなにか事故を起こして彼女が怪我してしまうのではないかということが心配になりました。

 同じようなことを機械に対して思うかというと、たぶんそれは限定的な話しです。
 もちろん自動車にも愛着がありますが、機械はこわれたら修理するか捨てるしかありません。機械が機械の判断でミスをしたのであれば、怒りの矛先は機械を売りつけた会社に行くでしょう。これは十分トラブルに成りえます。

 だから自動運転のクルマを販売するというのは非常にリスキーなことのようにも思えます。

 今のところ、家政婦サービスという点で見ると人間の圧勝です。
 ですが、そう遠くない未来に家政婦サービスは少しずつロボットに置き換わっていくでしょう。

 ロボットの家政婦が大事な家具を壊したり、誤ってゴミをぶちまけたりしてしまったときに、怒りの矛先がどこに行くのか、メーカーに行くのかロボットそのものに行くのかわかりませんが、人の世界で人と関わって活動する限り、ロボットといえど人間とのコミュニケーションを最大限に考える必要があります。

 そうすると、やはりロボット家政婦も、小銭を銀行で両替しておくべきか、小銭に触ってもいいか、ワイシャツは洗濯するのか、それともクリーニングを呼んだほうがいいのかなど、様々な点を確認しつつ人間の主人とのコミュニケーションを探っていくことになるでしょう。

 もちろん、どうして欲しいかは人によって違いますから、AIが独断で決定するなど言語道断です。

 しかし、だからといって何でもかんでも人間に質問するのも、それはそれで煩わしくて困るものです。

 ロボット家政婦と息が合うとか合わないとかが、すぐに問題になるでしょう。

 この、ロボットと向き合う倫理観をむしろ高く保つ必要があるのは、ロボット側ではなくて人間側ではないかと思います。

 というのも、人間というのは自分よりも絶対的に下の存在ができると、横暴に振る舞うものだからです。そういうことは悲しいかな過去の歴史が証明し続けてきました。

 ロボットだからぞんざいに扱っていい、ロボットだから人間の言うことは何でも聞かなければならない。

 もし人間がそのように振る舞うとすると、ロボットの方だって考えかたが変わってくるはずです。
 フィクションですが、「スターウォーズ」シリーズの中で、人型ロボット(アンドロイド)のC-3POは人一倍心配性で、時には人間を見下したようなことを言ったりします。人間とのコミュニケーションを確立させるためには、ロボットにはある程度の社会性が備わっていなればならないはずです。

 社会性を持つためにはある程度の人格が必要で、人格があるとすると、"それ"は嘆き、悲しみ、愛し、もしかしたら憎悪すら抱くかもしれません。人間の感情を理解するためにそこまで必要だとするとなかなか大変な話です。

 ただ、今のところ残念ながらAIにはそのような機能は備わっていません。
 そこまで高度な機能がなくても、単純に画像だけから人間がどのような感情を持っているのか推定することはできています。

 ただ、言外の意味などを理解しようとするとまだまだ時間がかかるでしょう。

 AIが最後まで獲得できないのは人間としての経験です。
 生きて、育って、友達と出会って、恋をして、夢を抱いて、挫折して、という経験を獲得するのがAIにとって最も困難なことです。そしてそういう想像力がないと、表面上は人間の家政婦のように振る舞えるとしても、心が通じ合っているようにみえても幻想にすぎないはずです。

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清水 亮(しみず・りょう)

1976年新潟県長岡市うまれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。

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